著者
古賀 政利 井上 学 園田 和隆 田中 寛大 塩澤 真之 岡田 敬史 池之内 初 福田 哲也 佐藤 徹 猪原 匡史 板橋 亮 工藤 與亮 山上 宏 豊田 一則
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10776, (Released:2020-03-30)
参考文献数
46
被引用文献数
3 1

要旨:脳梗塞の診断にはCT もしくはMRI による画像評価が必須である.再開通療法の可能性があれば速やかに最低限必要な画像評価で再灌流療法の適応を決定することが重要である.2018 年に改訂された米国のガイドラインでは,来院から20 分以内に画像診断を行うことが推奨されたが,わが国のガイドラインには画像診断までの時間の推奨はない.わが国では普及率が高いMRI で急性期脳梗塞を評価している施設が多い.機械的血栓回収療法の適応判定には脳実質の評価に引き続き速やかな頭頸部血管評価が必要である.米国では発症6 時間超の脳梗塞に対してCT もしくはMRI を使用した脳虚血コア体積や灌流異常の評価による機械的血栓回収療法の適応を推奨しているが,わが国では灌流画像評価や迅速解析に対応した自動画像解析ソフトウェアが普及していない.急性期脳梗塞に対する適切な再灌流療法を行うための,わが国の医療環境にあわせた画像診断指針が必要であろう.
著者
豊田 一則
出版者
日本脳循環代謝学会
雑誌
脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌) (ISSN:09159401)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.293-297, 2016 (Released:2016-07-29)
参考文献数
6

Bleeding with Antithrombotic Therapy Study(BAT 研究)の前向き観察研究では,脳血管障害や心臓血管病に対して抗血小板薬かワルファリンを服用する患者を4009 例登録し,抗血小板薬の二剤併用やワルファリンと抗血小板薬の併用が単剤治療に比べて出血イベントを増やすことを,日本人患者集団ではじめて示した.そのサブ研究として,登録患者の観察期間中の血圧値と出血イベント発症との関係を調べ,観察期間中に頭蓋内出血を発症した患者で,収縮期・拡張期ともイベント発症までに血圧が漸増していた.頭蓋内出血発症の至適カットオフ値として観察終了時収縮期血圧130/81 mmHg 以上を提示し,国内ガイドラインで抗血栓薬服用者への厳格な血圧管理を推奨する根拠となった.また後ろ向き観察研究では発症24 時間以内に入院した脳出血患者1006 例を登録し,発症前の抗血栓薬服用が早期血腫拡大や急性期死亡に関連することを示した.
著者
豊田 一則
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.264-270, 2021 (Released:2021-06-22)
参考文献数
16

脳梗塞超急性期の静注血栓溶解療法は,病的血栓を遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータの力で溶解して,血栓で詰まった脳動脈を再開通させ,脳の組織が決定的に傷む前に十分な脳への血流を戻す治療である.発症後4.5時間以内に治療開始可能な患者に適応があるが,最近の知見に基づき,発症時刻不明の患者でも頭部画像診断の異なる撮像法による虚血所見出現具合の差(DWI-FLAIRミスマッチ所見)やペナンブラ所見を確認できれば治療を行えるようになった.国内施行率は脳梗塞発症者の1割前後と推測されるが,治療対象となるべき患者はこれより遥かに多く,更なる治療の普及が必要である.アルテプラーゼが世界で承認された唯一の血栓溶解薬であるが,近年血栓への親和性が高いテネクテプラーゼを用いた臨床試験が海外で多く行われ,オフラベルで使用を始めた地域も増えた.国内でも同薬の早期導入が望まれる.
著者
豊田 一則
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.75, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
16

【要旨】近年の衛生環境の変化に伴い、梅毒や結核などの脳動脈への直接感染は減った。現在での直接感染による脳卒中の代表例は感染性心内膜炎で、患者の 10〜35%に脳合併症を認める。一方で脳動脈に対する感染の間接作用として、末梢血単核球からの炎症性サイトカインの増加をはじめとする諸反応が粥状硬化を促進し脳梗塞を起こし得る。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、発生初期の報告では脳卒中を増やしたが、その後の各地からの報告では脳卒中患者が減ったとの報告が目立ち、これには受診控えなどの社会的側面が影響するとみられる。
著者
入江 研一 三輪 佳織 池之内 初 千葉 哲也 細木 聡 吉村 壮平 猪原 匡史 豊田 一則 古賀 政利
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.11002, (Released:2022-05-18)
参考文献数
21

