著者
川添 永典 五藤 武志 佐野 忠男 吉田 正義
出版者
Japanese society of turfgrass science
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-20, 1987

芝草の侵入害虫チガヤシロオカイガラムシ (<I>Antonzna gyanais</I> Maske11) の経済的な合理的な防除法を確立するため, 四国地方のゴルフ場におけるこの虫の分布状態を調査するとともに, 接触殺虫剤・浸透殺虫剤を用いてその防除効果に影響する要因を分析して調査し, 検討した。<BR>(1) 高知県下の8つのゴルフ場でこの虫による被害を調査したところ, 1つのゴルフ場を除いて, 7つのゴルフ場でこの虫の被害がみられた。この虫の伝播は芝草の移動によって行われるので, 芝草の生産地ではこの虫の防除を励行するとともに, 芝草を入れる場合はそれに寄生する害虫を防除して定植することが望ましい。<BR>(2) 高知県の土佐カントリークラブにてこの虫の2化期の1令虫の発生する時期を中心にして, 1984年7月31日と8月11日個々に各種農薬を散布して防除効果を比較した。防除価の最も高いのはスプラサイド乳剤1000倍3l区で, 88.5% (7月31日) と79.9% (8月11日) の数値が得られた。しかし, この虫は単性生殖を営み, 産仔数は約200, 年2回の発生であるので, 高い防除効果でもすぐ元の密度にかえることが推察される。<BR>(3) ビニフェート乳剤1000倍3l区では66.2% (7月31日) と63.0% (8月11日) の数値が得られた。<BR>この両者の成分量を比較すると, スプラサイド乳剤は50%, ビニフェート乳剤は24%であるので, ビニフエート乳剤の場合はスプラサイド乳剤の約1/2の成分量しか散布していないことになる。もし, ビニフェート乳剤500倍3l/<I>m</I><SUP>2</SUP>で散布したならより高い防除価を得られたと考えられる。<BR>ダイアジノン乳剤は1000倍1l区では35.1% (8月11日) と低い防除価である。これはダイアジノン乳剤はガス化があるため残効性が短かいことによると考えられる。<BR>(4) 7月31日と8月11日における両散布区の防除効果の傾向はほぼ同様な傾向を示した。2化期は1化期に比較してこの虫の密度は高く, 虫の生育は不斉一でいつでも卵が存在することが推察される。<BR>(5) 1985年, 浸透殺虫剤の粒剤 (アルフェート粒剤SDI―83Y3%粒剤をコガネムシ類の幼虫に使用する薬量 (9<I>g</I>~10<I>g</I>/<I>m</I><SUP>2</SUP>) で防除試験を行ったが, 防除効果はあがらなかった。また, この虫の活動期にSDI―83Y粒剤1Og, /<I>m</I><SUP>2</SUP>回散布 (7月27日と8月19日) を行ったが, 防除効果はあがらなかった。<BR>(6) 浸透殺虫剤SDI―83Y3%粒剤を1<I>m</I><SUP>2</SUP>当り50gを散布して防除価を調べたところ, 86.2%という比較的高い数値が得られた。この虫に対して浸透殺虫剤を使用する場合は, 少なくともコガネムシ類の幼虫に対して使用する以上の薬量を施用する必要があろう。<BR>(7) 吸収口型のチガヤシロオカイガラムシに対して浸透殺虫剤を使用する場合は, 粒剤より乳剤の方が有利であろう。また, 急速に植物体内の濃度を高めるために芝刈りをして散布することも有効と思われる。<BR>(8) 芝焼きを1985年3月7日に, 不利な条件下で行ったが, 比較的防除効果があがった。芝草の根元が乾燥する12月~1月行えば, さらによい効果が得られるものと思われる。
著者
ハーレイ R.
出版者
Japanese society of turfgrass science
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.75-82, 1988

