著者
静間 徹 石渡 一夫 盛 英三 福山 直人
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.649-652, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
11

症例は17歳女性。摂食障害にて嘔吐を繰り返しており、るいそうが著明なため、入院となった。投薬後に嘔吐量は減少し、食事負荷が増大したことによる全身浮腫(refeeding edema)が発現したが、食事・塩分摂取量を制限したところ、浮腫は消退した。血中インスリン値(μU/mL)は、浮腫発現時には低値(1.4)、発現1週間後には正常範囲(4.3)であったが、浮腫消退時には軽度の高値(17.4)を示していた。血中グルカゴン値(pg/mL)は、浮腫発現時(131)・消退時(101)とも正常範囲であった。refeeding edemaの発現には、refeeding後のインスリン分泌の亢進やグルカゴン分泌の低下が主要な機序と推測されているが、自験例では、浮腫発現期の血中インスリン値の上昇、血中グルカゴン値の低下は認めていなかった。
著者
北風 政史 真田 昌爾 浅沼 博司 野出 孝一 南野 哲男 高島 成二 中篠 光章 篠崎 芳郎 盛 英三 葛谷 恒彦 堀 正二
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.103-111, 2000-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
24

先行する短時間心筋虚血 (ischemic preconditioning) は, 長時間虚血により生じる心筋壊死サイズを縮小する.本研究では, 麻酔開胸イヌを用いそのメカニズムを検討した.その結果, 1) ischemic preconditioningによる心筋梗塞サイズ縮小効果には, アデノシン産生酵素活性化が関与する, 2) protein kinase C活性化に加えてATP感受性K+チャネル開口がアデノシン産生酵素活性化に関与する, 3) 細胞膜・ミトコンドリアに存在するATP感受性K+チヤネルが独立して相加的にischemic preconditioningに関与する, ことが明らかになった.以上の結果より, ischemic preconditioningによる心筋保護作用にはアデノシンーアデノシン産生酵素・protein kinase C・ATP感受性K+チャネル開口が連関している可能性が示された.
著者
石渡 一夫 静間 徹 中澤 博江 盛 英三 福山 直人
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.489-495, 2007

【目的】海藻に含まれるフコイダンは種々の有用な生物活性を持つが、沖縄モズク由来アセチルフコイダンの癌に対する作用は不明である。本研究において我々は沖縄モズク由来アセチルフコイダンの癌抑制作用について検討を行った。<BR>【対象及び方法】動物実験モデルとして、マウス大腸癌細胞移植モデルを用いた。実験群は癌細胞移植後に通常水を飲水させたコントロール群と、通常水に5%フコイダンを混ぜて飲水させたフコイダン群に分け、マウスの体重を経時的に計測し腫瘍量を計測した。腫瘍組織は採取後、組織学的に腫瘍の浸潤とアポトーシス細胞の有無を検討した。<BR>【結果及び考察】マウスの有意な体重減少抑制効果をフコイダン投与群で認め、腫瘍量もフコイダン投与群で有意に低下していた。組織学的にもフコイダン投与群で腫瘍の浸潤が抑制され、癌細胞のアポトーシスも認められた。<BR>【結論】沖縄モズク由来アセチルフコイダンは癌細胞にアポトーシスを誘導し腫瘍発育を抑制すると考えられた。
著者
松原 智樹 大川 裕司 宮川 和典 鈴木 四郎 高畠 保 江上 典史 谷岡 健吉 小楠 功一 小林 昭 平井 忠明 河合 敏昭 本坊 正典 吉田 哲男 内田 徹也 盛 英三
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.35-38, 2002
参考文献数
7
被引用文献数
2

超高感度・高画質と高信頼性とを両立させたハイビジョンカメラを実現するため、厚さ15μmの新Super-HARP膜でのハイライトきず(強いスポット光が入射したときに生じる白きず)の発生防止に取り組んだ。膜の動作温度ときず発生との関係を調べた実験から、膜の動作温度を従来(約25℃)よりも高温側にシフトさせることでハイライトきずの発生が抑制できることを見い出した。この動作モードでの実用化を目指して耐熱性向上の研究に取り組み、不純物添加濃度の最適化で、きず発生を抑制できる温度での安定動作を可能とした。本膜を適用した超高感度ハイビジョンハンディカメラは信頼性や機動性にも優れ、夜間緊急報道等の放送用途のほか医学研究や科学分野等で活用されている。
著者
盛 英三
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

認知症と糖尿病も加齢とともに増加し、糖尿病による脳微小循環障害は認知症を増悪させる可能性が高い。一方、血糖値が下がりすぎると脳神経細胞死を誘発する可能性もある。ラット脳循環障害モデルとして昨年度に作成したストレプトゾトシン投与等によりI型糖尿病モデルに引き続き、本年度はより臨床的な頻度の高いII型糖尿病モデル(OLETFラット)を導入し、LETOラットを対照群として脳微小循環造影所見を比較した。放射光微小血管造影検査は兵庫県佐用町の放射光実験施設Spring 8の共用実験として脳、腎臓、下肢等の微小血管造影を行った。空間解像度5-10μmの血管撮影装置により、細動脈レベル(50-200μm)の血流制御機能の定量的評価を行った。安静時の撮影後、アセチルコリン(30μg/kg, IA)の投与下で撮影を繰り返した。LETOラット(対照群)では安静時の造影で中大脳動脈から分岐する3-4本の脳穿通枝(血管径50-200μm)を観察することができた。一方、糖尿病ラット(OLETFラット)では観察可能な脳穿通枝数が減少する、同血管径が狭小化する、中大脳動脈自体の血流が途絶するなどの所見が得られた。対照群、糖尿病群のいずれでもアセチルコリンに対する血管反応性は他の臓器の微小血管(心筋、指尖、腎臓)と比べて乏しかった。以上から脳微小循環の糖尿病性血管障害の評価に放射光微小血管造影法が有用であることが確認できた。本方法をアルツハイマー病動物モデルに応用することで認知症と糖尿病の合併の病態生理の検討と最適な治療法の開発が可能となる。