著者
青山 慶
出版者
日本生態心理学会
雑誌
生態心理学研究 (ISSN:13490443)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.29-32, 2015

<p><tt> 本稿は,本号にておそらく世界初公開となった</tt>J. J. Gibson <tt>による</tt> <tt>"エンカウンターに関する覚書"についての簡単な解説である.手稿では詳しく述べられていない部分や省略されている部分を補いながら,自発的行動,</tt><tt>接触を特定する情報,配置とイベント,移動と操作,そして予知の理論について論じた. </tt></p>
著者
廣瀬 直哉
出版者
日本生態心理学会
雑誌
生態心理学研究 (ISSN:13490443)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.49-61, 2015-04-01 (Released:2021-01-27)
参考文献数
64
被引用文献数
2

本稿は,マイクロスリップの研究の現状と今後の展望を述べたものである.マイクロスリップとは,日常的活動において観察される行為の淀み現象のことであり,日本を中心に研究が行われてきた.本稿では,まずマイクロスリップ研究が始まった経緯と,マイクロスリップに関連する研究について言及した.続いてマイクロスリップ研究で用いられる課題,研究対象者について整理した.次にマイクロスリップの生起要因についての研究を詳察し,さらにそれ以外の研究についても検討した.以上から,マイクロスリップは主として日常的系列動作課題を用いて検討されてきたこと,課題の種類・無関連な対象物・対象物の配置・課題の負荷・繰り返しがマイクロスリップの生起に影響を与えることなどが明らかにされた。最後に,マイクロスリップ研究の今後の課題について論及した.
著者
佐古 仁志
出版者
日本生態心理学会
雑誌
生態心理学研究 (ISSN:13490443)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.48-51, 2016-09-01 (Released:2021-01-27)
参考文献数
11

本発表の目的は,インゴルドの「徒歩旅行」と「輸送」という移動の区別を引き受けたうえで,諸々の移動研究を参照することで,それらの移動に伴う知,つまりは<移動知>がどのように身体化されるのかを考察することにある.まず「徒歩旅行」と「輸送」の区別を明確にし,それからそのような区別と接続可能な身体性認知科学についての検討を行なう.そのうえで,「モビリティ」に関する研究を参照することで,さまざまな移動に伴う実践および知識,すなわち<移動知>がどのように身体化されているのかについて考察する.また,このような<移動知>の身体化の考察からは,移動形式のもたらす「自己」への影響が明らかになると思われる.「徒歩旅行」という形式の移動研究は,地図に依存することなく,むしろ物語(境界・俯瞰的ではない地図)の創出を通じて影響を与える点で,そして「輸送」という形式の移動研究は,「モビリティ」研究を媒介にし,社会性をもたらす点で,「自己」の形成に重要な役目を果たすということが提示されることになるだろう.