著者
斎藤 雅文 堀 由美子 中島 啓
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.69-75, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

人工甘味料の摂取が糖代謝に及ぼす影響を明らかにすることは,糖尿病患者や減量に関心のある人々にとって重要である。しかし,わが国では人工甘味料に関する疫学研究が進んでおらず,その摂取状況の把握と評価は困難であり,適否を判断することが難しい。そこで我々は,国内外の文献検索データベースから人工甘味料と肥満や糖尿病に関する論文を抽出し,研究デザインごとに内容を整理することとした。観察研究では,人工甘味料入り飲料の飲用習慣が肥満や糖尿病の発症に影響すると報告されており,介入研究では,人工甘味料の負荷は糖代謝へ影響しないこと,ショ糖を人工甘味料に代替した食事は体重や糖代謝に影響しないことが報告されていた。これらは欧米人を対象としたものであり,結果についても一様ではなかった。今後は,人工甘味料に関するわが国でのエビデンスを蓄積するために,日本人での記述疫学や観察研究などによる情報の集積が求められる。
著者
堀 由美子 内田 博之 清水 純 君羅 好史 小口 淳美 真野 博
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.242-252, 2021-08-01 (Released:2021-10-02)
参考文献数
27
被引用文献数
1

【目的】保険薬局およびドラッグストアに勤務する管理栄養士・栄養士の配置状況や就業実態を把握するとともに就業上の課題を明らかにすることを目的とした。【方法】第14回薬局管理栄養士研究会(2019年11月19日)に参加した管理栄養士・栄養士153名/企業67社に対し,自記式質問紙調査を行った。有効回答率は96.1%(管理栄養士:96.0%,栄養士:100%)であり,参加企業の各代表者からの有効回答率は100%であった。自由記述で得られた就業上の課題については質的解析を行った。【結果】回答者の多くは関東地方勤務(65.3%),年齢は20歳代(74.8%),資格取得後5年未満(69.4%),勤続年数3年未満(64.0%)の管理栄養士(98.6%)であった。薬局事務を担いながら栄養相談やセミナー・イベント等を業務としていた。質的解析した就業上の課題は,『業務への専念・時間』,『地域社会・患者の理解・連携』,『知識・経験不足』等のカテゴリーが形成され,「業務バランス」,「専門性・職務内容(ビジネススキル)」,「業務生産性」,「他職種との関係」,「地域社会との関係」の視点に分類された。【結論】本研究では,保険薬局やドラッグストアに勤務する管理栄養士・栄養士の就業実態とその課題を示した。就業上の課題解決には,同業種・同職種との連携や教育環境の整備,行政や各界の支援の必要性が示唆された。
著者
鳥居塚 和生 平井 康昭 堀 由美子
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

硫酸亜鉛(5%) 20μL点鼻による嗅覚障害モデルマウスを作成し,嗅球中モノアミン含量への影響について電気化学検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー法により検討した.その結果,対照群に対して,硫酸亜鉛を点鼻投与した群のドーパミン(DA)組織重量は低下することがわかった.この嗅覚障害モデルマウスに対して,漢方処方の加味逍遥散(KSS:柴胡,芍薬,朮,茯苓,当帰,甘草,牡丹皮,山梔子,薄荷,生姜)を経口投与した群では, DA組織重量の低下が抑制された.構成生薬10種より一味の生薬を除いた処方を作成し生薬の寄与を検討したところ,加味逍遥散の脳内モノアミン含量に対する障害改善効果は,構成生薬が総て揃った処方としたときが最も高く,一味を抜くことで弱まることを確認した.また甘草,芍薬,生姜,朮が効果に大きく寄与することが示された.また感覚器入力に対する行動薬理学的検討を実施した.その結果,嗅覚障害モデル動物が記憶学習障害の評価モデルの一つとなりことを明らかにした.またこのモデルにおける嗅球におけるドーパミンレベルの著しい低下と,受動的回避課題の大幅な減衰を引き起こすことに関与する物質を明らかにする目的で,嗅球における神経伝達物質の機能を持つとされるL-カルノシン(β-alanyl-L-histidine)の関与について検討した. L-カルノシンの腹腔内投与により用量依存的にマウスの常同行動を惹起した.またこれらはドーパミン受容体拮抗剤のクロロプロマジン,ハロペリドールおよびドーパミン合成酵素阻害剤で抑制された.中枢におけるドーパミン神経系における制御にL-カルノシンが寄与することを示した.またドーパミンの再取り込み阻害剤ノミフェンシンの投与で,記憶学習障害が顕著な改善を示すことを明らかにした.
著者
斎藤 雅文 堀 由美子 中島 啓
出版者
日本栄養・食糧学会
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.69-75, 2013 (Released:2014-01-23)

