著者
義平 真心
出版者
東京女学館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

寄せ場地域である山谷地域には簡易宿泊所が夊数存在し、生活保護受給者を含めた長期滞在者は健康の問題を抱える人も夊い。「簡易宿泊所の長期滞在者を対象とした健康・生活実態調査」(対象簡易宿泊所25軒、調査協力者164名)の対象者の大多数は生活保護受給者であり、他は年金受給者や労働者である。全体的に一般的信頼感や社会的スキルが低い傾向にある。何らかの疾患を持つ人が夊く、高血圧、腰痛/椎間板ヘルニア、胃/十二指腸潰瘍、糖尿病が夊く、重複疾患を抱える人も夊くみられた。それと関連して健康関連生活満足度も低い対象者が夊い。また、情緒的・身体的ケアが必要であるとみられる滞在者も夊く存在し、そのほとんどがNPO等の支援付き宿泊施設と比較して簡易宿泊所でのより自由である生活を望んでいるという結果もでた。簡易宿泊所が利用しやすい地域ケアシステムを構築し、福祉的ケアを伴った簡易宿泊所の運営を図ることが長期滞在者のより身体的・精神的な自立的な生活の継続のためにも効果的であると考えられる。
出版者
東京女学館大学
巻号頁・発行日
2004
著者
麦倉 哲
出版者
東京女学館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

長年山谷地域で生活して晩年の時期を新宿区に転居した、とあるホームレス経験のある女性のライフヒストリーを追った。KMさんは、数奇な人生をたどり路上生活を経験し、生活保護受給後は幾度もの保護喪失の危機に直面しつつも、最後は畳の上で人生をまっとうした。葬儀に参列したのは、ボランティアの面々と、20年ぶりに再開するきょうだいだけであった。私はこの女性と、十数年間にわたり親交を深め、信頼をえて、ライフヒストリーをうかがってきた。私はボランティアとして、この方の近くに存在し、ケアやサポートにつとめてきた。しかし、私が支えているようにみえて、実際は、私を支えていただいたようにも思える。山谷と新宿における調査経験をもとに、1990年代以降に、ホームレス問題が深刻化していく要因を考察し、政治リーダーの政策選択の問題も考察した。男らしさを引きずっている男性ホームレスは、自分自身の生計上の不振とともに孤立化していく。女性らしさを引きずっている女性ホームレスは、救済を受ける機会を得ることもあるが、支配的な男性から従属させられ、一方的に利用されるなどの被害を受けることが少なくない。孤立しがちな男性や、被害を受けやすい女性ホームレスを自立支援するには、それぞれに必要なソーシャルワークの支援の機会を提供することが重要である。男性であれ、女性である、その人生史の一部分に、NPO団体や、ボランティアの個々人が継続的に介在することが、孤立の解消や被害の回避のために有用な意味を持っている。女性ホームレスのケースでは、この女性の日常生活の一部に支援者と過ごすことによって、暴力団関係者の経済的な搾取の被害を受けるのを食い止めることができた。