著者
伊東 正博 小森 敦正
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

チェルノブイリ組織パンクにはこの2年間で約300症例が登録され、計3,000症例の症例集積が進んでいる。被曝甲状腺癌には一つの決まった特徴はなく、被曝形式により形態学的にも分子生物学的にも多様な形態を呈していた。チェルノブイリ地域から発生した小児甲状腺乳頭癌において、被曝の有無により、組織像に差はみられなかった。しかし、ヨード摂取の高い国の症例とは有意に差が存在し、低ヨード摂取は小児甲状腺疵の発生頻度の上昇、潜伏期の短縮、形態形成、浸潤性に影響を及ぼしていることが推察された。
著者
小森 敦正
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.466-475, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
42

原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis;PBC)は,慢性進行性自己免疫性肝疾患である.2000年代になりPBC診療の焦点は,ursodeoxycholic acid(UDCA)不応例に向かっている.Bezafibrateおよびobeticholic acidのadd-on投与が確立し,UDCA不応例の治療も進歩しているが,次世代add-on薬の開発,ならびにdual add-on療法の評価など,add-on不応例の一掃を目標とした試みが現在も展開されている.一方で,抗ミトコンドリア抗体陰性PBCおよびPBC-自己免疫性肝炎overlapの診断,治療反応と予後の予測,患者報告アウトカム(掻痒症)への対応と治療にも進歩がみられるが,課題も残っている.PBC診療の進歩とアンメットニーズ,次世代個別化医療への展望について概説する.
著者
樋口 理 向野 晃弘 中根 俊成 前田 泰宏 小森 敦正 右田 清志 八橋 弘 中村 英樹 川上 純 松尾 秀徳
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.334a-334a, 2014 (Released:2014-10-07)

【背景と目的】全身性および臓器特異的自己免疫疾患では,古くから自律神経障害を伴う症例が知られるが,その分子病態は未解明である.近年,急性あるいは慢性経過を示し,広汎な自律神経障害を呈す自己免疫性自律神経節障害(AAG)の主因が,自律神経節後シナプス領域に局在するganglionicアセチルコリン受容体(gAChR)に対する自己抗体であることが多角的実験手法により証明され,自律神経障害における自己抗体介在性の分子病態の存在が注目されている.本研究では,膠原病や自己免疫性慢性肝疾患における抗gAChR抗体の陽性率を解明する.【方法と結果】長崎大学病院と長崎医療センターにて集積された自己免疫疾患217症例(関節リウマチ,シェーグレン症候群,全身性エリテマトーデス,自己免疫性肝炎,原発性胆汁性肝硬変,その他関連症例を含む)を対象とした抗gAChR抗体探索を実施し,平均22.6%の抗体陽性率を確認した.一方,抗gAChR抗体検査目的で当院に送付された著明な自律神経障害を呈する自己免疫疾患合併12症例の血清検体では,50%(6/12)の抗体陽性率を確認した.【結論】膠原病や自己免疫性慢性肝疾患に抗gAChR抗体が潜在することが明らかとなった.特に,広汎かつ著明な自律神経障害を呈す症例はAAGに匹敵する抗体陽性率を示し,当該抗体と各種自律神経症状の因果関係が疑われた.
著者
中村 稔 小森 敦正 石橋 大海
出版者
独立行政法人国立病院機構長崎医療センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

原発性胆汁性肝硬変(PBC)の新しい病型分類と長期予後診断法の確立のために、全国のPBC症例を対象として、血清自己抗体の測定、HLA-DRB1 typing、免疫関連分子や胆汁酸代謝に関連した遺伝子多型の解析を行った。PBC発症の危険因子としてHLA-DRB1*0803、CTLA4 SNPs、門脈圧亢進症進行の危険因子として抗gp210抗体、抗セントロメア抗体、CTLA4 SNPs、HLA-DRB1*1502と*0901、 肝不全進行のバイオマーカーとして抗gp210抗体、MDR3やintegrin・VのSNPsなどが同定された。これらの中で特に抗gp210抗体の肝不全進行への相対危険度は30倍と高く、抗gp210抗体をバイオマーカーとして用いたPBCの治療が可能となった。また、遺伝子レベルからも、PBCを抗gp210抗体陽性型の進行と抗セントロメア抗体陽性型の進行に分類することの妥当性が示唆された。