- 著者
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中澤 誠
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
- 雑誌
- 日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.3, pp.249-262, 2014-05-01 (Released:2014-06-03)
- 参考文献数
- 39
先天性心疾患(CHD)診療は死に直面する機会が多い分野である.死はかつては神仏の領域であったが,今や科学としての医学の領域に入っており,医療者は患者の死に際して最善の終末医療ないしケアを行うため,死生学修得の必要性が高じてきた.死のケアは死にゆく本人のみならず遺族の大きな精神心理的苦痛を理解することが前提である.本人にも遺族にも,死は,ショック,死の否認,怒りなどの「正常」の反応をもたらし,時間をかけて容認へと向かう.われわれにはそれぞれの心理状態に即して,患者の個々の「語り」に耳を傾けて,ヒトとして対応することが求められる.小児は小学生低学年ですでに死をかなり深く理解しているが,死に直面する時の苦痛の表現が大人とは異なる故に,大人がしっかりと見守って対応する必要がある.近年の成人CHD患者(ACHD)の増加は,死生学の面からも新たに深刻な問題が起りつつあり,今後はその対応にも腐心すべきである.