著者
ドルジプレフ オトゴン
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 = Annual reports of the Graduate School of Nara University (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.20, pp.47-71, 2015

"本稿は、筆者の母国であるモンゴルにおける出土金属製遺物の科学的保存処理方法、保存研究の基礎となることを目指し、モンゴル出土の金属製遺物を対象とした保存処理方法の研究である。 出土遺物に対して、適切な保存処理を決めるために当遺物が埋蔵されていた土壌性質などの環境情報が重要である。その為、モンゴルの自然、気候や地理などの概要、さらに本研究対象遺物の出土した遺跡周辺の気候、土壌性質について検討した。 日本の金属製遺物の保存に用いられている保存方法にしたがってモンゴル出土遺物の保存処理研究を行った。研究結果、今回の脱塩処理に利用した水酸化リチウム水溶液はモンゴル出土の遺物にとって副作用がないことがわかった。そして、腐食の原因となる塩酸化イオン濃度が日本の例と比べて低かったことなどから、モンゴル草原地帯は乾燥気候でもあり、土壌性質も塩分濃度が低いため埋蔵文化財にとって比較的良い条件であると考える。"
著者
児島 由紀
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.1, pp.109-117, 1996-03

『神婚説話』とは、神と神、または神と人という、片方の配偶者が『神』である婚姻潭のことである。こうした『神婚説話』は世界各地に見受けられるが、ここでは主に神と人との婚姻課に着目してみた。

1 0 0 0 IR 橘広相考(1)

著者
滝川 幸司
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.18, pp.242-228, 2013

菅原道真の先蹤ともなった、橘広相について、伝記考証を中心に考察を加えた。本稿では、文章博士任官までを扱う。
著者
松本 友香子
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.6, pp.234-240, 2001-03

「阿弥陀二十五菩薩来迎図(阿弥陀聖衆来迎図)」(以下「来迎図」とする)とは、臨終を迎えつつある人間の魂を阿弥陀如来が聖衆とともに西方浄土から迎えに来る様を描いた図のことである。その聖衆のなかに楽器を奏し舞を舞う一群(以下伎楽菩薩とする) があり、それはあたかも天上の舞楽団のようである。本論はこの伎楽菩薩とその持物である楽器に着目し、来迎図における彼らの役割、ひいては来迎図という仏教絵画のなかでの音楽表現の意味について、絵画的な観点からの考察を試みたものである。
著者
野村 充利
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.7, pp.81-87, 2002-03

「光源氏は琵琶を弾かない。」私が、この修士論文において、このテーマを選んだのは、『源氏物語』において、他の楽器においては最も演奏回数の多い光源氏が、物語中三十九例見られる「琵琶」を何故一度も演奏しなかったのかについて疑問に思ったからである。そのことを明らかにするために『源氏物語』において「琵琶」を演奏する者は、どんな者たちなのであるのか、またそれらの者に何かの共通点はあるのかということについて本文を考察し、それらの者と光源氏とを比較してみたい。
著者
高坂 麻子
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.8, pp.47-51, 2003-03

楽器は人間が音楽を創始した古代から様々に展開しつつ、現在に至るまで私達の生活の一部として身近な道具である。楽器にとっての装飾は、尊いものへの献上品として、それらへの敬意が当時の美意識と技術によって具現化されたことにはじまったと考えられる。つまり楽器を装飾するという行為は、楽器を音楽のイメージとして高貴な存在への捧げものと解釈したことに端を発したのである。献上品としての楽器は目に見えない音の具象化であり、実際に演奏を目的とするよりも、飾りすなわち調度品としての性質を強くするものであった。このように楽器を献上品(音のイメージの具象化)とした場合に対し、本来的機能である音を出す実用品として多様に発展した楽器も、人々に身近なものとして愛用され、装飾された。しかしその装飾は、献上品・敬意の具現化としての装飾とは当然別の性質をもつものとなる。本稿は、道具としての楽器に施された装飾の性質について、近世後末期の大名コレクションを題材として考察する。
著者
瀧 一世
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.18, pp.83-91, 2013