人工甘味料の摂取が糖代謝に及ぼす影響を明らかにすることは,糖尿病患者や減量に関心のある人々にとって重要である。しかしわが国では人工甘味料に関する疫学研究が進んでおらず,その摂取状況の把握と評価は困難であり,適否を判断することが難しい。そこで我々は,国内外の文献検索データベースから人工甘味料と肥満や糖尿病に関する論文を抽出し,研究デザインごとに内容を整理することとした。観察研究では,人工甘味料入り飲料の飲用習慣が肥満や糖尿病の発症に影響すると報告されており,介入研究では,人工甘味料の負荷は糖代謝へ影響しないこと,ショ糖を人工甘味料に代替した食事は体重や糖代謝に影響しないことが報告されていた。これらは欧米人を対象としたものであり,結果についても一様ではなかった。今後は,人工甘味料に関するわが国でのエビデンスを蓄積するために,日本人での記述疫学や観察研究などによる情報の集積が求められる。
著者
金子 晃 巽 智秀 藥師神 崇行 平松 直樹 三田 英治 中西 文彦 尾下 正秀 吉原 治正 今井 康陽 福井 弘幸 小林 一三 土井 喜宣 林 英二朗 筒井 秀作 澁川 成弘 巽 信之 堀 由美子 森井 英一 竹原 徹郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.507-517, 2015-10-20 (Released:2015-11-02)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

自己免疫性肝炎200例を対象としてステロイド治療の現状と再燃に関連する因子について検討を行った.ステロイドは162例,81%の症例で投与されたが,そのうち149例92%で著効が得られた.一方,著効した症例のうち約半数で再燃を認めたが,そのうちの約半数はプレドニゾロン5 mg/日未満の時点で再燃していた.再燃群と非再燃群の2群間では有意差のある因子は認めなかったが,プレドニゾロン5 mg/日以上で再燃した32例をステロイド依存群,5 mg/日以下の維持量で再燃を認めなかった62例をステロイド非依存群として解析したところ,有意差のある因子を複数認めた.さらに,多変量解析にて年齢とγ-GTPが再燃に関連する因子であるという結果が得られた.このことより,再燃に関連する因子の検討においては,再燃時のステロイド用量も考慮して解析することが重要であると考えられた.
著者
吉積 一真 熊倉 啓人 藤浪 未沙 細谷 孝博 熊澤 茂則 堀 由美子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.237-245, 2020 (Released:2020-12-26)
参考文献数
34

パルミラヤシ由来の含蜜糖であるパームシュガーは, ポリフェノールやミネラルを多く含むことから, 上白糖の代替品としてだけでなく, 生活習慣病に対する有用性が期待されている。そこで, パームシュガーの総ポリフェノール含量と抗酸化活性を評価し, 実験動物を用いたパームシュガーの単回・長期摂取が血糖応答に及ぼす影響について検証した。その結果, パームシュガーの総ポリフェノール含量は黒砂糖と同程度に高含量であり, 抗酸化活性 (ORAC値) は黒砂糖より低いものの, ココナツシュガーやメープルシロップより高い値を示した。パームシュガーのマウスへの単回投与は, 上白糖と比較して投与後30, 120, 180分のΔ血糖値が有意に低かった (30分: p < 0.01, 120, 180分: p < 0.05) 。また, 曲線下面積 (ΔAUC) も, 上白糖と比べて有意に低値であった (p < 0.01) 。約3カ月間のパームシュガーの継続的な投与による空腹時血糖値の上昇は認められなかった。以上の結果から, パームシュガーは血糖上昇が緩やかな甘味料であることが示唆された。
著者
北川 正子 田垣 冴里 堀 由美
出版者
北海道社会保険病院
雑誌
北海道社会保険病院紀要 = Proceedings of Hokkaido Social Insurance Hospital (ISSN:13496093)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.62-65, 2003-12-31

当施設において、平成13年度に発生した転倒197件のうち、要治療に至った25件を、事故報告書、看介護記録を用い調査・分析を行った。その結果、転倒事故者は、脳血管障害後遺症を有する利用者に多い、全員転倒既往歴がある、半数の転倒事故は入所40日以内に発生しており環境変化の影響が考えられる、転倒場所は居室が多く日常生活動作に関連して起きている、一部介助あるいは見守りの必要な利用者に多い、という結果が得られた。高齢者の転倒事故を防止する事は非常に困難であり、特に施設入所者の、可能な限り自由な生活を尊重しようとすればするほど、転倒防止は困難となる。しかし、看護・介護に携わる我々には、利用者一人一人の特性を総合的に判断・分析し、転倒を予測した先回りのケアを提供していく必要がある。
著者
堀 由美子 村社 知美 福村 基徳 鳥居塚 和生 伊田 喜光
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.3-11, 2008 (Released:2009-02-28)
参考文献数
21
被引用文献数
7 16

水腫, 脚気, 解毒の改善に用いられるアズキ (生薬名: 赤小豆, セキショウズ) 煮汁の成分を明らかにする目的でアズキ熱水抽出物の成分研究を行った。その結果, フラボノイドならびにその配糖体13種を単離し, 構造を明らかにした。次いでアズキ熱水抽出物およびこれから得られたフラボノイド誘導体についてDPPH法によるラジカル消去活性を測定した。その結果, いずれも代表的な抗酸化物質であるBHAに匹敵する強い抗酸化作用を示した。