著者
川口 和紀 北口 暢哉 中井 滋 宮川 剛 大橋 篤 堀 秀生
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アルツハイマー病の病因物質の一つとされるアミロイド蛋白(Aβ)を、末梢血中から短時間に急速に除去することで脳内濃度を下げることにより、認知機能を改善する治療システムの構築を目指し、ラットを用いて血中Aβの動態と認知機能に与える影響を検討した。1.麻酔下ラットの大槽内に投与したヒトAβの末梢血中へ移行が確認された。2.ラットを用いた血液浄化の実験系および認知機能評価系が確立された。
著者
中田 誠一 角谷 寛
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

平成22年度から平成24年までの3年間で北海道八雲町での1年に1回の耳鼻咽喉科地域検診と睡眠や眠気に対してのアンケート調査を行い、かつ簡易睡眠呼吸検査装置を地域に常備し行っていった。睡眠時無呼吸は無呼吸低呼吸指数.が、10.6±7.7回/hrであり、高齢者の数値として考えると病的というより加齢に応じた無呼吸が徐々に進行していると思われた。また睡眠の質の調査では入眠障害や中途覚醒よりも、より早朝覚醒での訴えが多かった。
著者
大橋 鉱二 宗綱 栄二
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

フルクトースは「果糖ブドウ糖液糖」として多くの飲料の甘味料として利用され、先進国では生活習慣病の原因として注目されている。多くの研究により「フルクトース対する脆弱性」が示されている。申請者らも、これまでにフルクトース過剰摂取により誘発される生活習慣病の作用機序を研究している (J Pineal Res 2012)。しかし分子メカニズムにおいては不明な点が多い。申請者らはエピジェネティックな制御に着目し研究を進めてきた。エピジェネティックな制御を司る機構として、DNAのメチル化、ヒストン修飾、miRNAがある。この中でも申請者はDNAのメチル化に焦点を当て研究して来た。DNAのメチル化とは塩基配列に変化を伴わず遺伝子の発現を調節する。申請者はフルクトースを過剰摂取した成獣ラットにてDNAの高メチル化と遺伝子発現の異常を確認している(Life Sci 2016)(BBRC 2015)。本研究の目的はフルクトースの過剰摂取が胎内環境を介して仔の糖代謝・インスリン感受性に与える影響を「エピジェネティック」な観点から解析することを目的とする。申請者はこれまでエピジェネティクスの中でもDNAメチル化に焦点を当て研究して来た。本研究ではDNAメチル化に加え、ヒストン修飾やmiRNAによる遺伝子発現のエピジェネティックな制御にも焦点を当て解析する。本年度は妊娠させたラットに出産までフルクトースを過剰摂取させた、仔ラットを用いて解析している。現在、このモデルを用いて以下2点について解析している。A.過剰フルクトース母獣から生まれた仔肝臓のDNAメチル化・ヒストン修飾変化の解析B.過剰フルクトース母獣から生まれた仔肝臓のmiRNA発現変化の解析特に、過剰フルクトース母獣の仔の肝臓組織におけるmiRNA発の異常が示唆される結果が得られつつある。
著者
野村 隆士 千田 隆夫
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

