著者
盛 英三
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

認知症と糖尿病も加齢とともに増加し、糖尿病による脳微小循環障害は認知症を増悪させる可能性が高い。一方、血糖値が下がりすぎると脳神経細胞死を誘発する可能性もある。ラット脳循環障害モデルとして昨年度に作成したストレプトゾトシン投与等によりI型糖尿病モデルに引き続き、本年度はより臨床的な頻度の高いII型糖尿病モデル(OLETFラット)を導入し、LETOラットを対照群として脳微小循環造影所見を比較した。放射光微小血管造影検査は兵庫県佐用町の放射光実験施設Spring 8の共用実験として脳、腎臓、下肢等の微小血管造影を行った。空間解像度5-10μmの血管撮影装置により、細動脈レベル(50-200μm)の血流制御機能の定量的評価を行った。安静時の撮影後、アセチルコリン(30μg/kg, IA)の投与下で撮影を繰り返した。LETOラット(対照群)では安静時の造影で中大脳動脈から分岐する3-4本の脳穿通枝(血管径50-200μm)を観察することができた。一方、糖尿病ラット(OLETFラット)では観察可能な脳穿通枝数が減少する、同血管径が狭小化する、中大脳動脈自体の血流が途絶するなどの所見が得られた。対照群、糖尿病群のいずれでもアセチルコリンに対する血管反応性は他の臓器の微小血管(心筋、指尖、腎臓)と比べて乏しかった。以上から脳微小循環の糖尿病性血管障害の評価に放射光微小血管造影法が有用であることが確認できた。本方法をアルツハイマー病動物モデルに応用することで認知症と糖尿病の合併の病態生理の検討と最適な治療法の開発が可能となる。

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こんな研究ありました:糖尿病の合併がアルツハイマー型認知症に及ぼす影響(盛 英三) http://t.co/cMTksW90

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