著者
水上 香苗 高橋 さおり 楠木 伊津美 高瀬 淳 Kanae MIZUKAMI TAKAHASHI Saori KUSUNOKI Itsumi TAKASE Atsushi 藤女子大学非常勤講師 北海道大学大学院文学研究科・大学院生 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科 岡山大学大学院教育学研究科 Part-time Lecturer Fuji Women's University Graduate Student Hokkaido University Fuji Women's University Okayama University
出版者
藤女子大学QOL研究所
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.35-42, 2010-03

2006年にマスコミ等で大きく取り上げられた学校給食費の未納問題は、従来から学校が潜在的に抱える問題であった。その対策として、学校給食の教育における意義、必要性等の配慮から、就学援助制度等の整備も行われてきている。しかし、その対応については、給食費の徴収・管理を始め実に様々であることがわかった。一方で、食育基本法の制定に伴い、法の制定以来改正されてこなかった学校給食法の改正が行われ、教育における学校給食の位置づけも変わることとなった。これらのことを踏まえ、今後給食費の未納問題を未然に防ぐためには、学校給食の事前説明と公会計による給食費の管理が必要といえる。
著者
藤井 義博 Yoshihiro FUJII 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科・藤女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻 Department f Food Science and Human Nutrition Faculty of Human Life Science and Division of Food Science and Human Nutrition Graduate School of Human Life Science Fuji Women's University
出版者
藤女子大学QOL研究所
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.11-24, 2008-03-01

本論文では、良寛禅師の戒語を分類するに先立って2つの仮説を立てた。一つは、戒語は人々を「調え御する」大乗仏教の托鉢僧の布施行の一環として行なわれたという仮説であった。もう一つは、戒語は道元禅師の愛語の思想に基づいているという仮説であった。これらの仮説に基づいて、良寛禅師の戒語は、道元禅師の愛語を実現するために必要な「慈愛の心」すなわち「もとの心」へ人々をして立ち返えらせるための戒めであると定義した。戒語の項目の分析を行った結果、良寛禅師の一般人に与えた戒語をまず次のように3大分類した。I. 縦社会における戒語、II. 傾聴のための戒語、III. 日常の生活場面における戒語。そしてそれぞれの大分類をさらに分類した。すなわちI. 縦社会における戒語は、1. 上位者、2. 下位者、3. 同類、および4. 子どもに小分類した。II. 傾聴のための戒語は、1. 自慢、2. 情動誘発、3. 無責任、4. まね、5. おだて・おどけ、6. 言い過ぎ、7. へだて、8. とがめ、に小分類した。III. 日常の生活場面における戒語は、1. 生活の仕方、2. 人々の状態、3. その他、に小分類した。小分類の中にはさらに細分類をしたものがある。このように戒語を分類することによって、戒語は現代人にとってよりわかりやすいものになったと思われる。In the present paper, two hypotheses were made to classify Ryokan's Warnings for People about Language; One is that they would have been a part of his giving as a Mahayana mendicant monk, who intended to train and lead people. Another is that they would have been based upon Dogen's idea of kind speech. They were intended to warn people to come to their senses, which, expressed as "the original mind" and "the mind of compassion" by Ryokan and Dogen respectively, were required to realize Dogen's kind speech. The Warnings for People about Language were classified into three main groups: I. Warnings in the hierarchical society; II. Warnings to realize attentive listening; III. Warnings in aspects of the daily life. The three main groups were further divided into subgroups. Group I was subdivided into four subgroups: 1. about people in higher position, 2. about people in lower position, 3. about people in similar position, and 4. about children; Group II into eight subgroups: 1. Pride, 2. Causing negative emotions, 3. Irresponsibility, 4. Mimicry, 5. Flattery & Clowning, 6. Speaking too much, 7. Separation, and 8. Blaming; and Group III into three subgroups: 1. Way of living, 2. Aspects of people, and 3. the others. The classification of the Warnings for People about Language is suggested to have made them more comprehensive for people of today.
著者
三田村 理恵子 三田村 保
出版者
藤女子大学QOL研究所
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.37-43, 2017-03

