著者
米山 秀 THOMAS Olding
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、経済史上もっとも古典的な研究テーマの一つである農業賃金労働者の形成過程を、農民層分解論としてではなく賃金労働者の家族史として考察することにあった。すなわち小農民の土地所有の分解論としてではなく、若い男女の独身の奉公人が、小農民になるかその世帯内に奉公人のまま生涯包摂されるというライフサイクルの在り方が、若い奉公人の大半が結婚して賃金労働者となるというライフサイクルの在り方へ変化する過程として住民台帳で捉えることにあった。本研究においては、こうした想定を研究史の再構成によっていくつかの具体的な仮定にするとともに教区簿冊や住民台帳類でその検証を試みた。その結果、本研究の範囲内では賃金労働者家族自体の増加は直接的には検出できなかったが、短期奉公人(ライフサイクル・サーヴァント)は決して近世イギリスの奉公人の一般的な特徴ではなく、賃金労働者の結婚前のライフサイクルの特徴であり、しかも近世後半に急増したという形で、農業賃金労働者家族の形成過程が間接的には論証されたといえる。

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こんな研究ありました:近世イギリス農村における賃銀労働者家族の形成ー教区簿冊分析を基礎としてー(米山 秀) http://t.co/8vDKfHXh5h

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