日本の気候帯を3つに区分し, それぞれの地帯に適する芝草の種類を挙げた。このうち「移行地帯」とは寒地と暖地に挾まれた地帯 (第2図) で, 暖地型の日本シバも寒地型芝草も, 両方栽培可能な地帯である。しかし日本シバは, ゴルフをはじめ各種スポーツの盛んな秋から晩春まで, 5~7ケ月間は休眠して葉が褐色に変るばかりでなく, ひどい傷害を受けて毎年補修しなければならない。<BR>スポーツ・フィールドに使われている寒地型芝草 (ペレニアルライグラス, トールフェスク, 細葉フェスク類, ラフストークメドウグラス, クリーピングベントグラス, ケンタッキーブルーグラス) の主な特性と適応地帯について述べた。<BR>また, 日本芝の上に寒地型芝草をオーバーシーディングして"常緑芝生"をつくる利点と播種方法を述べ日本で成功している12のゴルフ場を紹介した。
著者
C. Laosinwattana Y. Takeuchi K. Yoneyama M. Ogasawara M. Konnai
出版者
Japanese society of turfgrass science
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.25, no.supplement1, pp.108-109, 1996-05-21 (Released:2010-06-08)

Turfgrasses may inhibit germination and growth of weeds through competition for such as water, nutrients, light and space, and also through allelopathy. Manilagrass is an important warm-season turfgrass, but no information is available on the allelopathic effect of manilagrass on weeds. Since water is the solvent for extraction of allelochemicals in nature, in this study aqueous extracts of shoots and decomposing manilagrass were examine for allelopathic potential.
著者
ワイコ グレッグ
出版者
Japanese society of turfgrass science
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.1-2, 2004

シーショア・パスパラムは、現在世界中で重要視され、利用が増加している芝草であり、アジア、南アフリカ、南アメリカ、ハワイそしてアメリカの熱帯のゴルフコースにおいて育成されています。シーショア・パスパラムはすべての芝草の中においても高い耐塩性を示し、降水が十分で土壌の塩分の増加を防ぐことのできる場所であれば、海水での灌水が可能です。<BR>また、廃水や再利用水の継続的な使用にも耐えることができます。そして、これらの状況下においても高い地上被覆密度を維持し、雑草に対する競争力も持っています。感染する病気も極めて少なく、一般的には農薬も必要としません。加えて、シーショア・パスパラムは中程度の耐陰性、耐干性も持っており、土壌pHの適応範囲がほかの草よりも広く、また、水・窒素分も必要とする量が少なくてすみます。刈取り高さもバーミューダグラスと同じくらい低く、冬の間は寒地型芝草との共存もでき、冬季に追播されたこともありました。<BR>しかし、シーショア・パスパラムは活性のある種子をほとんどつけないため、ほふく茎、地下茎、苗を用いて生長・繁殖させないといけません。また残念なことに、一般に使用されている発芽後に処理する除草剤を利用すると、パスパラムは薬害を受けてしまいます。もう一つのマイナスの特徴としては、低い耐寒性があげられます。熱帯および亜熱帯地方では常緑ですが、気温が12-13℃を下回る日が2週間以上続くような場所では休眠状態に入ります。シーショア・パスパラムのターフをはがされることにも耐性がありません。誤ってはがされてしまった場合、通常回復するのに何.週間もかかってしまいます。<BR>シーショア・パスパラムの何品種かは市場に出ていますが、いくつかはセントオーガスチンのように葉幅が広いものであったり、他には普通のバーミューダグラスに似たようなものもあります。シーショア・パスパラムには多くの品種があり、ティーグリーン、フェアウェイ、ラフにおいてはすでにあるものの中から適した品種を選択することができますが、パッティンググリーン用のものはさらに開発する必要があります。
著者
森 日出丸
出版者
Japanese society of turfgrass science
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.117-121, 1982

ペンクロスベントグラスの乾燥種子に放射線を照射し, その中から栄養体選抜して得られた, スプリングスの地上部栄養形態の特徴を, ペンクロスと比較し調査した。<BR>その結果は, 以下のように要約される。<BR>(1) 茎葉の伸長生長は, 終始ペンクロスが少し大きかったが, いつの時期においても有意差は認められなかった。<BR>(2) 葉身長は, スプリングスが長い形態となる傾向はあるが, 必ずしも有意な差をもって長くなるとはいいがたい。葉巾はいつの時期の測定においても, スプリングスが狭くなる。<BR>その他の葉の形態形質には差は認められなかった。<BR>(3) 節間長はスプリングスが20%ほど短かく, 節間径は, 10%ほど細い形質となる。<BR>(4) スプリングスは, 葉巾が狭く, 稈茎が短少であるため, 密度の高い芝生を形成する。又やや葉長が長いことから, よく低刈りにも耐えるものと考えられ, 極く短かく, 頻繁に刈込んで利用するゴルフ場のパッテンググリーンにはもっとも適応する品種であると考えられる。