著者
辻 裕之 遠藤 繁之 原 茂子 大本 由樹 天川 和久 謝 勲東 山本 敬 橋本 光代 小川 恭子 奥田 近夫 有元 佐多雄 加藤 久人 横尾 郁子 有賀 明子 神野 豊久 荒瀬 康司
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.563-569, 2015 (Released:2015-12-22)
参考文献数
11

目的:人間ドックにおける尿潜血の意義を検証する.方法:2011年2月からの1年間に虎の門病院付属健康管理センター(以下,当センター)人間ドックを受診した16,018例(男性10,841例,女性5,177例)について尿潜血の結果を集計し,推算糸球体濾過値(以下,eGFR)との関連を検討した.次に2008年から2011年の4年間に当センター人間ドックを受診したのべ58,337例(男性40,185例,女性18,152例)について,腹部超音波検査で腎・尿路結石,またその後の検索を含めて腎細胞がんおよび膀胱がんと診断された例について,受診時の尿潜血の結果を検討した.結果:年齢を含めた多変量解析を行うと,尿潜血とeGFR低値との間には有意な関係を認めなかった.また,超音波上腎結石を有する場合でも,尿潜血陽性を示すのはわずか18.5%に過ぎなかった.さらに,腎細胞がん例で8.3%,膀胱がんでも28.6%のみに尿潜血は陽性であった.結論:人間ドックにおいて尿潜血は従来考えられていたより陽性率が高いが,少なくとも単回の検尿における潜血陽性は,CKDや泌尿器科疾患を期待したほど有効には示唆していないと考えられた.今後,尿潜血陽性例の検索をどこまで行うのが妥当なのか,医療経済学的観点も加味した新たな指針が望まれる.
著者
田邉 真帆 荒瀬 康司 辻 裕之 謝 勲東 大本 由樹 天川 和久 加藤 久人 有元 佐多雄 奥田 近夫 小川 恭子 岩男 暁子 尾形 知英 橋本 光代 四倉 淑枝 山本 敬 宮川 めぐみ 原 茂子
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.603-610, 2012 (Released:2012-12-27)
参考文献数
26

目的:高尿酸血症はインスリン抵抗性を基盤とするメタボリック症候群(MS)の一症候である.今回尿酸と耐糖能異常の関係を検討するため,高尿酸血症と高インスリン血症の関連について検討した.対象と方法:75g経口糖負荷試験(OGTT)を施行した人間ドック受診者全1,175例とOGTT糖尿病型を除外した1,007例の尿酸(UA)とインスリン(IRI)動態を検討した.UA>7.0mg/dLとUA≦7.0mg/dLに区分し,UA>7.0mg/dLを高尿酸値例(高UA群),UA≦7.0 mg/dLを正常尿酸値例(正常UA群)とした.さらにUA値を四分位に区分し第1四分位-第4四分位とした(Q1-4).IRI分泌ピーク値が負荷後30分である場合をIRI分泌正常型,IRI分泌ピーク値が負荷後60分以降である場合をIRI分泌遅延型とした.結果:血清UA値を四分位により分けた4グループの血糖曲線,IRI反応を比較したところ,UAが高いほど,血中血糖(PG)は軽度の上昇を示し,血中IRIは有意に高反応を示した.脂肪肝合併は全1,175例でも高UA群が56.5%(157/278),正常UA群が44.1%(396/897),糖尿病型を除外した1,007例においても高UA群が55.3%(141/255),正常UA群が40.8%(307/752)であり,高UA群に多くみられた.IRI分泌ではIRI分泌遅延型の頻度は全1,175例でも,糖尿病型を除外した1,007例においても高UA群の方が高率であった.結語:高尿酸血症は高インスリン血症と関連を認めた.
著者
小川 恭子 竹内 和男 奥田 近夫 田村 哲男 小泉 優子 小山 里香子 今村 綱男 井上 淑子 桑山 美知子 荒瀬 康司
出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.749-756, 2014 (Released:2014-09-19)
参考文献数
17
被引用文献数
2

