著者
野矢 正 山中 忍
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.87-90, 2004-07-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
3

オートレフラクトメータには、両眼開放タイプと内部視標タイプがある。両種のオートレフラクトメータと自覚的屈折検査を比較して調べたので報告する。対象は、当院へ来院した患者43名の85眼で、年齢は6歳から78歳であった。両眼開放タイプとしてGRANDSEIKO-WR5100Kまたは、SHIN-NIPPON Nvision-K5001を、内部視標タイプとしてNIDEK AR-600Aまたは、NIDEK AR-1100を使用した。検査結果の球面値(S)および乱視度(C)を集計した平均値と標準偏差は、内部視標タイプS-3.515D±2.842D C-0.923±0.692D,両眼開放タイプS-3.132D±2.570D C-1047±0.753D,自覚的屈折検査S-2.869D±2.631D C-0.601±0.635D,であった。自覚的屈折検査に比較して、内部視標オートレフが球面値及び等価球面値で有意(t検定危険率5%)に近視傾向を示した。このことは、両眼開放オートレフの方が自覚的屈折検査により近い値であることを示唆している。眼鏡処方の時に両眼開放の自覚的屈折検査を行っている。一方、他覚的屈折検査にあっても両眼開放オートレフが自覚的検査に近い等価球面値であり、内部視標オートレフの値から自覚的屈折検査を始めるよりも有効であろうと思われた。球面値、乱視度、軸の全てが自覚的屈折検査と合致する例は皆無であり、自覚的屈折検査の重要性を再認識した。
著者
金谷 まり子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.47-60, 2010 (Released:2011-03-28)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

多くの顔を持つと言われる間歇性外斜視の治療は古くて新しい問題である。 運動面では、せっかく手術をしても、術前、術後の視能矯正的管理がきちんと行われていなければ、多くの症例に戻りが見られ、手術を繰り返している症例も多い。一方視能矯正訓練においても、感覚面の状況をきちんと把握できず、見かけの輻湊訓練等のみを行っていることにより、せっかくの効果を得られていないことも多い。間歇性外斜視の治療においては、感覚面の治療なくしては、間歇性外斜視から、外斜視状態(tropia)をなくした外斜位(phoria)への完全治癒はあり得ないと考える。間歇性外斜視における感覚面で重要なのは、耳側網膜抑制状態であり、そのため、間歇性外斜視の感覚面の視能矯正的検査においては、この抑制状態をきちんと検査、把握することが大切である。 この感覚面の状態把握が大切なことは、今も昔も変わらず、間歇性外斜視の視能矯正的検査の基本である。したがって、1996年の日本視能訓練士協会の講演会シンポジウム「間歇性外斜視」の「間歇性外斜視の視能矯正的検査法」でも述べたことが基本である。その基本的視能矯正的検査を振り返り、特に、間歇性外斜視の病態像の中心である抑制状態の把握、治療方針決定に重要な眼位(最大偏位量)測定方法、その偏位量測定には欠かせない固視視標の重要性と意義、そして抑制検出にもつながる視能矯正的輻湊検査の理論と検査内容の把握について述べた。
著者
原 涼子 奥出 祥代 林 孝彰 北川 貴明 神前 賢一 久保 朗子 郡司 久人 常岡 寛
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.107-111, 2011 (Released:2012-02-22)
参考文献数
11

目的:心因性視覚障害は、視力障害や視野障害の他に色覚異常を訴えることが多い。今回、心因性視覚障害と診断され、片眼の色感覚が消失した1例を経験したので報告する。症例:16歳、女児。右眼で見た時の色感覚の消失を自覚し、近医を受診。2009年6月に東京慈恵会医科大学附属病院眼科へ紹介受診となった。症例は高校生であり、部活動に加え生徒会や学校行事など、学校生活の中で様々な役割を担っており忙しい毎日を過ごしていた。矯正視力は右眼(1.5)、左眼(1.5)であり、右眼のGoldmann視野は、V/4イソプターのらせん状視野、I/4からI/1イソプターの求心性視野狭窄を呈した。色覚検査として、仮性同色表、New Color Test、色相配列検査を片眼ずつ行い、いずれの検査も右眼のみ強度の色覚異常が検出された。特にNew Color Testでは有彩色と無彩色を分けることが難しく、主訴と一致する結果であった。全視野刺激網膜電図における杆体反応・錐体反応の潜時・振幅は正常範囲内であった。頭部MRIに異常所見はなかった。心因性視覚障害と診断し、経過観察していたところ、2010年2月に、色覚が改善したと本人から報告があり、2010年5月に再度色覚検査、視野検査を行ったところ、結果は全て正常であった。経過中、左眼の視機能異常は検出されなかった。結論:心因性視覚障害と診断されたのが、文化祭の実行委員になった直後であったことから、ストレス等による環境的・心理的要因がその背景にあると考えられた。