著者
正岡 建洋
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

一酸化窒素(NO)は生体内でメディエーターとして様々な作用を持つことが知られており,NO供与体であるsodium nitroprusideの投与で,摂食量が増加する報告や,NO合成酵素(NOS)の阻害薬(L-NAM)の投与により,摂食量,体重が減少する報告から,NOは摂食調節に関与していると考えられるが,その機序の詳細は明らかではない。我々はFunctional dyspepsia(FD)の患者で血漿グレリンが高値であることを報告しているが(Aliment. Pham. Ther.24:104,2006)、神経型NO合成酵素(nNOS)ノックアウトマウスでは著明な胃拡張と胃排出能の低下を呈する(Gastroenterology119:766,2000)ことや、FD患者へのNOドナー投与は胃運動低下を改善させる(Gastroenterology 118:714,2000)ことから、NOがFDの病態形成へ関与している可能性が示唆されている。本研究ではnNOSノックアウトマウス(nNOS<^-/->)を用いて、nNOS由来のNOによるグレリン分泌調節機構について検討した。nNOSノックアウトマウスの解析12週齢のnNOSノックアウトマウス(nNOS<^-/->:n=10)と野生型マウス(WT:n=10)を18時間の禁食後,解剖に供した。血漿中及び胃粘膜中のグレリン量はRadioimmunoassay、胃粘膜中プレプログレリンmRNA発現量は定量的RT-PCR、胃粘膜中グレリン陽性細胞数は免疫組織化学、血漿アディポネクチン、血清インスリン及びレプチンはELISA法で検討した。nNOS<^-/->では、WTと比べて摂食量、血漿中の活性型グレリン及び総グレリン、胃粘膜中の活性型グレリン及び総グレリン、胃粘膜中プレプログレリンmRNA発現量、胃粘膜中グレリン陽性細胞数は有意に増加した。血漿アディポネクチンはWTマウスと比べて有意に減少したが、血清インスリン及びレプチンは有意な変化を認めなかった。以上より、nNOS由来のNOが胃粘膜からのグレリンの産生及び分泌を抑制し、摂食調節に寄与する可能性が示唆された。

言及状況

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こんな研究ありました:グレリンを介した胃内一酸化窒素(NO)の生理作用の検討(正岡 建洋) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/17790468

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