著者
島袋 宏俊 稲嶺 修 仲村 敏 宮城 正男 佐藤 正寛 石井 和雄
出版者
沖縄県畜産研究センター
雑誌
沖縄県畜産研究センター試験研究報告 (ISSN:18836496)
巻号頁・発行日
no.47, pp.29-36, 2009

琉球在来豚アグー(アグー)と他品種との識別(アグーの識別)の精度を向上させることを目的として、マイクロサテライトマーカー(MSマーカー)を用いて、沖縄県アグーブランド豚推進協議会(協議会)が登録認定したアグー171頭、また県内において飼養されている他品種35頭およびアグー交雑種60頭についてMSマーカーの遺伝的多型性を調査し、アグーの識別を行った結果、以下のとおりであった。1.現在、協議会がアグーの識別に利用している23個のMSマーカー(Aセット)を用いた結果、供試豚全体の対立遺伝子(アリル)数、ヘテロ接合度観察値(Ho)および多型情報含有値(PIC)の平均値はそれぞれは5.5、0.40、0.45で、遺伝的類似度0.26でアグーが識別可能である。2.新たに選抜した14MSマーカー(Bセット)を用いた結果、供試豚全体のアリル数、HoおよびPICの平均値はそれぞれは7.8、0.63、0.63で、遺伝的類似度0.13でアグーが識別可能である。3.アリルサイズが重ならないマーカー同士を混合(セット化)する場合としない場合との分析コストを比較すると、AセットおよびBセットはセット化した場合がセット化しない場合よりそれぞれ約50%および約40%低減できる。また、Aセット化とBセット化との分析コストを比較すると、Bセット化がAセット化に比べ約30%低減できる。以上のことから、アグーを識別する際、BセットはAセットより高精度に識別可能である。また、Bセット化はAセット化より効率的な分析が可能で、コストを低減できる。
著者
稲福 政史 幸喜 香織 蝦名 真澄 奥村 健治 与古田 稔
出版者
沖縄県畜産研究センター
巻号頁・発行日
no.45, pp.87-98, 2008 (Released:2012-12-06)

ギニアグラス新品種候補系統「琉球3号」の収量性および形態特性について「ナツユタカ」,「ガットン」および「パイカジ」と比較検討したところ,結果は以下のとおりであった。1. 「琉球3号」は他の品種に比べ利用1年目の初期生育性に劣るが,利用2年目以降は草勢に優れ,他品種に比べ旺盛な生育を示した。2. 「琉球3号」の利用1年目は2番草刈取り以降の再生性に優れ,また利用2年目および3年目の再生性は他品種と同等かやや優れた。3. 「琉球3号」の倒伏程度は極強で,試験期間中の台風襲来による倒伏はほとんどみられなかった。4.「琉球3号」は利用2年目以降の乾物収量が極多収で,沖縄県畜産研究センター(沖縄畜研)試験の利用2年目で551kg/a,3年目で464kg/aであり,また八重山家畜保健衛生所種苗圃(八重山家保)試験でそれぞれ325kg/aおよび245kg/aで,「ナツユタカ」比111~138%「ガットン」比139~161%であり,極多収で,永続性に優れる。5. 「琉球3号」の利用2年目以降の乾物消化率は「ナツユタカ」より優れ「ガットン」よりやや優れ,「パイカジ」よりやや劣る。また,出穂期における乾物消化率の減少が大きい。6. 「琉球3号」の出穂始日は10月17日で,「ナツユタカ」より32日,「ガットン」より47日および「パイカジ」より36日遅く,極晩生に属した。また,刈取り調査時の出穂期は11月上旬から12月下旬の年1回のみであった。7. 「琉球3号」は他品種に比べ穂長,稈長,葉身長,葉身幅および茎の太さが大型で,草型は直立である。以上の結果から「琉球3号」は大型で収量性に非常に優れ,また永続性および再生性にも優れるため,多回刈りによる収量増も可能であると考えられた。また,極晩生で,年1回の秋の出穂に伴う乾物消化率の減少が著しいが,出穂前から出穂始期に刈取りを行うことで,乾物消化率の減少を抑制し,年間を通して消化性に優れる高品質な飼料供給ができる可能性が示唆され,新品種候補系統として有望であると考えられた。
著者
島袋 宏俊 稲嶺 修 仲村 敏 宮城 正男 佐藤 正寛 石井 和雄
出版者
沖縄県畜産研究センター
雑誌
沖縄県畜産研究センター試験研究報告 (ISSN:18836496)
巻号頁・発行日
no.47, pp.29-36, 2009

