著者
水野 正好
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.65-79, 1997-03

倭国女王卑彌呼の宮都が邪馬臺国にあることは『三国志』魏志の明記するところである。從前、この邪馬臺国は、魏志に頻出する女王国と混同され、同一視される場合が多いが、邪馬臺国と女王国は区別されるべき、別個の存在であることは魏志を熟読することで理解される。女王国の謂いは「女王の統治する国」の意であり、「女王の都する国」の意をもたぬことは歴然と窺えるところである。
著者
平山 裕之
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.196-198, 2009-03

日本の中近世は、多様で個性的な「集落(都市・町・村落)」が展開した時代とされる。近年、中近世考古学の顕著な進展に伴い、「集落遺跡」に対する関心も高揚しており、その調査・研究は学際的に結実することが多くなった。しかしながら、そうした学際的研究の場において、これまで議論の狙上に載ることがほぼ皆無であった集落も存在している。その典型例に「鉱山集落」を挙げられよう。鉱山集落を「都市」と認識する研究も存在しているが、「遺跡」としての認知度が低く、また開発行為に伴う緊急発掘の対象になることも稀で、考古学的にはその評価が判然としていない。本論文はこうした現状を鑑み、鉱山集落は「都市遺跡」との認識が可能か否かを念頭に置くものとする。そして集落の実相について考古学的な検討を行うが、特に「中近世移行期」における金銀山集落の再評価を目的としている。
著者
前田 泰宏
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.12, pp.11-19, 2007

臨床心理学関係の実習授業において、認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:以下CBTと略記)に関する以下の二つの実習を行った。一つは、自己の体験をCBTモデルに沿って把握する実習であり、今一つはCBTの代表的な認知的技法である認知再構成法において使用されることの多い「思考記録表」の作成に関する実習である。本授業に関するアンケート結果に基づき、CBTの理解度および認知再構成法の効果について検討した。その結果、「思考記録表」は認知の再構成を容易にさせることに貢献することが窺えた。加えて、「思考記録表」というツールは、「困り事」に直面しても認知をコントロールすることで肯定的な感情を維持できること、すなわち、いわゆる自己効力感を醸成する上でも役に立つことが示された。
著者
別所 崇
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.13, pp.59-76, 2008

本研究は、個人の他者とのつながり方が、心理的距離の取り方にどのように反映されるかを、Wilfred,Bion(1961)の原子価の概念に基づき検証するものである。対人関係における自他の距離感には、パーソナル・スペースに代表される物理的距離感と、相手との親密度などに応じて決定される心理的距離感がある。しかし、先行研究にみられる心理的距離の研究では個人の特性や親密さの観点から心理的距離をとらえることが多かったように思われる。しかし、距離というからには、自分と相手という二者を考える必要がある。そこで本研究では、自分と他者との連結からみた心理的距離を、Bion(1961)の唱えた原子価の概念を利用し、さらにそれを発展させたHafsi(1997,2006a)の理論をもとに、ある空間における二者間の打ち合わせ場面を想定し、自分と相手の座席選択行動に、どのような違いが見られるかについての仮説を立て、新しく作成した対人心理距離尺度を使用し、原子価の観点からの検証を試みた。その結果、原子価が心理的距離の取り方に影響を及ぼす、ということが実証された。これにより、本研究では、自分と他者との連結から見た心理的距離についての新たな視点が示唆された。
著者
槇田 絵里香
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.306-309, 2011-03

一〇世紀初頭に唐が滅亡し、五代十国の混乱期に入っても呉越国の海商を中心に中国海商たちの貿易活動は続けられた。一〇世紀末以降、宋が統一を行い、農業をはじめとする諸産業、国内外の商業活動及び科学技術の発展がもたらされ、中国海商の日本来航が頻繁となり、日宋貿易が展開していく。