典型的なカベオラは,細胞膜上で直径80nm前後の陥凹構造を持ち,脂質ラフトと同様にコレステロール/スフィンゴ脂質に富む膜ドメインである.カベオラは,細胞内シグナル伝達,エンドサイトーシス・トランスサイトーシス等の物質輸送に関与すると考えられている.研究代表者は,カベオラのクラスタリング機構の研究を行っている過程で,ラフトに親和性を示す分子としてCD13を同定した.数種のラフト分子は,生細胞において,リガンドまたは抗体で架橋するとカベオラへ移動することから,CD13も同様に抗体を用いて架橋したところ,カベオラへ移動することが判明した.CD13はヒトコロナウイルス-229E(HCoV-229E)のレセプターであることから,HCoV-229EがCD13を架橋し,抗体と同様にカベオラに運ばれる可能性が考えられた,この可能性を検討したところ,HCoV-229EはCD13を架橋し,細胞膜上をカベオラに運ばれることが光顕的,電顕的に明らかとなった.次に,HCoV-229Eの細胞内侵入経路としてカベオラが利用される可能性について検討した.その結果,(1)HCoV-229Eの細胞内侵入は膜コレステロール量に依存すること,(2)siRNAを用いてカベオリン-1(カベオラ構成タンパク質の一種)をノックダウンすると感染効率が落ちること,が明らかとなり,HCoV-229Eは,侵入経路としてカベオラを利用することが判明した.今後,ウイルスエンベロープとヌクレオカプシドを別々の蛍光色素で標識したウイルスを作製し,両蛍光色素の動態をリアルタイムに解析することにより,ウイルスエンベロープの膜融合局在,virus genomeの放出局在を時間軸を持って検討することができると考えている.
著者
長谷川 みどり 湯澤 由紀夫 外山 宏 市原 隆 小出 滋久
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ダイナミックCT撮影による有効腎血漿流量(CT-ERPF)および糸球体濾過量(CT-GFR)の測定法を確立した。腎移植ドナーでは腎皮質深層CT-ERPF2.61±0.87mL/min/cm2 、CT-GFR0.63±0.15mL/min/cm2、表層CT-ERPF2.61±0.88mL/min/cm2 、CT-GFR0.66±0.14であり、敗血症では深層ERPF0.615mL/min/cm2、GFR0.452mL/min/cm2、表層ERPF0.650mL/min/cm2、GFR0.461mL/min/cm2であった。今回の検討では敗血症症例においても皮質表層と深層で差異を認めなかった。
著者
伊藤 祥輔 若松 一雅
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

メラニンには黒色のユーメラニン(EM)と赤褐色のフェオメラニン(PM)の2型がある。本研究は、両型のメラニンの紫外線(UV)-A(および可視青色光)による分解過程およびその生理的意義の解明を目的とした。EMのモデルとしてのDHICAメラニンについて、UVAにより酸化されてキノン体となり、さらに酸化されて特異的分解産物を生じるが、これらの過程において、スーパーオキサイドラジカルおよび一重項酸素が生じることを示した。さらに、合成EMおよびPMについて、300-550 nmの光照射により前記の活性酸素を生じるが、メラニンにより速やかに捕捉されることを示した。
著者
鳥飼 勝隆 浜本 龍生
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ウイルス感染が結合織疾患(CTD)の発症に関与する可能性が従来より考えられていた。1986年にSalahuddinらによって、免疫不全患者より新しいヘルペス群ウイルス、HHVー6が分離された。これはTリンパ球にも感染するので、自己免疫疾患との関連性が想定された。そこで、本ウイルスとCTDとの関連性を検索した。間接蛍光抗体法と中和反応とで、各種CTD66例の血清の抗HHVー6抗体価を測定した。その結果、CTDでは健常人に比し、抗HHVー6IgG,IgM抗体が有意に高値であった。しかし、他のヘルペス群ウイルスであるEBウイルス,サイトメガロウイルス,単純ヘルペスウイルスなどに対する抗体価とは必ずしも相関していなかった。また、各種自己抗体との相関をみたところ、抗HHVー6抗体価は抗nuclear RNP抗体価と相関した。しかし、抗DNA抗体や抗SSーA抗体などとは相関しなかった。このことより、抗HHVー6抗体価が高値である理由は、多クロ-ン性B細胞活性化現象によるもののみでは説明できなかった。このウイルスの持続感染や、ウイルス抗原とnuclearとの抗原性のホモロジ-が存在する可能性が示唆された。これはHHVー6がCTDの原症機序に関与しうることを示唆するものである。CTDにおいて本ウイルスが持続感染している可能性を検索した。末梢血単核球,唾液,皮膚生検組織などからウイルスの分離を試みた。しかし、現時点では、ウイルスは分離できなかった。今後は、持続感染していると予想される本ウイルスを、感度のよいDNA検出法であるPCR法などを用いて検討することが課題であると考えられた。
著者
森 啓至 太田 明
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

