- 著者
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竹内 修
- 出版者
- (社)北里研究所
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2002
Yersinia enterocolitica(エルシニア)の感染成立と宿主免疫応答には、病原性プラスミドが深く関与する。さらには、プラスミドにコードされ分泌される種々のYersinia Outermembrane Protein(Yop)は、宿主側に病原性をおこす因子であると同時に、Interferon-γ(IFN-γ)等のサイトカインを産生し、I型helper T細胞(Th1細胞)への分化、誘導する因子も担っていることが予想される。本研究は、エルシニアに対する宿主免疫応答と病原性プラスミドの関係についてサイトカイン誘導能、感染抵抗性の観点から研究を行うことを目的とした。本研究によって得られた新たな知見をまとめると、1、病原性プラスミド保有株(P+株)をマウスに生菌免疫(10^3 cfu)を行うと強いTh1が誘導される(死菌免疫では誘導されない)。2、プラスミドを保有していない株(P-株)をP+株と同じ菌数で生菌免疫した場合は、Th1の誘導は弱い。3、P+株もしくはP-株で生菌免疫したマウス脾細胞をin vitroにおいて加熱死菌抗原を用いて刺激し、培養上清中に分泌されるIFN-γの産生量と産生細胞数を測定すると、P+株で免疫した場合に大量の産生量と産生細胞数が見られた。4、3においての主要な免疫担当細胞を検討するため、フローサイトメトリーによる細胞内サイトカインの検出を行ったところ、P+株において誘導されるTh1は抗原特異的なCD4^+T細胞とNKもしくはNKT細胞が産生していることが明らかとなった。しかし、その他にも多数のIFN-γ産生陽性細胞の集団が確認された。最近、樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞(APC)が大量のIFN-γを産生するとの知見が得られているため、この陽性細胞集団もAPCの可能性が考えられ、今後明らかにしていく必要があると思われた。