著者
木塚 俊和 亀山 哲 小野 理 三上 英敏
出版者
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度は前年度に引き続き将来的な耕作放棄地の有効利活用策の提案を目的とし、以前農業利用されており、現状において、適正な利用が図られるべき土地であるにも関わらず長期間に渡り利用されていない土地(未利用農地と定義する)の分布と面積の実態把握を行った。具体的には、釧路湿原流域を対象に衛星画像解析を行い、農地区画(農地ポリゴン)内の土地被覆割合を4つのカテゴリー(未利用農地、森林、畑作地、牧草地)別に計算し、各カテゴリー別の占有率を地図化した。結果として得られた地理情報を基に、実際の湿原周辺部において、より具体的な未利用農地の土地利用転換案について検討を進めた。未利用農地における栄養塩浄化量の解明については、前年度に引き続き現地調査区における水位、水質等の観測を継続した。これまでの観測データに基づき調査区の栄養塩収支の解析を進めた。その結果、地表流入・流出が調査区の水収支の大部分を占めており、隣接河川の増水の影響を受けていることが考えられた。また、栄養塩の流入・流出量も河川増水時に大きく増加することが分かった。さらに、未利用期間が異なる他の圃場においても水質調査を行い、2か所の未利用農地を対象に地表水や地下水の栄養塩濃度を比較した。釧路湿原周辺の未利用農地の発生状況や栄養塩動態についてこれまで知見が限られていたため、本研究により、未利用農地の今後の有効利活用を検討するための貴重なデータを取得することができた。本研究成果の地域への活用を図るために、対象地域の村役場、酪農家、釧路湿原自然再生協議会の事務局等を訪問して、研究結果を報告するとともに、未利用農地の今後の有効利活用策について協議した。
著者
大野 泰之 渡邊 陽子 松木 佐和子 滝谷 美香
出版者
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

食葉性昆虫の大発生した広葉樹二次林において,健全なウダイカンバが衰退(枝枯れ)・死亡に至る過程を明らかにした。観察した二次林では2006-2008年の3年間に食葉性昆虫の大発生が確認された。顕著な衰退は2009年に認められ,観察木の15%は樹冠部の枝の50%以上が枯損した重度の衰退木であった。解析の結果,食葉性昆虫が大発生する以前の20年間(1986-2005年)の年輪幅が狭く,食害の程度が大きかった個体ほど,重度の衰退木となりやすかった。これらの衰退木の約80%がその後の2年間に死亡した。これらの結果から,長期間の低成長は食害に対する感受性を増加させ,その後の衰退に影響する可能性が高い。
著者
堤 拓哉
出版者
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、雪国に建つ建築物を対象に、稀に起きる豪雪による被害と毎年のように繰り返し起きる日常的な雪の問題の二つを合わせて「建築物の雪害によるリスク」と捉え、雪害の発生確率と発生による損失を統計データの分析から定量化することにより、建築物の雪害によるリスクの評価手法を提案し、これまで検討されていない雪害リスクマネジメントを体系化することを目的とする。研究では、アンケート調査により豪雪地帯で起きている雪害内容を把握した。特に北海道では、敷地内の雪の問題、吹雪による問題が大きなリスク要因となっていることが明らかになった。雪害のリスクを評価する手法として、多変量解析に基づく雪害発生の判別、損失期待値に基づくリスク評価法を検討し、雪害リスクマネジメントのフローを提案した。