著者
伊東 正博 小森 敦正
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

チェルノブイリ組織パンクにはこの2年間で約300症例が登録され、計3,000症例の症例集積が進んでいる。被曝甲状腺癌には一つの決まった特徴はなく、被曝形式により形態学的にも分子生物学的にも多様な形態を呈していた。チェルノブイリ地域から発生した小児甲状腺乳頭癌において、被曝の有無により、組織像に差はみられなかった。しかし、ヨード摂取の高い国の症例とは有意に差が存在し、低ヨード摂取は小児甲状腺疵の発生頻度の上昇、潜伏期の短縮、形態形成、浸潤性に影響を及ぼしていることが推察された。
著者
矢野 公士
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年,E型肝炎が先進国で土着していること,および人獣共通感染症であることが明らかとなり,その対策が社会問題となっている。本研究では主として野生イノシシを対象として,長崎地方におけるHEVの浸淫状況を明らかにすることを目標とした。平成16年度 24頭,17年度 43頭,18年度 53頭,19年度 68頭,合計188頭の野生イノシシの筋肉のサンプリングを行い,RT-PCR法でスクリーニングおよび遺伝子解析を行った。HEV RNA陽性は21頭(11.2%)であった。うち,7例において,HEV ORF-1領域281塩基の配列が決定できた。この配列を既報の株と比較,近隣結合法による系統樹解析を行ったところ,いずれもgenotype3型であった。系統樹上,長崎,佐賀地方で発生したE型急性肝炎から得られた株(E108-HSGO5,E110-NGSO5A,ETM-NGSO4,ENK-NGSO3等)と非常に近縁に位置し,この系統のE型肝炎株が長崎地方のヒトとイノシシの間で蔓延していることが示唆された。Genotype3型の中でも2系統が長崎地方特有の株として浮かび上がった。さらに興味深いことには,参考試料として得られた長崎地域のとある豚舎で得られたブタのサンプルから,付近のイノシシと非常に近縁な株(sw087-NGS07)が見出された。このことから,HEVがイノシシsブタのサイクルで伝播をきたしている可能性が示唆された。今回の研究結果は,感染対策上きわめて有用な情報となることが期待される。