現在、インターネットの普及により、研究者の間で「インターネット依存症」と呼ばれる問題が注目をひくようになった。その結果、いくつかの研究がなされ、いくつかの尺度が開発された(Young, 1998;菱山, 2009)。しかし、これらの尺度における共通の問題として、インターネット依存症の定義が曖昧であり、依存と過度の利用との区別がされていないことが指摘される。以上の問題を改善するために、まず依存症の定義を行ない、その定義に基づいて新しい尺度を作成した。さらに、新しい尺度を用いて私立大学生を対象に調査を実施した。調査によって集められたデータを因子分析にかけ、その結果『対人関係形成のための過剰なインターネット利用』『インターネット離れの困難さ』の2つの因子が抽出された。
著者
太田 均
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.25, pp.168-155, 2020-02

室生山寺の創建及びそれに至る「前身寺院」の事情を明らかにして、その宗教環境につき考察した。室生山寺は山部親王の病気平癒を祈る「延寿法」(宝亀九年)成就後の創建で、前身寺院は宝亀元年から同五年の間に成立したと推定した。前身寺院創建に関与した賢璟は、後に平安京を地相しており、寺地の選定にあたり優れた地相能力を発揮し、地相に臨んでは『高僧伝』『続高僧伝』などに記される、中国における山に対する信仰を念頭に、特に龍穴神を護法神と位置づけることを重視したと見られる。以上の考察に際し、初期室生寺(室生山寺とその前身寺院)成立に関し必須の史料である『宀一山年分度者奏状』と、それに関する従来の解釈を踏まえた。
著者
内田 真雄
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.9, pp.152-154, 2004-03

古墳時代の研究において、鉄器にかかわる諸事象の解明は、国家の成立過程などを研究する上での重要課題である。鉄をめぐる研究は、鉄器それ自体の研究の他に、鉄器の生産体制や流通論、所有関係など様々な視点からのアプローチがある。本論では、鉄器生産に関連する遺物から古墳時代の鉄器生産の展開について考えた。具体的には、鍛冶遺構・鍛冶関連遺物の検討や、製品である鉄器自体から、鍛冶技術の発展と展開について検討した。
著者
村上 智見
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 = Annual reports of the Graduate School of Nara University (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.21, pp.43-54, 2016

中央アジアのウズベキスタン共和国フェルガナ地方に位置する4~7世紀のムンチャク・テパ遺跡では、複数の墓から衣服が出土した。ムンチャク・テパ遺跡から出土したこれらの衣服は、有機質が残存しにくい当該地域において希少な実物資料となっている衣服を構成する織物の種類は、平織物、平地綾文綾、緯錦であり、材質は一部に付着している棉の平織物を除いて、全て絹であった。織物の種類や糸の撚りなどの技法、繊維材質、そして文様などから、中国製や現地製と考えられる織物の特徴が確認できた。
著者
羽良 朝風
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.23, pp.186-176, 2018-03

" 和歌山県九度山町に所在する慈尊院は、弘法大師空海とその母公に由緒のある寺院で、ここにはいくつかの注目すべき密教法具が伝来する。 今回の調査の対象とした密教法具は、いずれも現存遺品が少ない形式や細部意匠を持つ作例である。金銅独鈷杵は「鬼面・鬼目式」という特異な形式を持つ。金銅五鈷杵は、仏舎利を埋納したと考えられる埋金の跡が見られ、これは空海請来の五鈷杵にも見られる。金銅五鈷種字鈴は、作例の少ない種字鈴である。金銅三鈷鈴は、特異な三鈷を持ち、大陸からの請来品と考えられる。飲食器は、空海の母公の「歯」が奉籠されたという伝承を持つ。 また法具は、形式等から鎌倉時代から室町時代の製作と考えられるが、中世の史料が少ない慈尊院において、その間の事情を物語る重要なものである。特殊な形式を持つ作例が多いことは、慈尊院が中・近世において真言密教の有力寺院であったことを示す。"
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.21, 2016-03

社会学研究科 社会学専攻「適応」を目指すことによる生きづらさの実証的研究, 蒲生彩乃, 91-92発達障害児をもつ親の育児不安に関する研究 : 性役割態度とソーシャルサポートの関連性, 黒崎徹, 93-95大学生の過剰適応に関する実証的研究 : 親からの自立性援助の認知度合とアイデンティティの形成度合いの観点から, 阪本瞳, 96-97母なるものを映した"場"に起こるイニシエーションたち : 心的な守りと距離感のつくり方の検討, 豊嶋貴彦, 98-100マインドフルネス実践を参加者はどのように認知しているのか : KJ法による探索的検討, 中田翔太郎, 101-103対人結合能力と自己愛傾向との関係について : 原子価論に基づく実証的研究, 早見知世, 104-106自意識特性がストレスコーピングと気分に及ぼす影響, 樋口諒, 107-109適応障害患者へのメイクセラピー実施プロセスと一考察, 森田夕夏, 110-111
著者
池田 碩 澤 義明
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.18, pp.13-28, 2013