パーキンソン病などの神経変性疾患においては、その発症原因について未だ明らかにされていないが、炎症性サイトカインの増加が発症原因の一つとして考えられている。さらにパーキンソン病では、ドーパミン細胞の変性・細胞死により種々の身体症状が現れるが、その初期症状として嗅覚異常や抑うつ状態が身体症状発現前から認められることが近年明らかとなってきた。一方、嗅覚伝達系の主要な部位である嗅球にはドーパミン細胞が存在し、嗅覚系において重要な機能を担っていると考えられる。このような背景から、lipopolysaccharide(LPS)を投与したマウスの嗅球を研究対象とし、炎症性サイトカインの嗅覚系に与える影響に関して詳細に検討を加え、神経変性疾患の病態解明の手掛かりとなることを期待し本研究課題を実施した。その結果、マウスへのLPS投与により嗅球内のTNFαおよびTNFαを介したアポトーシス誘導に関連する遺伝子発現が増加することを確認し、さらに嗅球の顆粒細胞層においてTUNEL染色陽性細胞が増加する結果を得た。また、TNFα受容体欠損マウスを用いて同様にLPSを投与したところ、TUNEL染色陽性細胞の増加は認められなかったことから、LPSによる嗅球内でのアポトーシス誘導には、TNFα受容体を介する刺激伝達系が必須のものとの結果を得た。このように、嗅球において増加した炎症性サイトカインにより細胞死が誘導されたことから、炎症性サイトカインが嗅覚系に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆されたが、嗅球のドーパミン細胞に対する影響に関しては明らかな結果は得られていない。現在、LPSの長期間投与が嗅球のドパミン細胞へ及ぼす影響について、また嗅球の機能維持に必須となる脳室下帯周囲の神経幹細胞および細胞新生機構への炎症性サイトカインの影響に関して引き続き研究を行っている。
著者
山本 康子 斉藤 邦明
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

インドールアミン酸素添加酵素2 (Indoleamine 2,3-dioxygenase 2;IDO2) は、トリプトファンをキヌレニンに代謝する酵素である。本研究ではIDO2の生理的機能を解析し、IDO2発現が腫瘍形成に及ぼす影響について明らかにする事を目的とした。IDO2のトリプトファン代謝能を検討するため、IDO2強発現細胞を作製したところ、キヌレニン量の増加が認められた。またマウス肺癌細胞を用いた担癌マウスモデルにおいて、野生型に比べIDO2 KOマウスでは、腫瘍体積の縮小およびサイトカインの分泌増強が認められた。本研究によりIDO2発現の抑制は、抗腫瘍効果を有する事が明らかとなった。
著者
松永 慎史
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

これまでの研究結果から, 炭酸リチウムはアルツハイマー型認知症の認知機能障害の進行を抑制する効果が示唆されている。2015年度に, 我々は既報のランダム化比較試験の系統的レビューとメタ解析を行い, 炭酸リチウムがアルツハイマー型認知症に対して認知機能障害の進行抑制効果を持つ可能性があることを報告した。これらの結果を踏まえ, 我々は日本人のアルツハイマー型認知症を対象とした, 炭酸リチウムの有効性, および安全性に関する二重盲検, プラセボ対照, ランダム化比較試験を開始した。現在, 本試験は症例登録中である。
著者
臼田 信光 深澤 元晶 森山 陽介 厚沢 季美江 橋本 隆 山口 清次 深尾 敏幸 田中 雅嗣 下村 敦司
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

高脂血症による引き起こされる動脈硬化と脂肪肝は、虚血心疾患や肝硬変などの重篤な生活習慣病のリスクファクターとなる。細胞内における脂質代謝の改善により、高脂血症の予防と治療が行える可能性がある。ミトコンドリア脂肪酸β酸化系は全ての脂肪酸を異化し、エネルギー産生で中心的な役割を演ずるが、未解明の部分が多い。全身臓器・培養細胞を材料として、分布とPPARを介する代謝制御について調べ、生理的な意義を研究した。
著者
武藤 多津郎 山本 紘子 宮地 栄一
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

