著者
鈴木 直人
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ポジティブ・サイコロジーの出現以来、感情心理学の分野においてもポジティブ感情の機能や存在意義に関する様々な説が提示されるようになってきた。例えば、まず第1に、ポジティブ感情は、ネガティブな感情によって亢進された精神生理学的反応を素早く元に戻す『元通り効果(undoing effect)』を持つという機能的意義も提唱された。さらには、ポジティブ感情は試行の柔軟性をもたらす、社交性を高めたり、健康にもプラスに働くなど、問題への対処というよりは、時定数の長い広範囲の有効な資源の動員を促すというFredricksonらの拡大-形成理論が提唱されるにいたった。しかしながら、一部の研究を除きこれらの存在意義や機能的意義に関して十分な十書的研究は行われておらず、ややもするとアイディアだけが先行している感がある。当初、申請では、主に元通り効果について検討する予定をしていたが、これまでの申請者の研究でも元通り効果と思われる現象が見られたことと、ポジティブ感情が思考などの柔軟性をもたらすという指摘については実証的なデータがあまり見られないことなどを鑑み、補助金を受けた研究では主にポジティブ感情が真に試行の柔軟性や、対処事態での行動の切り替えの柔軟性に効果を持つのかについて検討した。本研究報告では2つの実験についてその結果を報告している。まず、第1の実験パラダイムとしてポジティブ感情状態の実験参加者と、低い実験参加者を用いて問題解決実験を行わせ、その課題の解決方法が途中で急変し、それに対処しなければならない事態を作って研究した。その結果、ポジティブ感情の高低は、事態急変前後の課題遂行成績には影響を及ぼさなかったが、ポジティブ感情が心身への負荷を和らげる効果が示された。第2の実験パラダイムとして、実験参加者にポジティブ感情、ネガティブ感情、ニュートラル感情を歓喜し、その前後で、物事を考えなければ、あるいは発想の転換をしなければ解決できないを拡散課題、物事を考えるというよりは課題に集中しなければならない集中課題を負荷し、その成績を比較した。その結果、ポジティブ感情の喚起は」、拡散課題の成績を上昇させたのに対し、ネガティブ感情、ニュートラル観桜はそのよう奈効果をもたらさなかった。また一方、ネガティブ感情の喚起は集中課題の成績を上昇させたが、ポジティブ感情の喚起では集中課題に対してはなんら変化をもたらさなかった。以上の結果からポジティブ感情の喚起、もしくはおポジティブ感情状態にあるものは、問題解決場面などで、柔軟な考えかたができ、対処ができる可能性が示唆された。先述したように、ポジティブ感情の機能や存在意義に関して実証的データは少なく、本研究の成果、特に題2番目の研究はIsenやFredricksonらの主張を強く支持するデータであり、ポジティブ感情研究、あるいはポジティブ心理学に貢献するものである。

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