著者
加藤 真理子 関 建司 平岡 勵 一本松 正道
出版者
公益社団法人石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-9, 2002-01-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
18

ガスエンジン潤滑油は高温にさらされて熱分解を受けたり, 空気や燃焼によって生ずる窒素化合物に触れて酸化, あるいは窒化されるなどして次第に劣化する。潤滑油の劣化が進むと, エンジン効率の低下やエンジンの特定部位に腐食, 摩耗が発生するなどの不具合が生じる。そのため, 適切な周期での潤滑油交換 (更油) が必要となる。一般に, ガスエンジン潤滑油は基油と十数種の添加剤を一定の割合で配合されたものである。ところが, 従来から行っている潤滑油分析方法では粘度や酸化度など潤滑油全体の劣化を示すマクロな指標でしか評価されないので, その劣化原因を特定することや適切な更油周期を設定することが難しい。そこで, 新たに基油の分子量変化や, 特定の添加剤個々の変化を定性定量できる分析方法(より正確に潤滑油の寿命を評価できる方法) について検討を行った。これによって油種に関係なく, 基油や極圧剤•中和剤などの添加剤の劣化状況が判断できるようになったので, ここに報告する。
著者
鈴木 治 山野 紳二郎 小西 裕和 海野 洋 猪俣 誠
出版者
公益社団法人石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.207-213, 2002-07-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
20

Vacuum distillation unit (VDU) など, 残さ油の処理装置における加熱炉のコーキングでは, 油の安定性がその促進要因の一つであると考えられている。油安定性からコーク付着を予測する手法を確立するための第1段階の研究として, この論文では, 小型実験装置を用いた実験によって, 中東系常圧残さ油のアスファルテン凝集と加熱炉管のコーク付着傾向との関連を調べた。実験ではVDUの深絞りの領域となる450°C程度までの流体出口温度が達成されるように試験片を加熱して原料油を供給し, コーク付着速度と原料油ならびに通油後の油の性状を測定した。コーク付着に関しては, SUS304ステンレス鋼と, 比較のために加熱炉管材質として採用されているクロムモリブデン鋼 (5Cr-1/2Moあるいは9Cr-1Mo) も検討した。コーク付着速度は材質によらず試験片の加熱温度とともに指数関数的に増加した。材質間の付着速度はクロムモリブデン鋼よりもステンレス鋼の方が幾分抑制される結果となった。アスファルテンの凝集性の評価は, Heithaus 法に準じ, P値を測定することによって行った。P値はその値が小さいほど油が不安定であり, アスファルテンが凝集してコーク前駆体を形成しやすいことを示す。この油の安定性の評価では, 通油後の油のP値が流体出口温度とともに逆に大きくなることが示された。通油後の油におけるP値の増加は, コーク付着によって流体から不安定なコーク前駆体が除去され, 油が安定化したために生じた変化と考えられる。以上の結果は, 原料油と通油後の油のP値およびコーク付着傾向の評価が加熱炉管のコーク付着の指標として利用できる可能性を示している。