我々はこれまで遺伝性アルツハイマー病(FAD)の原因遺伝子の一つであるプレセニリン1(PS1)の突然変異がもたらす脂質とくに糖脂質代謝への影響を明らかにし、それが神経細胞の情報伝達に如何なる影響を与えるのかを主に脂質ラフトの観点から研究を展開してきた.その結果現在まで下記のような事実を明らかにした.1)変異PS1の発現する神経芽細胞腫では、グルコシルセラミドのsteady state levelが著減しており、したがって全ての種類のガングリオシドもまた著減している.2)この異常は、同じ変異PS1を発現するトランスジェニックマウス脳組織を用いた解析でも確認された.3)これら異常の原因を詳細に調べたところ、グルコシルセラミド合成酵素蛋白量が変異PS1の発現により著明に減少することが明らかとなり、この変異PS1の有するγ-セクレターゼ活性が前記酵素を切断・分解している可能性が示唆された.4)さらに、最終年度ではこうした変異PS1を発現する神経芽細胞腫を用いてパッチクランプ法でイオンチャネル機能を及ぼす影響を調べたところ、変異型細胞ではNaチャネル機能大きな異常が存在することを見出した(論文作成中)5)また、上記のグルコシルセラミドの本症病態発現に於ける意義を探るため、この中性糖脂質に対する自己抗体を有する疾患を同定するためのスクリーニングを神経患者血清を用いて実施し、陽性となる疾患を同定した.これら疾患は何れも亜急性の記憶・認知機能障害を呈する疾患であった(FEBS Lett 2006)
著者
犬尾 千聡 宇理須 厚雄
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

牛乳アレルギー患者に対して、牛乳を摂取して寛解を獲得する免疫療法の有用性が数多く報告されてきた。しかし、牛乳を用いた経口免疫治療中は皮膚症状、消化器症状、呼吸症状が頻繁に誘発される。本研究では、ペプチドミルクを使った免疫療法の安全性と効果を検討した。重症の牛乳アレルギー患者での検討では、血液中の末梢血好塩基球活性化はペプチドミルクが普通ミルクで低く、二重盲検食物負荷試験では、普通ミルクよりペプチドミルクの方が摂取可能量は多かった。ペプチドミルクを用いた経口免疫療法を行い、8割の患者で摂取可能量が増加したことを確認した。
著者
松永 佳世子 矢上 晶子 佐野 晶代 中村 政志
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、グルパール19S(GP19S)を含む特定の洗顔石鹸の使用者に新規な即時型コムギアレルギー患者が大規模に発生し、社会問題化した。本研究では、最初に、GP19S特異IgE抗体を指標とした検査法を構築した。これは、重症度を反映し、予後評価にも有用と考えられた。また、患者血清IgE抗体を用いた免疫学手法により、小麦グルテンやGP19Sの製造工程サンプル、GP19S以外の加水分解コムギ(HWP)との結合性を評価し、GP19S特異IgE抗体のグルテンへの交叉反応が症状誘発機序であること、GP19Sの抗原性は酸加熱処理の工程で生じたこと、一部の他HWPにも類似抗原が含まれること、を特定した。
著者
柘植 郁哉
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

安全な経口免疫療法の確立を目指して、加水分解乳を用いた牛乳アレルギーの免疫療法における、アレルゲン特異的T細胞と好塩基球の活性化を解析した。牛乳アレルゲン特異的T細胞は、活性化マーカーCD154 陽性細胞として同定し、同時に細胞質内サイトカインを多重染色して解析した。その結果、牛乳アレルギー患者では、非牛乳アレルギー患者に比し、牛乳アレルゲン特異的Th2サイトカイン産生細胞が有意に増加しており、また、牛乳アレルゲン特異的IL-4産生細胞数は牛乳特異的IgEと正の相関を示した。一方、好塩基球の解析では、症例数は少ないが、免疫療法後にSykの低下が認められた。現在症例数を増やして検討中である。
著者
平野 哲 才藤 栄一 加賀谷 斉 田辺 茂雄 伊藤 慎英
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

バランス障害を有する患者23名に対してBEARと従来バランス練習のCrossover studyを行った.BEAR介入前後では,快適歩行速度,TUG,FRT,中殿筋筋力,下腿三頭筋筋力に有意な改善を認めた.1名の患者においてはEqui testを行い,足関節戦略の関与が上昇を示した.健常者7名に対して,3種類のゲームで,4段階の難易度の練習を行い,この時の下肢筋活動を表面筋電図によって評価した.各ゲームの筋活動量は難易度の上昇に伴い増加した.前後への重心移動練習中の三次元動作解析・表面筋電図同時計測を健常者,患者各1名に対して実施した.患者においては,健常者よりも膝関節の運動が大きかった.