【目的】椎骨動脈解離患者における延髄梗塞の臨床的および画像的特徴を検討した.【方法】2011年11月~2018年3月における急性期延髄単独梗塞連続例を調査した.MRIで延髄梗塞の形態的評価を行った.機能的転帰は3カ月後mRSで評価した.【結果】延髄単独梗塞の57例が対象となった.延髄梗塞のうち椎骨動脈解離15例,非解離42例であった.椎骨動脈解離群では非解離群と比較して,若年発症(51±7歳vs 70±13歳,p<0.001)であり,延髄外側梗塞は椎骨動脈解離群で有意に多く(100% vs 71%, p=0.02),延髄内側梗塞は全例で非椎骨動脈解離群であった(0%).機能的転帰不良(mRS≥3)は非解離群が椎骨動脈解離群に比して多かった(0% vs 24%, p=0.049).【結語】椎骨動脈解離による延髄単独梗塞は若年発症で,延髄外側梗塞を来しやすく,機能的転帰は良好である.
著者
安藤 大祐 豊田 一則
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.87-90, 2020 (Released:2020-09-15)
参考文献数
16

With the development of medical treatment in recent years, the incidence of stroke associated with carotid stenosis has continued to decrease. Treatment for carotid artery stenosis is intended to reduce the risk of thrombotic events and atherosclerotic changes to prevent future cardiovascular events. Antiplatelet therapy is routinely used for secondary prevention of ischemic stroke and is effective for the prevention of microembolism from the rupture or erosion of a carotid plaque. It is common to perform dual antiplatelet therapy in the acute to subacute stages of ischemic stroke. Lipid modification with statins is an essential element in the treatment of carotid artery stenosis. Statins are used to reduce the progression of carotid intima-media complex thickening and for plaque stabilization. Management of diabetes mellitus, lifestyle changes (including smoking cessation), physical activity, and weight management are also important for the prevention of carotid artery stenosis.
著者
吉村 壮平 古賀 政利 豊田 一則 中井 陸運 三輪 佳織 笹原 祐介
出版者
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

脳卒中の予防や、医療機関の診療レベルの向上のためには,脳卒中患者の登録事業により脳卒中診療の実態を知ることが不可欠である。わが国最大規模の、「日本脳卒中データバンク」のデータを人工知能(AI)を用いて解析することにより、脳卒中後の障がいを予測する方法と、それを臨床現場で活用できるシステムの開発を目的とする。簡易に利用可能なシステムが実用化されれば、脳卒中専門医以外の医療者や一般人であっても、脳卒中を起こして直ぐの時期にとるべき行動を決定する補助とすることができる。脳卒中を正しく診断し、適切に治療方針を立て、再発予防治療を行うことにより、重い障がいが残らないようにすることが期待される。
著者
東田 京子 田中 智貴 山上 宏 泊 晋哉 福間 一樹 奥野 善教 阿部 宗一郎 長束 一行 豊田 一則 猪原 匡史
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.217-222, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

脳卒中後てんかんの大規模研究は少なく,一定のコンセンサスが得られていない.今回,本邦での脳卒中後てんかんの診療実態を明らかにすることとした.2015年2~5月の脳梗塞治療症例数上位500施設を対象に患者数,検査,治療について,計14問のアンケートを依頼し,189施設から回答が得られた.てんかん入院症例の39%に脳卒中既往があった.検査については頭部MRIや脳波検査はそれぞれ99,97%の施設で施行されていたが,検査陽性率は低値であった.治療については発作の再発抑制にはカルバマゼピン,バルプロ酸,レベチラセタムの順に第1選択薬とされていた.
著者
豊田 一則 小久保 喜弘
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

腎臓病と脳血管障害の関係、言い換えれば脳腎連関を解明する目的で、以下の検討を行った。(1) 吹田研究に登録された都市型住民において、慢性腎臓病が頸動脈硬化の独立した危険因子となり、慢性腎臓病の有無に血圧カテゴリーを加えた交互作用が頸動脈硬化に対して存在した。(2)単施設急性期脳出血患者において、入院後早期の腎機能低下に超急性期収縮期血圧高度低下が有意に関連し、また腎機能低下者に転帰不良例が多かった。(3)多施設共同研究で、腎機能障害が脳梗塞rt-PA静注療法の治療成績不良や脳出血の3か月後転帰不良に独立して関連した。(4)脳血管障害と慢性腎臓病の関連を、英文総説に纏め、本研究成果も採り入れた。