- 著者
-
矢野 博之
- 出版者
- 大分大学
- 雑誌
- 若手研究
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
我々は、放射線誘発線維症(RIF)に関する遺伝子発現メカニズムを解析するために、細胞外マトリックスの主成分であるI型コラーゲンの転写レベルでの発現調整を調べてきた。また、非コードRNAの一種であるmiRNAについて、miR-29及びmiR-26がRIFにおける転写後の遺伝子発現調節に関与することを報告した。転写後のRIF発現メカニズムについてさらに調べるために、本研究は、miRNAと競合して転写後の遺伝子発現調節に関与するlncRNAに着目し、昨年度までにRIFに関与するlncRNAとして、lncRNA-Xを見出した。今年度は、lncRNA-Xと相互作用しうるmiRNAを見出し、RIFにおけるmiRNA及びlncRNA-Xの機能的役割について調べ、以下の結論を得た。in silico解析により、lncRNAと結合が予測されるmiRNAとしてmiR-Aを見出した。また、lncRNA-X及びmiR-Aが標的としうる遺伝子を調べた結果、抑制型smadであるSmad7を見出し、ルシフェラーゼアッセイの結果、Smad7の3'UTR配列において、miR-A及びlncRNA-Xが結合することが分かった。さらに、miR-Aを過剰発現させた場合、lncRNA-X及びSmad7の発現が抑制された一方、I型コラーゲンの発現が上昇した。これらの結果により、lncRNA-XがmiR-Aと相互作用してSmad7の発現を調整し、放射線によるI型コラーゲン発現増加に関与することが示唆される。