著者
春名 苗 寺本 珠眞美
出版者
花園大学社会福祉学部
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
no.24, pp.19-25, 2016-03

高齢者虐待のケースには、市区町村が責任を持ち、地域包括支援センターと連携して対応することになっている。だが、実際には、市区町村がイニシアティブをとって高齢者虐待対応を積極的に行うところと、対応を地域包括支援センターにほぼ任せているところに分かれている。各11 市区町村に1 カ所の地域包括支援センターに聞き取り調査を行い、実態を明らかにした。その結果、虐待の対応の会議の開催については、随時行うところと、定例で行うところに分かれた。また、見守り支援については、計画を立ててフォローアップするところと、地域包括支援センターに見守りを任せているところにわかれた。会議開催と見守り支援等の特徴で類型化し、高齢者虐待の会議開催を随時行い、見守り支援の計画を立てる「随時・戦略型」が進むべき方向であると明らかにした。
著者
福富 昌城 Masaki FUKUTOMI 花園大学社会福祉学部 THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY
出版者
花園大学社会福祉学部
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
no.17, pp.51-57, 2009-03

ケアは、ケアする人にさまざまな負担をもたらすが、その反面肯定的な側面をももたらす。このケアの肯定的側面は、ケアする人に癒しや人間的成長をもたらす。ケアにおける癒しは援助者や家族との関係性の中で得られるものと考えられる。ケアする専門職が利用者との関係の中から得ている癒しは「自己の承認」「専門性の承認」「人と関わる楽しさ」などである。また、ケアする専門職がケアの成果を得たとき、そこから満足感をえることができる。ケアする人は、ケアの肯定的側面を体験することで、より懸命に利用者に関わっていく。しかし、家族がケアする場合には、ケアの肯定的側面を得られるためには、負担を軽減し、先の通しがもてるように支援することが必要になる。
著者
三品 桂子 Keiko MISHINA 花園大学社会福祉学部 THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY
出版者
花園大学社会福祉学部
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
no.19, pp.15-36, 2011-03
被引用文献数
1

本稿の目的は、日本の包括型地域生活支援プログラム(Assertive Community Treatment: ACT)チームのスタッフが用いるスキルを明らかにすることである。調査対象機関はDACTSの値が比較的高い日本の3つのACTチームである。調査期間は2007年8月~2008年12月であり、記録、スタッフへの半構造化面接、フォーカスグループ、ミーティングや訪問場面の参与観察、出版物などをデータとした。分析協力者とともにこれらのデータをM-GTAで分析し、カテテゴリー6、サブカテゴリー16、概念45、具体的スキル 268を生成した。日本のACTチームにおいては、英国や米国と比較すると心理療法やリハビリテーションに関するスキルを用いることが少なく、チームリーダーのリーダーシップのスキルが見えにくいという特徴が認められた。また、未治療・治療中断者の割合が高いために、利用者との関係づくりのスキルや、家族が利用者の介護を担わされてきたという日本の状況から家族支援のスキルが多く認められた。さらに、環境を整え、薬物を可能な限り少なくして、人間のもつレジリアンスの増強に努めるスキルを駆使している点は、英国のスキルと似通っていることが明らかになった。
著者
丹治 光浩 橋本 和明 安藤 治 東 牧子 小川 恭子 Mitsuhiro TANJI HASHIMOTO Kazuaki ANDO Osamu AZUMA Makiko OGAWA Kyoko 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY
出版者
花園大学社会福祉学部
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.43-51,

心理療法における失敗を論じる意義は大きいが、それが正面から取り上げられることはそれほど多くない。そこで、本研究では心理療法における失敗要因とその防止策を探ることを目的に、臨床心理士485名を対象に失敗事例を収集し、その分析を行った。調査の回収率は、20.8%で、クライエントの平均年齢は、27.3歳±12.5歳であった。回答者の平均年齢は44.2歳±12.5歳で、臨床歴の平均は16.6年±11.2年であった。クライエントの主訴は、うつ病性障害が最も多く、続いて境界性人格障害、適応障害の順に多かった。失敗内容で最も多かったのは、セラピーの中断(ドロップアウト)で、全体の約6割を占めていた。失敗の要因は、「間違った介入」、「不適切なアセスメント」、「セラピー構造の崩れ」の順に多かった。中でも逆転移は重要な問題で、その多くはセラピストの未熟さに起因していると考えられる。失敗の防止策は、「適切な介入をする」、「関係部署との連携を図る」、「アセスメントをしっかりとする」の順に多く、いずれも基本的な事柄であった。セラピストは臨機応変に対応するために、常にスーパーヴィジョンやケースカンファレンスなどにより自らの臨床を振り返る必要があるだろう。So far, few studies have focused on the factors related to the failure of psychotherapy. We tried to collect case examples of therapeutic failures from 485 clinical psychologists to identify contributiong factors and to search for measures to prevent future failures. The collection rate was 20.8%, and the mean Ciage of clients was 27.3±12.5years. The mean age of the respondents was 44.2±12.5 years, and the mean years of professional experience of the clinical psychologiets who participated in the study was 16.6±11.2 years. The most common complaint of the clients was body symptom. Other complaints were, in order, interpersonal relationships, depressive state, and refusal to go to school. The most common diagnosis was depression, and others were, in order, borderline personality disorder and adjustment disorders. The most common therapeutic failure was dropping-out of therapy (about 60%), and the causes of the failures were, in order, "wrong intervention," "irrelevant assessment", and "unstable therapeutic structure." Counter transference is a particularly significant problem, which is thought to result from the immaturity of the therapist. The proposed measures for preventing future failures were, in order, "appropriate intervention," "cooperating with the related organization," and accurate assessment," all of which are basic principles in psychotherapy. It is recommended that a therapist should always reflect on his/her clinical style by means of supervision, case-conference and so on to take a flexible approach in each case.