著者
三上 翔 小林 國彦 柏﨑 晴彦 中澤 誠多朗 小田島 朝臣 大内 学 山崎 裕
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.150-156, 2016-03

今回,パラジウム(Pd)とニッケル(Ni)の金属アレルギーが疑われた45歳女性患者が,近医歯科にて口腔内の金属を除去された後,重篤なアレルギー症状の増悪(flare-up)とみられる倦怠感,発熱,顔面の浮腫,皮膚の剥離などを伴う全身症状を呈した症例の紹介を受けた.そこで膠原病内科との連携で,ステロイド投与下に残りの金属修復物の除去や感染根管治療を安全に行い,非金属に置換することで良好な結果を得た症例を経験したので報告する. 初診時,手掌および顔面皮膚に軽度の浮腫性の腫脹を認め,口腔内には6歯に金属修復物を認めた.口腔粘膜には発赤,腫脹等の異常所見は認めなかった.翌日,膠原病内科入院下にヒドロコルチゾン100mgとd−クロルフェニラミン6mgを予防投与された後に来院し,6歯の金属修復物の除去を行ったが,特に異常なく経過した.その後に施行した5歯の感染根管治療後にアレルギー症状が増悪するエピソードが度々あり,膠原病内科からの依頼で,処置前に金属除去時と同様の予防投与を行った.その後はアレルギー症状の増悪は認めなかった.メタルフ リー後半年経過してから,非金属修復物での修復を行った.現在,メタルフリー後約2年経過したが,皮膚症状の再燃なく経過良好である.
著者
近藤 美弥子 中澤 誠多朗 岡田 和隆 松下 貴惠 山崎 裕
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.17-21, 2018-09

近年高齢者の味覚障害患者は急増しているが,原因が特発性で亜鉛の補充療法で奏功しない場合は,対応に苦慮する症例を少なからず経験する.今回,種々の薬物療法では効果が得られなかった味覚障害に対し,患者自ら自発的に行動療法を実践した結果,味覚の改善が得られた症例を経験したのでその概要を報告する. 症例は 75 歳女性.当科受診4か月前に,突然味覚異常を自覚し,その後舌痛も感じるようになった.そのため耳鼻咽喉科に3か月間通院したが,改善なく当科紹介受診した.当初,カンジダ性の味覚障害が疑われ抗真菌薬が投与されたが,舌痛の軽快のみで味覚の改善は認めなかった.次に,ロフラゼプ酸エチル,亜鉛の補充療法,2種類の漢方薬が長期投与されたが味覚に変化は認めなかった.その頃,テレビで視覚障害患者のドキュメンタリー番組を見て大いに感動し,味覚異常に執着しないで前向きに生活していくことを患者自らが実践するようになった. この行動療法により初診から2年目頃には,食事が美味しいと思えるほどに味覚の回復が得られ,その状態を維持している.
著者
中澤 誠
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.249-262, 2014-05-01 (Released:2014-06-03)
参考文献数
39

先天性心疾患(CHD)診療は死に直面する機会が多い分野である.死はかつては神仏の領域であったが,今や科学としての医学の領域に入っており,医療者は患者の死に際して最善の終末医療ないしケアを行うため,死生学修得の必要性が高じてきた.死のケアは死にゆく本人のみならず遺族の大きな精神心理的苦痛を理解することが前提である.本人にも遺族にも,死は,ショック,死の否認,怒りなどの「正常」の反応をもたらし,時間をかけて容認へと向かう.われわれにはそれぞれの心理状態に即して,患者の個々の「語り」に耳を傾けて,ヒトとして対応することが求められる.小児は小学生低学年ですでに死をかなり深く理解しているが,死に直面する時の苦痛の表現が大人とは異なる故に,大人がしっかりと見守って対応する必要がある.近年の成人CHD患者(ACHD)の増加は,死生学の面からも新たに深刻な問題が起りつつあり,今後はその対応にも腐心すべきである.
著者
中澤 誠一郎
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.48, no.592, pp.1373-1441, 1934-12-05

本報告書は大阪府警察部建築課に於いて、災害直後より府下の一般被害状況の調査に着手し、11月3日迄に整理せられたものを取纏めたものであつて調査の一部報告に當る。第1編中には他の文献、報告、統計中より建築物並に風水災に關係あるものを採録する所があつた。第2編に於いて街路樹及窓の被害を第3編以下に於いて建築物の風害状況を敍述する。
著者
岡田 和隆 柏崎 晴彦 古名 丈人 松下 貴惠 山田 弘子 兼平 孝 更田 恵理子 中澤 誠多朗 村田 あゆみ 井上 農夫男
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.61-68, 2012-10-15 (Released:2012-10-19)
参考文献数
31
被引用文献数
2

サルコペニア(筋肉減少症)は 80 歳以上の高齢者の約半数にみられる加齢変化であり,顎口腔領域にも現れるといわれている。本研究ではサルコペニア予防プログラムに参加した自立高齢者を対象とし,介入前調査として栄養状態と口腔内状態および口腔機能との関連を明らかにすることを目的とした。自立高齢者 62 名(69〜92 歳,男性 27 名,女性 35 名)を対象者とした。口腔内状況と口腔機能に関する聞き取り調査は事前に質問票を配布して行い,口腔内診査と口腔機能評価は歯科医師が行った。聞き取り調査質問項目,口腔内診査項目,口腔機能評価項目と血清アルブミン値(Alb)との関連を検討した。Alb は 4.3±0.3 g/dl であり,対象者の栄養状態は良好であった。口腔機能に関する2つの質問項目,主観的口腔健康観,下顎義歯使用の有無において Alb に有意差が認められた。残根を除く現在歯数,現在歯による咬合支持数およびオーラルディアドコキネシス(ODK)の/ka/の音節交互反復運動において,Alb と有意な関連が認められたが弱い相関関係であった。義歯満足度,口腔清掃状態,上顎義歯使用の有無,口唇閉鎖力,RSST,ODK の/pa/および/ta/,口腔粘膜保湿度,唾液湿潤度では関連は認められなかった。自立高齢者では現在歯数,咬合支持,義歯の使用の有無,口腔の健康や機能に対する自己評価が良好な栄養状態と関連する可能性が示唆された。