著者
富永 敬一郎
出版者
Japanese Society of Animal Reproduction
雑誌
The Journal of reproduction and development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.29-38, 2004-02-01
参考文献数
56
被引用文献数
3 20

胚に対するグリセリンの浸透圧ショックを緩和するために希釈時に用いられるスクロースの細胞毒性を緩和することを目的として、ストロー内でスクロースによるグリセリン希釈を行った後、さらに、胚に影響しない濃度まで培養液で希釈するストロー内2段階希釈直接移植法を開発した。野外での体内回収胚移植で、この方法はエチレングリコールを用いたダイレクト法と同等の受胎率であった。16細胞期胚の緩慢凍結法において、最適耐凍剤を選定するとともに、リノール酸アルブミンの培養液への添加や、遠心処理で細胞内脂肪を局在化させることによる胚細胞外への除去を試みた。その結果、エチレングリコール区がプロパンディオール区やDMSO区より胚盤胞への発生率が高く、LAA添加は無添加に比べて凍結融解後の胚盤胞への発生率を向上させた。また、2細胞期で遠心処理した16細胞期胚では脂肪大部分除去区の凍結融解後の胚盤胞への発生率は無遠心凍結区より高く、無遠心新鮮区の胚盤胞の細胞数と差はみられなかった。次に、体外受精後2細胞期から胚盤胞期までの胚について、ゲル・ローディング・チップ(GL-ip)を用いた超急速ガラス化法を検討した結果、すべての発育日齢で50%を越える高い胚盤胞への発生率が得られ、発生率及び胚盤胞の細胞数、細胞構成において、それぞれの日齢の新鮮胚対照区と差はみられなかった。また、体外受精7日目胚盤胞のGL-ipガラス化法は緩慢凍結法より生存率が高かった。体内回収胚の発生速度の速い胚盤胞や形態の良好な高品質胚に雄が多いが、この関係は交配種雄牛毎に異なることを明らかにした。また、個体毎に区別した体外受精由来胚では、胚の発生速度あるいは胚盤胞生産率と性別とに関係がみられないことや、切断2分離胚後、雄胚が高品質胚へ早く形態回復することを明らかにした。性判別した体内回収胚にGL‐ipガラス化法を応用した結果、対照の新鮮胚移植と変わらない受胎率が得られた。体外受精由来3、4日目胚から1-2割球をサンプリングし、サンプルをPEP‐PCR、DNA産物を精製し、性判別PCRに供した。同時に、サンプリング胚を7日目まで培養し、発生した胚盤胞をGL-ipガラス化した。その結果、性別が高率に判定でき、ガラス化した胚盤胞は新鮮胚と変わらない高い生存率が得られ、しかも、ガラス化胚が子牛への発生能を持つことを明らかにした。
著者
村上 周子 柴谷 雅美 竹内 宏佑 SKARZYNSKI Dariusz J. 奥田 潔
出版者
Japanese Society of Animal Reproduction
雑誌
The Journal of reproduction and development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.531-538, 2003-12-01
被引用文献数
5 24

ウシ子宮内膜を構成する上皮細胞および間質細胞のプロスタグランディンF2α(PGF)合成は、それぞれオキシトシン(O;上皮細胞)、および腫瘍壊死因子(NF;間質細胞)により促進される。本研究では、ウシ子宮内膜から単離し、継代培養および凍結保存した上皮ならびに間質細胞が子宮機能の解析に供することができるかを、OおよびNFに対するPGF合成の反応性から検討した。ウシ子宮(発情周期Days2-5)より単離した内膜上皮および間質細胞をPrimary細胞とし、約半量を培養、残りの半量を凍結後(-80C)、融解、培養した。また、Primary細胞を4回継代培養し、継代ごとに細胞の半量を次の継代に用い、残りの半量を凍結後、融解、培養した(Passage 1-4)。コンフルエントに達した後、NF(1ng/m1)またはO(100ng/m1)を添加し、4時間培養後、上清中のPGF濃度を測定した。継代および凍結融解した細胞に形態的な変化は認められなかった。間質細胞のPGF基底合成能に凍結および継代の影響は認められなかったが、凍結により上皮細胞の基底合成能は有意に低くなった。また、上皮細胞のみPassage2以降に基底合成量が有意に低くなったが、上皮はPassage2まで、間質はPassage4までそれぞれO、NFへの有意な反応性を示した。以上から、上皮細胞は1回まで、間質細胞は少なくとも4回まで継代および凍結保存しても子宮機能の解析に十分なPGF合成能を有することが明らかとなった。
著者
Brussow Klaus-Peter Torner Helmut Ratky Jozsef 眞鍋 昇 TUCHSCHERER Armin
出版者
Japanese Society of Animal Reproduction
雑誌
The Journal of reproduction and development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.249-257, 2006-04-01
被引用文献数
1

ブタにおいては卵管における貯留精子の放出と排卵の関連には不明な点が多い。あらかじめ子宮角頭部に少量の精子を注入した卵子除去法、メスブタの卵管内に卵子-卵丘細胞複合体を注入した後、卵管を摘出して膨大部、頭部と尾部の精子数、初期胚数と発生ステージなどを調べた。卵子-卵丘細胞複合体を注入しない場合と比較して膨大部と頭部の精子数が増加した。この効果はnon-sulfaed glycosaminoglycan hyaluronan(HA)とともに卵子-卵丘細胞複合体を注入した場合に顕著であり、受精して胚盤胞まで発生が進む初期胚の割合も高くなった。これらから、ブタでは卵管の精子貯留部からの精子放出に卵子-卵丘細胞複合体が影響し、HAがその効果を高めることがわかった。