琉球在来豚アグー(アグー)と他品種との識別(アグーの識別)の精度を向上させることを目的として、マイクロサテライトマーカー(MSマーカー)を用いて、沖縄県アグーブランド豚推進協議会(協議会)が登録認定したアグー171頭、また県内において飼養されている他品種35頭およびアグー交雑種60頭についてMSマーカーの遺伝的多型性を調査し、アグーの識別を行った結果、以下のとおりであった。1.現在、協議会がアグーの識別に利用している23個のMSマーカー(Aセット)を用いた結果、供試豚全体の対立遺伝子(アリル)数、ヘテロ接合度観察値(Ho)および多型情報含有値(PIC)の平均値はそれぞれは5.5、0.40、0.45で、遺伝的類似度0.26でアグーが識別可能である。2.新たに選抜した14MSマーカー(Bセット)を用いた結果、供試豚全体のアリル数、HoおよびPICの平均値はそれぞれは7.8、0.63、0.63で、遺伝的類似度0.13でアグーが識別可能である。3.アリルサイズが重ならないマーカー同士を混合(セット化)する場合としない場合との分析コストを比較すると、AセットおよびBセットはセット化した場合がセット化しない場合よりそれぞれ約50%および約40%低減できる。また、Aセット化とBセット化との分析コストを比較すると、Bセット化がAセット化に比べ約30%低減できる。以上のことから、アグーを識別する際、BセットはAセットより高精度に識別可能である。また、Bセット化はAセット化より効率的な分析が可能で、コストを低減できる。
著者
長利 真幸 守川 信夫 當眞 嗣平 望月 智代
出版者
沖縄県畜産研究センター
雑誌
沖縄県畜産研究センター試験研究報告 (ISSN:18836496)
巻号頁・発行日
no.44, pp.89-93, 2006

暖地型牧草の成分と栄養価を迅速に測定するために,沖縄県主要暖地型牧草であるギニアグラス,パンゴラグラス(品種:トランスバーラ),ジャイアントスターグラス,ローズグラス(品種:カタンボラ)の4草種試料400点を用い,近赤外分析法(NIRS)による統一検量線の作成および推定精度の検証を行った。分析項目は粗タンパク質(CP)含有率と乾物消化率,試料サイズは粉砕試料(1㎜)と細断試料(200~300㎜),検量線の作成方法については線形重回帰分析(MLR)と部分最小二乗法による回帰分析(PLS)を用いて比較検討した。1. CPについて,MLRを用いた検量線の推定精度は粉砕試料でr=0.979,SDP=0.80,EI=8.71%,細断試料でr=0.974,SDP=0.88,EI=9.58%となった。PLSを用いた検量線の推定精度は,粉砕試料でr=0.990,SDP=0.57,EI=6.20%,細断試料でr=0.979,SDP=0.78,EI=8.49%となり,PLSがMLRより高い推定精度を得た。2. 乾物消化率について,MLRを用いた検量線の推定精度は粉砕試料でr=0.950,SDP=2.56,EI=14.97%細断試料でr=0.944,SDP=2.71,EI=15.84%となった。PLSを用いた検量線の推定精度は,粉砕試料でr=0.964,SDP=2.18,EI=12.74%,細断試料でr=0.949,SDP=2.60,EI=15.20%となり,PLSがMLRより高い推定精度を得た。3. 試料サイズについては,CP,乾物消化率ともに粉砕試料を用いた検量線がより高い精度を示したが,細断試料においても十分な精度を得ることができた。4. 沖縄県主要暖地型牧草4草種を用いた統一検量線においても,単草種で作成した検量線と同等の推定精度を得た。
著者
千葉 好夫 野中 克治
出版者
沖縄県畜産研究センター
雑誌
沖縄県畜産研究センター試験研究報告 (ISSN:18836496)
巻号頁・発行日
no.52, pp.45-47, 2014

山羊の放牧は,傾斜地や遊休地などでおもに除草目的で利用され,牧草地での放牧が実施されていない。そこで放牧する際の目安となる基礎データを得るため,交雑山羊雌4頭による輪換放牧を273日間実施し,1頭あたりの採食量や増体量を調査した結果は次のとおりであった。1. 電牧線は3段で,電気牧柵の高さは下から順に16cm,25cm,60cmの高さに張ると輪換放牧が可能であった。2. 牧区あたりの放牧期間は平均19.8日で1日1頭あたりの生草摂取量は平均3.51kgであった。3. 放牧期間中の1日1頭あたりの増体量は,平均40.3gであった。
著者
藤井 章 知念 令 守川 信夫 宮城 正男
出版者
沖縄県畜産研究センター
雑誌
沖縄県畜産研究センター試験研究報告 (ISSN:18836496)
巻号頁・発行日
no.47, pp.37-44, 2009

山羊における産肉性の改善を図るため、肉用山羊種であるボアー種を50%以上交配した山羊(ボアー系)と、ザーネン種の特徴を持つ山羊(ザーネン系)を用いて粗飼料のみによる給与を行い、産肉性を検討したところ、その結果は次のとおりであった。1.雄、雌ともに1日あたり乾物摂取量、飼料要求率、試験終了時の体重、1日あたり増体量に有意差は認められなかったが、体重あたり乾物摂取量は雄においてボアー系が試験開始時、試験終了時ともにザーネン系より有意に少なく(開始時:P<0.05、終了時:P<0.01)、雌においてもボアー系が試験開始時、試験終了時ともにザーネン系より有意に少なかった(P<0.05)。2.枝肉歩留は、雄においてボアー系が43.8%でザーネン系の38.8%よりも有意に高く(P<0.05)、雌においてもボアー系が46.0%でザーネン系の38.0%よりも有意に高かった(P<0.01)。3.部分肉重量では、雄はボアー系がザーネン系よりもかた、ロース、ばらおよびヒレの部分肉において有意に重く(P<0.05)、雌もボアー系がザーネン系よりも全ての部分肉において有意に重かった(P<0.01)。以上のことから、ボアー系は粗飼料のみで肥育した場合、飼料効率および産肉性に優れており、県内産山羊の産肉性改善に活用できることが示唆された。