著者
三浦 悌二
出版者
帝京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

今回の研究対象としたハッテライトは、ヨーロッパ、ロシアを経て、19世紀末にアメリカ、カナダに移住したキリスト教の一派で、きわめて多産な集団として有名である。研究代表者が今世紀前半の日本のデータから推測した「季節性の不妊」が、この集団にも起っているかどうかを知ることが今回の研究の基本的な目的であった。出生結婚などが書かれた家族単位の台帳を入手し、計算機に入力して解析を行なった。1.出生の季節性とその長期変動:ハッテライトの結婚の季節には大きな偏り(10月と11月、近年ではさらに6月が多い)があり、第1子の出生季節に強く影響していた。この影響を除くと、春と秋にやや多く、初夏に少ないという、かつてのヨーロッパや日本と類似した型であったが、その変動幅は年平均を中心として±10%未満であり、とくに20世紀に入ってからは変動が小さかった。2.結婚初産間隔:1966年以降生れの母親では中央値が10.5か月と短く、19世紀の12〜15か月と比較しても短かかった。この結果からは、この集団の潜在的出産力が近年減少しているという見方は支持できない。3.母親の出生季節別にみたハッテライトの出生季節性:初夏の出生数の減少が環境中の季節性不妊因子によるとする仮説を、この季節生れの母親が年間平均して出産していた日本のデータから提唱してきた。同様にして今回の集団で、第1子を除いた出生の季節分布を母親の出生季節別に比較したが、各群に顕著な差は認めなかった。4.双生児出産の季節性と母親の出生季節:この集団の双生児出産頻度は0.9%と、一般の西欧白人の1.1%に比べて高くなかった。しかし5ー7月での頻度が少なく、また5ー7月生れの母親で異性双生児が有意に少なかったことから、季節性にはたらく環境要因が、多排卵、もしくは双生児の着床・妊娠の維持に作用している可能性も考えられた。

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こんな研究ありました:多産集団における出産力の疫学的研究(三浦 悌二) http://t.co/RRn2Mb7U9b

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