著者
山本 宏義
出版者
関東学院大学文学部人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.128, pp.43-53, 2013

公の施設に対して指定管理者制度が創設されて10年になる。公立図書館においても約10%の図書館が導入している。この制度の功罪についてはいろいろ言われてきたが、それはほとんど制度設計に起因するものである。しかしそれ以外に運営上の課題があるかどうかを探るために、人権上問題があるとされた図書の扱いについてアンケート調査を行い、全国的な動向をつかむこととした。結論を端的に言えば、指定管理者が適切な運営ができるかどうかは、しかるべき経験と知識をもった図書館長を配置できるかどうかにかかっているといえよう。
著者
中村 克明
出版者
関東学院大学文学部人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.128, pp.73-86, 2013

平和的生存権(平和に生きる権利)は,1962(昭和37)年に星野安三郎によって提唱された"新しい人権"である.平和的生存権の法的性格・意味内容に確立した学説は存しないが,この権利の中核に徴兵制の否定があることは大方の承認するところである.国民を強制的に軍隊に徴収し,一定期間,軍事訓練させ,戦争に備えるための徴兵制が,人命・人権尊重の観点からはもとより,平和主義その他の諸点からみても,野蛮で非人道的な制度であることは明白である.今日,軍隊を有する国家において,徴兵制廃止の動きがみられるのも,当然のことといってよいのである.そもそも軍隊は,その目的が何であれ,"破壊と殺戮"を本務とする戦争のための暴力装置である.軍隊は平和を保障するものではなく,戦争を保障するものである.軍隊の保有と徴兵制の制定を望む勢力が現在,政財界において中枢を占めるに至っているが,この制度の復活は国際的潮流に逆行するだけでなく,我が国が戦後培ってきた民主主義体制を崩壊させる危険性が極めて大きい.平和的生存権論のより一層の進展が,強く望まれる所以である.
著者
多ヶ谷 有子
出版者
関東学院大学文学部人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.128, pp.21-41, 2013

中世後期のヨーロッパに見られる宗教抒情詩には、天国への希求とともに地獄への恐怖が鮮やかに描かれている。地獄の恐怖はまた、天国の対比として、絵画や造形美術に表された。これらの絵画や造形美術は、文字を理解しない多くの庶民に、死後の審判、そして天国と地獄を強烈に印象付けた。一方、日本では、仏教の普及とともに、地獄の思想が受け入れられていった。仏教の地獄は六道の一つであり、輪廻転生の世界である。仏教では元来、輪廻転生を断ち切ることを理想としている。平安時代以降、浄土思想とともに、地獄・極楽の思想が人々の間に広まった。化野、紫野、鳥辺野、蓮台野など風葬地は、現世無常を教えるとともに、極楽を望み、地獄の恐怖をかきたて、仏教布教に影響を与えた。キリスト教世界の地獄と日本における仏教の地獄を対照させると、興味深い相違が見えてくる。キリスト教の地獄は永遠の罰であるが、日本の地獄は六道の一つであり、気の遠くなるような長い時間を経るとしても、永遠ではない。日本の地獄絵には、地獄の中に仏がいる。こどもを救う地蔵、女性を救う観音。仏教の地獄は期限があり、かつ、地獄からも救われる。その意味で、日本の地獄にはキリスト教の煉獄に当たる要因がある。キリスト教の地獄と煉獄、日本の仏教の地獄を比較検討したときに、そこには救済を希求する普遍的な人間性の一側面を見ることができる。本稿では、文学、絵画などを通して、キリスト教と日本仏教の天国(極楽)の対比にある地獄(煉獄)観についての一考察を行いたい。