- 著者
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北山 研二
一之瀬 正興
川上 善郎
村瀬 鋼
木村 建哉
- 出版者
- 成城大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究は、「らしさ」の概念を中核とする表象の問題(表現することと現れることの関係性)に関して、理論研究と実証事例研究を交差させて、国際シンポジウム、研究会、調査を実施しながら討論を重ねた。理論研究次元では、存在と現象、自然と文化、一般性と個別性という哲学的対立概念を表象次元で交錯させる「らしさ」の位置づけについて包括的な考察をした。実証研究次元では、社会心理学的事例研究によって、情報社会における事件と事件らしさ、ニュースとニュースらしさの相互関連性が実証された。文学的事例研究によって、演劇では真実らしい人物造型が重要であること、また地方色を出す文学が現地事情よりは文化的コード(らしさ)によって形成されること、さらに美術的事例研究によって、実物(真なるもの)より表象性(真らしきもの)が問題であることが、論証された。映画的事例研究によっては、「自然さ」の文法「真らしさ」が映画的リアリティーであるだけではなく、その多くが身体的反射性に由来することが確認された。さらに歴史テレビ映画や写真映画の事例研究によって、「真なるもの」と「真らしきもの」の明快な判別ができないことも証明された。文化論的事例研究つまり文化としてのらしさの研究では、それぞれの「らしさ」が文化的多層性の産物であり、その反映であるはずの実物(真なるもの)を特定できないことが確認された。こうして本研究の目的、「らしさ」という概念を軸に、表象文化の成立と変遷を「自然」の成立との交替として捉え直し、近現代の表象文化の諸展開について具体的・包括的な見取り図をつくることは、おおむね達成された。