著者
王 尚可 安本 雅典 許 経明
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.31-45, 2018-03-31

本研究では、後発企業が技術スピルオーバーによって、どのように知識を獲得し蓄積するのかを検討する。より具体的には、既存の有力な標準化の推進企業から後発企業への技術的リーダーシップの移転のプロセスを検討することによって、標準化にともなう技術のスピルオーバーにおいて、後発企業がいかに知識の獲得・強化できるのかを明らかにする。本研究では、技術仕様に関して宣言される必須特許(SEP:standard essential patent)と独自特許(Non-SEP)の分析を行った。その結果、補完的企業である、ある後発の半導体サプライヤーは、既存の有力な標準化の推進者からの必須特許の引用を通じて、システム知識を構築・強化し、それによって先発企業を圧倒してきたことが明らかとなった。この発見は、標準化の推進企業の知識マネジメントについての議論を拡張するとともに、実践的な示唆を提供すると期待される。
著者
高橋 知也
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.51-54, 2018-03-31

本研究では特に独居高齢者の持つ被援助志向性に焦点を当てた5 つの研究を実施し、主として以下の3 つの成果を得た。第1 に、高齢者における被援助志向性を測定する尺度の作成を行ったことである。先行研究からはこれに該当する尺度が確認できなかったため、研究Ⅰから研究Ⅲを通じて、高齢者用被援助志向性尺度を作成した。第2 に、独居高齢者における被援助志向性の関連要因の検討を行ったことである。研究Ⅲおよび研究Ⅳでは、高齢者用被援助志向性尺度の各下位尺度得点を従属変数とする重回帰分析を行った。その結果、「援助に対する欲求」と「援助に対する抵抗感」の両者に影響を与える要因として、研究Ⅲでは暮らし向き、研究Ⅳでは学歴が認められ、暮らし向きが良いほど、また学歴が高いほど援助に対する欲求と抵抗感の両者を低減させる結果となっていた。第3 に、独居高齢者へのインタビューを通じた高齢者用被援助志向性尺度の妥当性と関連要因の検討を行ったことである。独居高齢者6 名に対するインタビュー調査の内容分析を行った結果、全員の高齢者用被援助志向性尺度の下位尺度得点の高低と、実際の援助に対する考え方がほぼ一致していることが示唆された。以上の成果は、今後さらに増加することが見込まれる独居高齢者に対する身近な人物、あるいは公的機関などによる援助の在り方を検討する上で大きな意義を持つと考えられる。
著者
高橋 知也 小池 高史 安藤 孝敏
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.20-30, 2018-03-31

独居高齢者の「援助を受けること」に対する認知的枠組み(以下、被援助志向性)を質的に検討することにより、被援助志向性に影響を与えるライフイベントを明らかにすることを目的として、6 名を対象に半構造化インタビュー調査を実施した。インタビューデータからSteps for Coding and Theorization (SCAT) による理論記述を行った結果、現在における被援助志向性がそれまでに個々人が経験してきたライフイベントに影響されることが示唆された。具体的には、(1) 援助職や小売業といった職業経験が肯定的、あるいは否定的な被援助志向性を形成する要因となり得ることや、(2) 身近な人との互助性を伴うつながりが肯定的な被援助志向性を形成する要因となり得ること、(3)自身や家族の健康、あるいは経済上の変化に伴う公的サービス(介護サービスや生活保護、求職支援など)の利用経験が被援助志向性を形成する要因となり得ることなどが示された。
著者
長谷川 倫子
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
no.13, pp.57-60, 2014-03-31

第二次世界大戦後のベビーブーマーである団塊世代へのアンケートで、彼らは青年期に流行した音楽(フォークソング・グループサウンズ・ビートルズ)を自らの世代観として上位に挙げている。団塊世代と音楽の関わりを研究するため、彼らに音楽体験や世代観をインタビューし、その語りを分析ワークシートを用いて構造化した。そこから、「団塊世代における格差・階層意識は、音楽の受容とも関連があるのではないか。」という問題意識が生成された。次に、日本版 General Social Surveys(JGSS-2003&2008)やインターネット調査のデータを用いて、時系列で団塊世代の音楽受容の特徴や階層性との関連を統計的に分析した。その結果、団塊世代が子供の頃の生活レベルや音楽環境は父親の影響を受け、それが現在の音楽聴取や階層帰属意識にも繋がっていることが見出された。また、クラシック音楽は女性や教育年数が長い層に、演歌は男性や教育年数が短い層に好まれていた。団塊世代は多様な音楽ジャンルを好み、複数嗜好の場合、演歌の影響力は大きかった。さらに、親世代→団塊世代→子世代という世代間において、高学歴とクラシック音楽嗜好の継承がみられた。質的・量的研究により、「団塊世代は一括りにされるが、人数が多く競争が激しかった。そこには格差・階層意識が存在し、それは音楽の受容とも様々な関連をしていた。そして、その関連は他世代に比べより顕著であった。」という結果となった。In answer to questionnaires to the Dankai Generation (Post-World War II Baby-Boomers), they ranked high of such music(folk song, "group sounds" and the Beatles), which were popular in their youth, as images of their generation. In orderto study the relations between the Dankai Generation and their music, I interviewed them about their musical experiencesand generational images, and got their talk structured by using various analysis worksheets. Consequently, a hypothesiswas generated: "Disparities and hierarchy consciousness existing in the Dankai Generation might be related to their musicalacceptance." Next, by utilizing some data based on Japanese version of General Social Surveys (JGSS-2003&2008) andthe Internet investigation, I analyzed the relations statistically between characteristics of the Dankai Generation's musicalacceptance and hierarchy in chronological order. It turned out that their living level and musical environment in childhoodwere affected from their fathers, and that the fact has led to their current music appreciation and stratum identifications.In addition, it proved that classical music was favored among women or those with longer-term education, whileEnka ballads were favored among men or those with shorter-term education. The Dankai Generation, however, likes variousmusical genres, and in terms of plural tastes, Enka ballads had a strong influence. Furthermore, it showed that as generationschange from their parents to the Dankai Generation and to their children, higher educational background and apenchant for classical music has been succeeded. By my qualitative and quantitative studies, I have reached the followingconclusion: "Although the Dankai Generation has been lumped together, there were so huge numbers of people that competitionswere intense among them. There existed disparities and hierarchy consciousness, which were closely related withtheir musical acceptance. Above all, the relations were more remarkable than other generations. "