著者
Crawford Susan
出版者
Japanese Society of Sport Education
雑誌
スポーツ教育学研究 (ISSN:09118845)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.139-143, 2000

オーストラリアの10,500校、320万人の生徒を対象にした「オリンピック2000全国教育プログラム」のマネージャーとして、3年間、その計画、展開、実施に努めた。同プログラムは、オーストラリアの全教育機関を対象とし、学校の教育課程に適応するように作成、一方、メディアを活用するなどして、オリンピック理念の理解と、国際理解を促進するよう計画した。<br>オリンピック新聞「O-News」を3歳から12歳までの全児童に配布し、オリンピックの理解をはかった。また全学校に、CD-ROMやビデオ教材「aspire」を配布する一方で、インターネットでも教材「Kids」を立ち上げ、オリンピックの理念、スポーツ、環境、異文化理解の教材が提供された。そのほか、生徒の描いた絵を選手村の部屋に貼り、選手が生徒に手紙を送るようにポストカードを準備し、実際に11,000人の生徒が、ポストカードを受け取った。これらのオリンピック教育の具体的な成果は調査中であるが、「オリンピック2000全国教育プログラム」は、個人やグループにおいても、オリンピックを教材にして、国際理解を促進できることを示したという意義を持ち、今後もシドニー・オリンピックの遺産として生き続けるものと確信する。
著者
秋吉 嘉範
出版者
Japanese Society of Sport Education
雑誌
スポーツ教育学研究 (ISSN:09118845)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.23-35, 1987

1) 授業としての陸上運動の教材による好き嫌い, 及び楽しさについて, 児童の認識を明らかにするとつぎのことがいえる。<br>(1) 陸上運動の教材による好き嫌いをみると, 教材別, 性別により, 好き嫌いに差異があるようである。すなわち, 男女とも走り幅とびが好き (男子64.5%, 女子52.2%) が最も多く, ついで, リレーが好きは男子53.4%, 女子46.7%, 短距離走が好きは男子40.2%, 女子32.2%と最も少ない。とくに, 短距離走が嫌いという女子は34.1%であり, 好きを上回っている。<br>(2) 陸上運動の好きな理由は, 短距離走では, 走るのが速いから, いつも勝っているからが多い。リレーは, みんなで協力し団結して走れるからが多い。走り幅とびは, 遠くへとべるから, 走ってとべるから, 記録がすぐわかるからなどが多い。<br>一方, 嫌いな理由は, 短距離走では走るのが遅いから, いつも負けているからが多い。リレーは, 走るのが遅いから, いつもみんなに迷惑をかけるからが多い。また, 走り幅とびは, 遠くへとべないから, とぶのが下手だからが多い。<br>3教材共通していえるのは, 好きな理由と嫌いな理由は表裏一体になっているようである。とくに, 個人の走る, とぶなどの運動能力の優劣がそのまま好き嫌いに直結していることが多い。リレーは, 個人的競技性だけでなく, 集団としての協力性, 競技性が好きな条件となっている。<br>(3) 陸上運動の楽しさを教材別にみると, 授業中に楽しさを感じたものは, 男子では走り幅とびが88.4%と最も多く, ついで, リレー82.5%, 短距離走77.7%である。女子は, リレーの83.0%が最も多く, ついで, 走り幅とび78.5%, 短距離走75.2%である。3教材のなかで, 走り幅とびに性差がみられるようである。<br>(4) 陸上運動の楽しい理由を教材別にみると, 短距離走では, 練習して記録がのびたから, 競走で相手に勝てたからなどが男女とも多い。すなわち, 児童は, 練習して記録を向上させたい, また, 競走 (争) で勝ちたいという認識のもとに運動し, それが達成されたときに楽しみを感じている。<br>リレーは, 自分のチームが勝ったから, チーム全員が協力できたからなどが男女とも多い。すなわち, チームで協力して練習し, 応援し, それが勝利に直結した場合に楽しいといっている。<br>走り幅とびは, よい記録をだすことができたから, 助走や踏み切りの練習をして記録がのびたからなどが男女とも多い。<br>3教材共通しているのは, 陸上運動の教材特性にふれることにより, 楽しさを感じている。しかし, 陸上運動の特性を引き出すのは, 児童をとりまくクラスの雰囲気や交友関係, 教師の助言, 指示, 受容, 賞賛, などが要因となっている。<br>一方, 楽しくない理由は, 短距離走では, 走るのが遅いから, いつも競走で負けてばかりいるからが男女とも多い。リレーでは, 走るのが遅いから, いつも負けてチームの責任を押しつけられるからが男女とも多い。走り幅とびでは, よい記録をだすことができないから, 助走や踏み切りが上手にできないからが男女とも多い。<br>3教材に共通する理由は, 先に述べた嫌いな理由と関連している。<br>(5) 陸上運動の好き嫌いと楽しさとの関係をみると, 3教材共通していることは, 男女とも好きと答えたもの及びどちらでもないと答えたもののほとんどが, 楽しさを感じている。<br>一方, 嫌いと答えたものでも, 男女の約半数が楽しさを感じている。すなわち, 好きだから楽しい場合が多い。しかし, 嫌いだから楽しくないとは必ずしもいえない。嫌いな児童のなかには, 楽しさを求めて学習に取り組んでいるものもけっこう多いのである。<br>2) 陸上運動の指導認識について, 教師の立場から明らかにするとつぎのようなことがいえる。<br>(1) 教師が陸上運動を指導する際に重視する項目は, i力いっぱい活動させる, ii体力をつけさせる, iii運動の楽しさを味わわせる, iv自己の記録を向上させる, vみんなで協力して練習させる, の順である。逆に評価点が低いのは, i競走 (争) に勝てるようにさせる, ii記録や計測のしかたを身につけさせる, iiiきれいなフォームを身につけさせる, などである。このことから, 教師は陸上運動の指導にあたり, 児童に, 力いっぱいに活動させて, 体力をつけさせる。また, 記録の向上をはかることを重点的に認識し, 指導し, 助言している。<br>(2) 教師は児童の陸上運動の授業における楽しさについて, 短距離走と走り幅とびでは, 自己の記録を向上する楽しさが最も多いと認識している。また, リレーでは, チームで協力して競走 (争) する楽しさをあげている。<br>3) 児童と教師の陸上運動に対する認識の分析と指導法について<br>(1) 陸上運動の授業中における楽しさを感じる内容を, 児童は, i練習して記録をのばす, ii競走で勝つ, iiiチームで協力する, を多くあげている。しかし, 教師の指導認識では, i力いっぱい活動させる, ii体力