- 著者
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小峯 敦
- 出版者
- 新潟産業大学
- 雑誌
- 新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, pp.105-128, 1999
本稿の目的は,「政策におけるケインズ革命の意義」に1つの解釈・解答を与えることにある。そのために,まずケインズの理論・政策・実際へのインパクトの三者の関係が整理される。考慮される期間は1910年代中盤から1932年頃である。結論として,政策におけるケインズ革命は確かに存在したと主張する。ただしここでの「革命」は,特に大蔵省などの政策担当者が,ケインズの理論と思考を意識(対抗)せざるを得なかった,という意味である。イギリスでは1920年代初頭から20年の年月を経て管理経済が徐々に浸透した。ケインズは管理経済の理論的基盤を整備し,しかも政策提言という形でその理論の説得を行い,政策の実現に腐心した。理論と実践の相乗効果で,経済の管理化は1920年代以降,無視し得なくなった。ケインズの影響力は(政策提言が実現しなかったとしても)極めて大きかった。この意味で,政策と思考におけるケインズ革命は20年余の歳月をかけて完成したと言うことができる。第1部は『インドの通貨と金融』から金本位制の復帰問題までを扱う。ケインズは危機意識(イギリスの衰退)と使命感(経済の制御で厚生増大)を終生持続した。第2部は失業対策からケインズ革命までを扱う。ケインズの管理経済という新しい学説に批判されて,大蔵省の「財政正統説」やイングランド銀行の「金融正統説」が妥当性を失っていった。