- 著者
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小野 悦郎
大竹 正剛
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
アフリカ豚コレラ(ASF)や豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、多様な抗原性を示すウイルスによる感染症であり、有効なワクチンの開発は極めて困難である。本研究課題では、そのような感染症の新たな制圧方法として、遺伝子改変技術によるAFSおよびPRRS抵抗性ブタの開発を目的に、先ず、CRISPR/Cas9システムを利用して、両ウイルスのレセプター分子であるCD163を本来のスカベンジャー機能は保存し、レセプター機能を削除するゲノム編集により両ウイルスに対する感染抵抗性を付与した細胞株を樹立する。次に、ゲノム編集細胞の核移植による体細胞クローン技術により、ASFおよびPRRS抵抗性MMPを作製することを目的とする。平成29年度は、以下のような成果が得られた。1. ゲノム編集マイクロミニピッグ(MMP)胎仔線維芽細胞(PEF)株の樹立にピューロマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドを使用するとプラスミド配列のブタゲノムへの導入が起こり、体細胞クローンを作製するに当たり、予期せぬ副作用が生まれる可能性があったので、プラスミドに変えて、sgRNA、Cas9蛋白およびピューロマイシン抵抗性DNA断片を使用する方法を確立した。2. 1の方法により、抗ウイルス作用が期待される可溶型CD163を発現するゲノム編集MMP PEF株を樹立した。3. PRRSウイルスに対するレセプター活性を有するCD163の5番目のScavenger receptor cysteine-rich (SRCR5)ドメイン内のレセプター活性に重要と考えられるアミノ酸に点変異を導入するためのプラスミドおよびゲノム編集用sgRNAを構築した。4. MMPのPEFのiPS細胞への誘導では、ES細胞様の形態を有する細胞を樹立したが、初期化因子としては、Oct-4AおよびSox2の発現を確認するに留まっている。