目的:肝血管腫は腹部超音波検査で発見される比較的頻度の高い病変である.大部分は無症状で大きさは変化しないと報告されているが,時として増大例や縮小例,巨大例,まれには破裂例を経験する.これまでの肝血管腫の腫瘍径の変化についての報告には,多数例での長期経過観察による検討は少ない.そこで,長期に経過観察されている肝血管腫について,その腫瘍径の変化を検討した.対象と方法:2011年に虎の門病院付属健康管理センターの人間ドックにおいて腹部超音波検査を行った16,244例のうち,肝血管腫またはその疑いと診断された1,600例(9.8%)を後ろ向きに調査し,10年以上の経過観察がある76例,80病変を対象とした.観察期間は120ヵ月から303ヵ月,平均197ヵ月であった.腫瘍径の変化率を(1)著明増大(変化率が≥+50%),(2)軽度増大(変化率が≥+25%より<+50%),(3)不変(変化率が<+25%より≥-25%),(4)縮小(変化率が<-25%),の4群に分類した.結果と考察:全経過での平均変化率は+39.8%(95%CI:+28.5%から+51.1%)で,著明増大は29病変(36.3%),軽度増大が16病変(20.0%),不変が32病変(40.0%),縮小が3病変(3.8%)であった.10年間の変化率に換算すると平均+24.9%(95%CI:+18.1%から+31.7%)で,著明増大は13病変(16.3%),軽度増大は22病変(27.5%),不変は45病変(56.3%),縮小例はなしであった.結論:肝血管腫の10年以上の経過観察で約半数に腫瘍径の増大を認めた.
著者
丹治 光浩 橋本 和明 安藤 治 東 牧子 小川 恭子 Mitsuhiro TANJI HASHIMOTO Kazuaki ANDO Osamu AZUMA Makiko OGAWA Kyoko 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY THE FACULTY OF SOCIAL WELFARE HANAZONO UNIVERSITY
出版者
花園大学社会福祉学部
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.43-51,

心理療法における失敗を論じる意義は大きいが、それが正面から取り上げられることはそれほど多くない。そこで、本研究では心理療法における失敗要因とその防止策を探ることを目的に、臨床心理士485名を対象に失敗事例を収集し、その分析を行った。調査の回収率は、20.8%で、クライエントの平均年齢は、27.3歳±12.5歳であった。回答者の平均年齢は44.2歳±12.5歳で、臨床歴の平均は16.6年±11.2年であった。クライエントの主訴は、うつ病性障害が最も多く、続いて境界性人格障害、適応障害の順に多かった。失敗内容で最も多かったのは、セラピーの中断(ドロップアウト)で、全体の約6割を占めていた。失敗の要因は、「間違った介入」、「不適切なアセスメント」、「セラピー構造の崩れ」の順に多かった。中でも逆転移は重要な問題で、その多くはセラピストの未熟さに起因していると考えられる。失敗の防止策は、「適切な介入をする」、「関係部署との連携を図る」、「アセスメントをしっかりとする」の順に多く、いずれも基本的な事柄であった。セラピストは臨機応変に対応するために、常にスーパーヴィジョンやケースカンファレンスなどにより自らの臨床を振り返る必要があるだろう。So far, few studies have focused on the factors related to the failure of psychotherapy. We tried to collect case examples of therapeutic failures from 485 clinical psychologists to identify contributiong factors and to search for measures to prevent future failures. The collection rate was 20.8%, and the mean Ciage of clients was 27.3±12.5years. The mean age of the respondents was 44.2±12.5 years, and the mean years of professional experience of the clinical psychologiets who participated in the study was 16.6±11.2 years. The most common complaint of the clients was body symptom. Other complaints were, in order, interpersonal relationships, depressive state, and refusal to go to school. The most common diagnosis was depression, and others were, in order, borderline personality disorder and adjustment disorders. The most common therapeutic failure was dropping-out of therapy (about 60%), and the causes of the failures were, in order, "wrong intervention," "irrelevant assessment", and "unstable therapeutic structure." Counter transference is a particularly significant problem, which is thought to result from the immaturity of the therapist. The proposed measures for preventing future failures were, in order, "appropriate intervention," "cooperating with the related organization," and accurate assessment," all of which are basic principles in psychotherapy. It is recommended that a therapist should always reflect on his/her clinical style by means of supervision, case-conference and so on to take a flexible approach in each case.