著者
北川 正子 田垣 冴里 堀 由美
出版者
北海道社会保険病院
雑誌
北海道社会保険病院紀要 = Proceedings of Hokkaido Social Insurance Hospital (ISSN:13496093)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.62-65, 2003-12-31

当施設において、平成13年度に発生した転倒197件のうち、要治療に至った25件を、事故報告書、看介護記録を用い調査・分析を行った。その結果、転倒事故者は、脳血管障害後遺症を有する利用者に多い、全員転倒既往歴がある、半数の転倒事故は入所40日以内に発生しており環境変化の影響が考えられる、転倒場所は居室が多く日常生活動作に関連して起きている、一部介助あるいは見守りの必要な利用者に多い、という結果が得られた。高齢者の転倒事故を防止する事は非常に困難であり、特に施設入所者の、可能な限り自由な生活を尊重しようとすればするほど、転倒防止は困難となる。しかし、看護・介護に携わる我々には、利用者一人一人の特性を総合的に判断・分析し、転倒を予測した先回りのケアを提供していく必要がある。
著者
徳橋 聡子 松屋 志保 金沢 幸江 木村 千春 高崎 美佳 佐藤 貴子
出版者
北海道社会保険病院
巻号頁・発行日
2007-11-01

当院では、2004年4月から、全身麻酔の手術患者の歩行入室を開始した。歩行入室が手術前の患者の緊張感を和らげることは文献により明らかになっている。しかし、術後訪問に行くと患者から手術室内の風景が見えて怖かったという言葉が聞かれた。そこで、全身麻酔で歩行入室する患者に聞き取り調査を行なった。その結果、60名中、44名が歩行入室が良かったと答え、恐怖感のなかった者は55名であった。また、疲労感を感じた者はいなかった。これらに手術経験の有無、性別、年齢での有意差はなかった。もし、次回手術となった場合の歩行入室の希望は47名に上がり、多くの患者は歩行入室を望んでいることがわかった。しかし、歩行入室をすることにより不安や恐怖感が増す患者もいるとわかった。そのため、各手術室の閉扉や器材の整理整頓、歩行通路に絵画や写真を飾るなどの環境作りが大切であると判った。
著者
佐藤 素子 千葉 景子
出版者
北海道社会保険病院
巻号頁・発行日
2003-12-31

患者と家族が安心して療養生活を送るためには、極力負担を軽減するような体制を築くことが求められる。今回在宅中心静脈栄養療法(HPN)を選択した高齢世帯の食道癌患者に対し、医療側と地域とでチームを結成し自宅訪問や皆で話し合いをする場を持つ事で退院に導く事が出来た。患者と家族の多く(特に高齢世帯)は、自分達がどのような社会資源を活用できるのかについて理解している例は少ない。そこで、患者の最も身近にいる看護師は、患者と家族の望む生活により近い環境を提供するため、①患者・家族に地域で行われている支援システムを紹介し活用方法を伝える。②患者・家族とともに在宅療養生活をイメージ化し、その実現へ向けて地域への橋渡しを行う。③在宅療養生活を支えるために地域とチームを結成し、その中で患者・家族の代弁者としてリーダーシップを発揮する。という役割がある事を学んだ。
著者
古城 美穂 奥脇 雪絵 千葉 景子
出版者
北海道社会保険病院
巻号頁・発行日
2005-11-30

終末期癌患者の最期には、緩和困難な苦痛が存在し、最期の手段としてセデーションが行われることがある。今回、終末期に持続的セデーションを行った胃癌患者の妻と積極的に関わりそれを振り返ることで、妻がどのような思いを抱いているのか理解を深める事ができた。セデーションを決断する家族にとって自分が意思決定をした責任の重さや後悔の念は重くのしかかり、常に悩み揺れ動く気持ちを持っている。私たちは家族を含めたQOLを考慮しながら、患者にとっての苦痛の意味を家族がどう感じているかを理解する、またあらゆる場面で生じる家族の揺れる気持ちを肯定しながら、セデーションの中止という選択もあることをふまえ時期を逃さず支援していく、という役割が必要である事を学んだ。