2011年3月11日、東北地方太平洋岸の広い範囲で、世界的にみても観測史上最大級の地震が発生した。この地震は、これまでわれわれが抱いていた自然現象へのイメージを一変させた。単に、その大きさや発生の要因、プロセス、振動波の伝播のようすといった物理的な要素にとどまらず、現代の科学技術や社会のあり方をも揺さぶる力を示した。
著者
島田 守
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.86-88, 2006-03

現在、私たちが日常で何気なく使っているガラスのコップ、実はおよそ2000年間もほとんど変わっていない技術で作られている。今でもガラス工房に行けば、職人が竿に息を吹きこんで、形も大きさも様々な作品を作っているところを見ることができる。しかし、これほど長い歴史の間使われてきているにもかかわらず、その起源や初期の技法、設備・道具の実態などはほとんど分かっていない。分かっているのは吹きガラスがあったというくらいのもので、ではそれが実際にどのようにして作られたのか、残念ながらそれを示す考古学的な発見はほとんどないのが現状である。完成された作品は世界中の多くの博物館や美術館で見ることができるが、それらを作った設備や道具、人間については知ることができない。
著者
大木 祥太郎
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.9, pp.33-35, 2004-03

十六世紀日本列島を訪れた宣教者たちの記述からは、男性同性愛(男色) が日常的な風俗であったことが窺える。歴史学はその行為を社会の周縁に位置づけるか個人的な性癖として解釈し、男色という文化の社会的広がりを意識的に削除し無視してきた。本論文の主題は家父長制や私有財産の継承という社会構造の変革のなかで中世の性愛が実体的意味として機能していたことを考察することにあります。
著者
竹下 繭子
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.244-246, 2007-03

仏像の服制は地域性や時代様式が反映しているので、図像の源流や伝播状況を論じる上で大きな手がかりとなる。本稿では服制のうち「鼻緒履物」を取り上げ、中国を中心とした東アジアにおける仏教図像の伝播について考察する。
著者
矢守 克也
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.331-358, 2002-03

本研究は、阪神・淡路大震災(1995年1月17日)にともなう体験の記憶とその伝達をめぐって筆者が展開してきた一連研究の一部である。本研究では、震災に関連して建設された博物館が果たす心理・社会的機能について論じる。具体的には、震災後3年を経て、同震災を引き起こした震源断層である野島断層(兵庫県淡路島)の保存を主たる目的として建設された「北淡町震災記念公園(野島断層保存館)」をとりあげた。まず、同施設の建設経緯、施設展示・運営内容に関する事実経過、客観的事実・現状について集約した(Ⅱ節)。次に、筆者自身のフィールドワーク(現場観察、スタッフや見学者に対するインタビューなど)に基づいて、同施設の運営に携わる人々(館内スタッフや語り部の人々)、および、そこを訪れる人々が示す態度、行動上の特徴について列記した。あわせて、Ⅱ節で報告した個々の展示内容が果たしていると思われる機能についても言及した(Ⅲ節)。最後に、Ⅳ節では、以上の2節を踏まえて、同施設が阪神・淡路大震災の記憶とその伝達に果たす役割、および、問題点、ひいては、博物館一般が現実的な出来事の記憶とその伝達に果たす役割、および、問題点について考察を加えた。
著者
平山 裕之
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
vol.14号, pp.196-198, 2009-03

日本の中近世は、多様で個性的な「集落(都市・町・村落)」が展開した時代とされる。近年、中近世考古学の顕著な進展に伴い、「集落遺跡」に対する関心も高揚しており、その調査・研究は学際的に結実することが多くなった。しかしながら、そうした学際的研究の場において、これまで議論の狙上に載ることがほぼ皆無であった集落も存在している。その典型例に「鉱山集落」を挙げられよう。鉱山集落を「都市」と認識する研究も存在しているが、「遺跡」としての認知度が低く、また開発行為に伴う緊急発掘の対象になることも稀で、考古学的にはその評価が判然としていない。本論文はこうした現状を鑑み、鉱山集落は「都市遺跡」との認識が可能か否かを念頭に置くものとする。そして集落の実相について考古学的な検討を行うが、特に「中近世移行期」における金銀山集落の再評価を目的としている。