著者
藤井 徹也
出版者
愛知県立看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

平成15年度は、14年度に引き続き、尿道留置カテーテル挿入時の在宅療養患者の陰部清潔ケア方法を明らかにするために、在宅で活用できる陰部の清潔方法の検討および在宅療養における陰部清潔保持についての実態調査に用いる質問紙内容を作成するために、陰部清潔保持について、援助を実施している医療職者から、現状についてインタビューを行った。セルフケアが行えない患者に対して、陰部に関する清潔保持の方法などの指導が行われていない状況があった。このことから、尿道留置カテーテル挿入患者に加え、陰部に関する清潔保持の援助を受けている患者についても実態調査が必要と考えられ、質問内容の検討を行い、今後調査実施の予定である。また、在宅において、陰部の清潔が必要とされる患者の多くは臥床状態にあることから、ベッドレスト実験の被験者(健康な青年期男子6名)の陰部清潔保持を目的として、殺菌効果のある酸性電解水(pH2.7,ORP1110mV,残留塩素30ppm)を用いて陰部洗浄を20日間実施した。洗浄前後の陰嚢部横の皮膚のpH,油分の測定および1日目、7日目、14日目、20日目の洗浄前後の尿道口および中間尿の細菌の同定を行った。分析方法は、pHおよび油分について対応のあるt検定を行った。その結果、酸性電解水での洗浄によりpHは6.0±0.5から4.9±0.5と有意に酸性(P<0.001)となり、また、物理的効果により油分についても103.8±31.8から74.3±30.5と有意に減少していた(P<0.001)。また尿道口および中間尿の細菌について、Satphylococcus spp.(コアクラーゼ陰性)、Corynebacterium spp.などが認められた。尿道口と中間尿の細菌は同種であった。20日間に皮膚の異常などの訴えはなく、発赤なども認めなかった。尚、研究参加の同意については、研究内容、プライバシーの保護及び研究協力を拒否できる権利とともに個別に説明を行い、同意を得た。
著者
保田 ひとみ 畑下 博世
出版者
愛知県立看護大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

昨年度は、妊娠初期から産後1ヶ月までの夫の役割変換における縦断研究のうち、2組の夫婦を対象にし、それぞれの夫について妊娠初期と中期における夫の役割変換の過程を明らかにすることに取り組んだ。その結果、妊娠初期では、「妊娠への関心」、「妻・胎児へ関心を向け始める」、「漠然とした家族像の描写」の3つのカテゴリーが抽出され、妊娠中期では、「妻の身体・心理・社会的変化への関心」、「妻・胎児へ関心の上昇」、「妻・胎児へ関心の低下」、「漠然とした家族像の描写」の4つのカテゴリーが抽出された。そして、これらのカテゴリーは、両時期ともにそれぞれが関連し合っていることが明らかになった。本年度は、昨年度の対象に2組を加えて引き続き、妊娠初期から産後1ヶ月までの夫の役割変換の過程について明らかにした。研究方法は、本年度加えた2組の対象のそれぞれの夫に対しては、1.妊娠確定後妻の状態が安定した時期(1回目)、2.胎動知覚の時期(2回目)、3.分娩前の時期(3回目)、4.産後早期の時期(4回目)、5.産後1ヶ月頃の時期(5回目)に5回の面接を行った。昨年度からの対象の2人の夫には、それぞれ3回目から5回目の面接を行った。4人の夫の面接内容は昨年と同様に質的に分析した。その結果、妊娠確定後妻の状態が安定した時期(1回目)、2.胎動知覚の時期(2回目)においては、新しいカテゴリーの抽出はなかったが、1回日の面接で抽出された、「妊娠への関心」のカテゴリー名を「子どもを持つことへの関心」に、「妻・胎児へ関心を向け始める」のカテゴリー名を「妻・胎児へ関心」に変更した。分娩前の時期(3回目)では、「妻の身体・心理・社会的変化への関心」、「妻・胎児への関心の上昇」、「人間としての成長発達」、「漠然とした家族像の描写」の4つのカテゴリーが、産後早期の時期(4回目)と産後1ヶ月頃の時期(5回目)では、「第1子を迎える」、「妻・第1子への関心の上昇」、「人間としての成長発達」、「漠然とした家族像の描写」の4つのカテゴリーが抽出され、1回目から3回目と同様にそれぞれが関連し合っていた。以上の結果より、妻と第1子に関心を持ち続けることが夫の人間としての成長発達を促していると考えられた。