著者
池田 孝博
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-12, 2014-09

近年、地域社会への貢献は、大学の大きな使命のひとつに位置づけられている。しかしながら、その活動について検証した文献は少ない。本研究の目的は、福岡県立大学の専門教育として行われている保育者養成教育と田川市立幼稚園における身体運動に関する指導・支援活動について検証することである。この連携活動に参加した学生と幼稚園の教員および園児の保護者を対象に調査を実施した。その結果、体力・運動能力測定、運動会の練習支援および本番のお手伝い、朝の運動遊びの連携活動は、学生の専門教育として十分な効果的をあげていることが確認された。また、幼稚園の教員による評価においても、学生の活動が子どもたちの保育活動に良い影響を与えていることが確認された。さらに、保護者の評価では、連携活動に対して高い認知度が認められ、その評価も高いことが確認された。よって、これらの活動は、大学から地域社会への貢献だけでなく、大学教育に地域が貢献している「双方向モデル」の事例になると考えられる。
著者
鷲野 彰子
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.55-71, 2015-09

近年、20世紀初期の録音が数多く販売されているが、その中には自動演奏ピアノを再生したものも含まれる。自動演奏ピアノを再生した録音は雑音を多く含むアナログ録音と異なり、録音技術の発達した現代に実際に楽器を鳴らして録音するため、その音質の良さが最大の魅力といえるかもしれない。だが演奏分析をする者にとっては、自動演奏ピアノとそこに遺された記録は、それにも増して、大きな魅力を備えた存在といえる。それは、自動演奏ピアノの記録媒体であるピアノロールに遺された記録が、目で情報を捉えることのできるものであり、しかもそこに記録を遺した数々の演奏には、多くの著名な演奏家や作曲家自身によるものが含まれているためである。つまり、彼らの演奏を私たちは耳だけでなく、目でも捉えることができる点において、他の資料と決定的に異った魅力を備えているといえる。 本論文は、ピアノロールから演奏を分析する試みの第一歩として行った、パデレフスキによるショパン《ワルツOp.34-1》の冒頭主題部分の演奏で、彼がどのようなリズムで「ワルツ」を演奏したのかを、ピアノロールから分析し、まとめたものである。そこからは、楽譜中には書かれていない/記載不可能なワルツのリズムの「演奏法」がおぼろげに見えてくる。