著者
高橋 祥友
出版者
山梨医科大学医学会
雑誌
山梨医科大学雑誌 = 山梨医科大学雑誌 (ISSN:09120025)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.23-28, 1986

青木ケ原樹海は,自殺が多発する地域として有名であるが,これまでその詳細についての報告はなかった。昭和57年から59年の3年間における同地域での自殺未遂116例につき,山梨県警察富士吉田警察署の資料を基に情報を収集し分析することにより,同地域における現在の危機介入の実態を把握し,その改善に役立てる目的で今回の調査を実施した。青木ケ原樹海での自殺未遂について幾つかの特徴が見出されたが,そのなかでも特に次の点が注目された。1) 自殺既遂者数から推定される自殺未遂者数に比し,実際に保護下におかれる自殺未遂者数が極めて低い。2) 自殺未遂者中の男女比は2.9対1と一般に言われている傾向とは逆転していた。3) 他者に対する敵意の表出に乏しく自己の消滅や静かな死を望む傾向がみられた。4) 現時点における危機介入はほとんどが警察の手にゆだねられており,短時間のうちに家族のもとへ自殺未遂者を戻すことに終わっており,精神医学的介入は皆無に近かった。自殺未遂者が,将来既遂に終わる危険は,一般人口に比べてはるかに高く,現在までの警察主体の危機介入に加えて,今後積極的な精神医学的介入が必要と考える。
著者
佐野 主一 立川 博邦 木之瀬 正 相野田 隆雄 宮崎 吉規 山本 安幸 池田 昌弘 赤羽 賢浩 藤野 雅之 鈴木 宏
出版者
山梨医科大学医学会
雑誌
山梨医科大学雑誌 = 山梨医科大学雑誌 (ISSN:09120025)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.125-130, 1988

症例は58歳男性,海外渡航歴なし。右側腹部痛,発熱を主訴に昭和60年10月当科入院。入院時検査所見では WBC 28300,CRP 6(+),梅毒反応陽性,HBs抗体陽性であった。US,CTで,肝右葉に径7cmと4cmの中心部壊死を思わせる局在性病変を認め,肝膿瘍と診断。ドレナージ施行。膿汁の鏡検でEntamoeba histolyticaを確認。内視鏡検査にて腸管病変は確認し得なかったが,糞便の鏡検でも同様の原虫を認めた。このため metronidazole 1500mgを18日間,tinidazole 2000mgを11日間投与した結果自覚症状は消失し,白血球数も正常化し,CT上膿瘍腔の縮小化も認めた。現在は再発なく外来通院中である。近年アメーバ性肝膿瘍は男性同性愛者に多発すると報告されているが,本例では確認し得なかった。
著者
宮沢 伸彦 掘越 徹 西ケ谷 和之 柿沢 敏之 金子 的実 深町 彰 貫井 英明
出版者
山梨医科大学医学会
雑誌
山梨医科大学雑誌 = 山梨医科大学雑誌 (ISSN:09120025)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.61-66, 1989

1984年5月から1988年5月までの4年間に経験した高血圧性脳内出血67例について臨床的検討を行い,被殻出血を中心に外科的治療法の成績・手術適応について報告する。又,最近比較的非侵襲的な外科的治療である定位的血腫吸引術も行っているので合わせて報告する。対象は被殻出血41例,視床出血7例,皮質下出血6例,小脳出血9例,脳幹出血4例であり,年齢は36歳~83歳,平均59歳で,男性が64%を占めた。被殻出血の手術適応はCT上の血腫の最大径が3cm以上であり,神経症状,意識障害があるかまたは出現することが予測される例とした。被殻出血で手術を施行した31例の成績は21例(67%)が予後良好,6例(20%)が予後不良,4例(13%)が死亡であり,全国統計と比べて手術成績は良好であった。神経学的重症度1~3の例では74%が機能予後良好,重症度4a~5では25%が予後良好例であった。CT上の血腫の最大径が5.5cm以上のもの及びCT分類IVb~Vでは予後不良であった。以上の結果から,被殻出血はCT上の血腫の大きさ,広がり,神経学的重症度をよく考慮して手術適応を決定すれば比較的良い成績が得られると考えられる。定位的血腫吸引除去術を被殻出血4例,視床出血2例,小脳出血1例の計7例に施行,血腫除去率は平均72%であり,予後良好例4例(57%)であった。高齢者等には有力な方法となり得ると考えられた。