著者
片岡 直樹 Kataoka Naoki
出版者
新潟産業大学東アジア経済文化研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-17, 2012-07

長谷寺銅板法華説相図の銘文に関しては従来多くの研究がなされてきたが、いくつかの文字については論者によって解釈が異なるものがある。本小論では金石文の研究においては銘文の原字を忠実に読み解く作業がなにごとにも優先するという立場から、あらためて銅板銘中の文字の校訂をはかり、あわせて全文の通釈を施しておくことにしたい。また、近年では文字の彫刻技法の面でも先学によるすぐれた研究がなされており、その内容は本銅板の制作背景を考察する上で看過できない要素を含んでいる。先学の指摘を踏まえて若干の私見を述べてみたい。
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学東アジア経済文化研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.40, pp.79-98, 2012-07

日本列島の中では、文献史資料を駆使して確認を取ることが可能な古代以降の時期に限定してみても、幾多の自然災害―気象災害、地震災害や津波、火山噴火、そして伝染病の蔓延等―に見舞われ、その度に住民等はそれらへの対処を迫られた。北陸、新潟県域に於いても、当該地域特有の気象条件より齎されるものを始めとして、大風、大雨、雪害、洪水、旱魃、地震、津波、そして疫病の流行といった災害が発生当時の民衆に襲い懸かっていたのである。しかし、民衆はそれらの災害を乗り越えながら、現在へと続く地域社会を形成して来た。筆者は従前より、当時の人々がこうした自然災害を如何にして乗り越えて来たのかという、「災害対処の文化史」を構築するのに際し、近年、自然災害が頻発している北陸、新潟県域を具体的な研究対象地域として取り上げながら、その検証作業を行なっているところである。本稿では、室町時代の後半期、戦国期に於ける事例の検出と、人々に依る災害対処の手法とに就いて、更に検証作業を進めた内容をここに明らかにするものである。
著者
星野 三喜夫
出版者
新潟産業大学東アジア経済文化研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.40, pp.35-60, 2012-07

かつてアジア太平洋の経済協力フォーラムのAPECを立ち上げ、以降、アジア太平洋のリーダーを自負している日本が、この地域の経済秩序のルール作りに加わらないという選択肢はあり得ない。日本のTPP参加は、現在の日本の閉塞状況を打破し、経済再生を図る好機であり、できるだけ早く行うべきである。レベルが高く包括的な自由貿易協定のTPPへの参加は、投資分野における紛争解決手続きであるISDS条項や日本の農業問題もあり、確かにチャレンジであるが、日本は長期的な視点で将来を展望しTPPに参加して、そのメリットを享受すべきである。参加交渉やルール作りのプロセスでは他の参加国とのシビアな交渉が待ち受けているであろう。そのためには、TPPの正しい理解と正確な情報の下に、日本はその立ち位置を定め、TPP参加の意義やメリット・デメリット、守るべき点・譲っていい点、もたらされる影響等を整理し、それを国民に丁寧に説明した上で国内での意思を強固にして、確固不抜の戦略を立ててしっかりとした戦術で関係国との交渉に臨み、日本を有利に導くことが望まれる。