著者
中澤 誠
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.249-262, 2014-05-01 (Released:2014-06-03)
参考文献数
39

先天性心疾患(CHD)診療は死に直面する機会が多い分野である.死はかつては神仏の領域であったが,今や科学としての医学の領域に入っており,医療者は患者の死に際して最善の終末医療ないしケアを行うため,死生学修得の必要性が高じてきた.死のケアは死にゆく本人のみならず遺族の大きな精神心理的苦痛を理解することが前提である.本人にも遺族にも,死は,ショック,死の否認,怒りなどの「正常」の反応をもたらし,時間をかけて容認へと向かう.われわれにはそれぞれの心理状態に即して,患者の個々の「語り」に耳を傾けて,ヒトとして対応することが求められる.小児は小学生低学年ですでに死をかなり深く理解しているが,死に直面する時の苦痛の表現が大人とは異なる故に,大人がしっかりと見守って対応する必要がある.近年の成人CHD患者(ACHD)の増加は,死生学の面からも新たに深刻な問題が起りつつあり,今後はその対応にも腐心すべきである.
著者
小林 徹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2015-04-21

リサーチクエスチョンは自らが臨床現場で発見した「わからないこと、しりたいこと」、即ち臨床の疑問(クリニカルクエスチョン)を一定の形式に沿って定式化し、臨床研究として解明する形に整理したものである。NEJMやLANCETといった一流紙に掲載される大規模研究も、元をたどると小さなクリニカルクエスチョンから出発している。このクリニカルクエスチョンを実現可能なリサーチクエスチョンに翻訳する過程は臨床研究にとって最も重要な作業と言っても過言ではない。翻訳作業の第一歩として、クリニカルクエスチョンを、「どのような対象(Patents)に、どのような治療(暴露)を行ったら(Intervention or Exposure)、どのような治療(暴露)がなかった群と比較して(Comparison)、どのように結果(アウトカム)が違うか(Outcome)」のいわゆるPICO(PECO)形式に変換する。対象患者や介入(暴露)群の設定は、その定義をできる限り具体的かつ明確に表現する。比較対象群は介入(暴露)群とその介入(要員)以外は似通った集団かつその分け方が恣意的でない(医学的な根拠がある)ことが大切であり。介入型研究の場合は倫理的な麺に十分配慮する必要がある。知りたいアウトカムは原則1つのみに絞る。また、患者対象や介入(暴露)と同様に定義が明確かつ具体的であり、さらに定量的に測定可能であることが必須である。設定したアウトカムが社会にとって切実な問題であればその研究の価値は高い。良いリサーチクエスチョンにはFeasible(実現可能性がある)、Interesting(興味深い)、Novel(新規性がある)、Ethical(倫理的)、Relevant(切実な問題)、いわゆるFINERの5要素を満たす。リサーチクエスチョンへの翻訳作業中には常にFINERを念頭に置くことが肝心である。
著者
新村 一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.96-102, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

ホルター心電図の長所は, 通常心電図では検出され難い, 一過性変化を検出できる点であり, 特に不整脈の診断, 治療効果判定に有用である. 的確な判読にはノイズの少ない鮮明な心電波形の記録が必須である. 稀な頻度のイベント検出には, 長期間記録が可能なevent recorderが適応となる. Event recorderには, 症状発現時に被験者が胸部に接着して始動する非持続性と常時装着して起動前後の数秒~数分の情報を保存できるループメモリ付きと非ループ式がある. 非ループ式では急速な循環不全時には患者はrecorderをスタートできない欠点を有する. 今や, 豊富な解析ソフトによって, 心臓自律神経機能の評価, QT間隔測定やTWAによる再分極過程の不均一性の検討, 原因不明の失神などの診断, ペースメーカやICDの機能評価など多くの分野で活用されているが, 小児では未開拓の領域が多く, 今後の研究が待たれる.