本研究は、保育園園児用のタブレット端末による食育アプリ教材の開発と実践を目的として行った。食育アプリは、小学校でも活用が促されている三色食品群をもとに開発を行った。このアプリは、アンケートのような文字を入力することなく、タッチ操作で解答ができ、保育園児の食品分類の知識を調査することができる。この食育アプリを、保育園での食育支援活動の中で使用した。対象者は⚕、⚖歳の保育園児(男児10 名、女児10 名)とし、2015 年⚗月から11 月に調査を実施した。⚗月、⚘月の調査結果より、食べ物の色で誤分類しているケースが多く、三色食品群の色についての説明が不十分であったと判断できたため、⚙月の食育では食材の色と分類で使用している色の違いについて説明を行った。その結果食育アプリの正答率が高値になり、特にロールパンやトマト、イチゴの正解率が上昇した。食育アプリを活用して食育内容の理解度を評価することは、食育内容の見直しや次回への課題発見につながり有用であると思われる。
著者
藤井 義博 Yoshihiro FUJII 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科・藤女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻 Department of Food Science and Human Nutrition Faculty of Human Life Science and Division of Food Science and Human Nutrition Graduate School of Human Life Science Fuji Women's University
出版者
藤女子大学QOL研究所
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.35-46, 2016-03-31

本研究は、西洋近代医学の草創期に活躍したドイツの医師クリストフ・ヴィルヘルム・フーフェラント(1762-1836)の長生法におけるcultureの特徴を明らかにする試みであった。人間中心の近代社会の発展過程においてフーフェラントは、古代ギリシアのヒポクラテス派の医師による生活法の原則であった母なる自然(Nature)を生命力(the vital power)と等価とみなし、近代的な人間中心の思念であるcultureすなわち人為的働きかけによって生命力を可能な限り完全な発展を獲得することを目指す長生法(Makrobiotik、マクロビオティク)を樹立した。生命力は、動物機械と結合することにより中庸状態が必須の有機生命体すなわち身体を構築するものであった。cultureの欠如と同様にその過剰は、身体に対して有害であるため、長生法は中庸のcultureによって生命体である人間の完成を目指すものであり、その実現には理性力、結婚および子どもと若者のモラル教育による支援を得るものであった。理性は、この世とは別の世界に由来する存在であり、人間の中枢神経系によって受容されて啓示ないしはインスピレーションとして働くことで中庸のcultureを指南するものであり、また中庸のcultureによりその働きが実現されるものであった。結婚は、人間の最も本質的な運命の部分をなすものであり、完成に向かう人間がその利己性を脱するように働くものであった。モラル教育は、成人では中庸のcultureの諸原則により獲得される向上精神がしなやかな子どもと若者においては信念として生得になることを目的とするものであった。最先端の生物医学をもってしても対処しきれない諸病が蔓延する現代のストレス社会は、18世紀末にフーフェラントが指摘した近代社会に特徴的な社会現象の延長線上にあることから、現代の健康長寿を目指す健康教育の課題は、中庸のcultureの集成よりなる長生法を適用することにある。なぜならヒポクラテスの生活法の意義を示すプルタルコスの言葉「健康であるならば、多くの人間愛的行為に身を捧げるのにまさることはない」に示されている人間の完成の理念は、現代においてもその意義を失っていないからである。自己の健康長寿の達成だけでなく、どのように健康長寿を通じて多くの人間愛的行為に身を捧げることができるかを真剣に問うならば、現代の生物医学や健康教育に欠如する部分を中庸のcultureの集成である長生法の諸原則によって補うことは子どもや若者による主体的な健康教育を実現するための喫緊の課題である。

1 0 0 0 IR あい風の正体

著者
前野 紀一 Norikazu MAENO 北海道大学名誉教授・藤女子大学非常勤講師 Professor Emeritus Hokkaido University and part-time lecturer Fuji Women's University
出版者
藤女子大学QOL研究所
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.5-16, 2011-03

あい風という風が、日本海沿岸の各地で知られている。あい風はそれぞれの地の地形や気象で決まる局地的な風であり、風向も同じではない。しかし、各地のあい風には、A)海から幸せを運ぶ好ましい風、および、B)北前船のノボリの順風、という二つの共通な特徴がある。あい風の風向が、北海道から、東北、北陸、山陰と南下するにつれて、北寄りから東寄りの風にかわる事実は、特徴AとBによって説明される。あい風の典型例として、石狩のあい風が調べられた。石狩のあい風は、江戸時代初期、おそらく300年以上前から始まった物資の輸送や人々の交流、移住の歴史の中で、特徴AとBに沿うように生まれ、育まれてきた。石狩のあい風は、春、夏、秋に吹くさわやかな北寄りの風であるが、気象学的には、典型的な海風であることが、気象データの解析とドップラーライダーの観測から明らかにされた。