著者
野田 篤
出版者
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Geological Survey of Japan
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.131-140, 2017-06-05 (Released:2017-06-08)
参考文献数
22
被引用文献数
5 9

本稿は,U–Pb年代データの計算・可視化のために新しく開発したスクリプト(UPbplot.py)の使用方法と使用例及び数学的背景についての解説である.このスクリプトは,U–Pb年代値の1次元または2次元の加重平均,標準(Wetherill)及び Tera–Wasserburg コンコーディア図におけるコンコーディア年代・コンコーディア曲線とのインターセプト年代を求めるための関数を含んでおり,それらの計算結果やコンコーディア図・棒グラフ・ヒストグラムなどのグラフを出力することができる.
著者
柳沢 幸夫
出版者
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Geological Survey of Japan
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.105-123, 2010

2006年に実施された「しんかい6500」による潜航調査によって釧路海底谷から採取された12個の岩石試料の珪藻化石分析を行い,これらの試料の堆積年代を明らかにした.釧路海底谷の上流部の側壁から採取された試料の珪藻化石帯は,NPD8帯下部~NPD10下部であり,年代は後期鮮新世~前期更新世である.一方,海底谷の下流部では,斜面堆積物と推定される試料から前期更新世(NPD10帯上部)の珪藻が産出した.また,外縁隆起帯の変形した堆積物からは,中期中新世(NPD7Ba帯),前期中新世(NPD2B帯)及び後期漸新世(<i>Rocella gelida</i>帯)の珪藻が産出した.
著者
中島 善人 山口 哲
出版者
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Geological Survey of Japan
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.93-103, 2004
被引用文献数
14

等方的で不均一な多孔質媒体の空隙構造パラメータ(屈曲度と空隙率)を3次元マッピングする機能をもつ Mathematica プログラムを作成した.そのプログラム,DMAP.m は,パッケージタイプのプログラムで,Mathematica バージョン4あるいはそれ以降で動作する.DMAP.m は,X線CTや核磁気共鳴イメージングで取得した,多孔質堆積物や岩石等の3次元画像を読み込む.読み込んだ画像はサブシステムに細分化され,各サブシステムの空隙にランダムに散布された非吸着性のランダムウォーカーが酔歩(単純立方格子上の lattice walk)で系外に漏れ出ていくという,いわゆる out-diffusion シミュレーションを行う.系外に漏れたウォーカーの積算値の時間変動データをもちいて屈曲度を計算し,酔歩の出発点をランダムに選ぶ過程で空隙の画素にヒットした確率として空隙率を計算した(モンテカルロ積分).このプログラムのデモンストレーションとして,ランダムパッキングした砂質堆積物のCT画像を用いて,屈曲度と空隙率のサブシステムサイズ依存性を計算した.なお,このプログラムは,http://staff.aist.go.jp/nakashima.yoshito/progeng.htmで無料ダウンロードできる.
著者
星 博幸
出版者
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Geological Survey of Japan
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.43-50, 2002
被引用文献数
6 24

中新統熊野酸性火成岩類(約14.3Ma)の試料を8地点、から採取し,残留磁化を測定した.段階交流および熱消磁により,多くの試片から2つの残留磁化成分(高温または高保磁力成分と低温または低保磁力成分)が分離された.高温または高保磁力成分の試片特徴磁化方位から4つの地点、平均特徴磁化方位が決定された.神ノ木流紋岩(本火成岩類下部の流紋岩溶岩流)は正帯磁の東偏磁化を持ち,本火成岩類中部および下部の溶結凝灰岩および花崗斑岩はSW向きで伏角が深い逆帯磁磁化を持つ.これらの方位特徴は基本的に過去の研究(田上,1982) で報告された特徴と同じである.この時計まわり方向に偏向した方位は,これまで西南日本の時計まわり回転運動を表すものと考えられてきた.しかし,15Maには西南日本の回転は終了していたとする古地磁気学的な証拠が多くあるため,本研究はこの偏向を非テクトニックな原因,すなわち磁場逆転またはエクスカーションの間の普段とは異なる磁場状態の中で獲得された磁化と解釈する.また,溶結凝灰岩と花崗斑岩の古地磁気方位と室生火砕流堆積物(約14.3Ma)の方位にみられる類似は, これらのユニットが成図的に関連していることを示唆する.
著者
岩男 弘毅 吉川 敏之
出版者
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, Geological Survey of Japan
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.57-65, 2014

オープンデータ政策に対するフランス地質・鉱山研究所(BRGM)の取り組みと,産業技術総合研究所地質調査総合センター(GSJ)の取り組みを比較検討することで,今後GSJが社会に対して地質データを提供していくうえで取り組むべき技術的課題,整備すべき制度を考察することが本報告の目的である.今回着目したBRGMは縮尺100万分の1の世界地質図をインターネットで配信する国際プロジェクトOneGeologyの運用を技術支援しており,地質図のデジタル配信分野で先進的な機関の一つである. フランス政府が進めるオープンデータ,あるいは欧州議会が定めた欧州域内の地図・空間情報の統合・共有政策の潮流の中で,BRGMが進めている地質データ管理・提供の動向を検証し,今後GSJがデータ配信に関して取り組むべき技術的な課題について明らかにした.一方で,BRGMは組織設立の経緯から,官と民の両方の立場をとっており,配信ルール,あるいは著作権運用ルール等を含む制度の整備の面ではBRGMよりもGSJのほうが容易であることが分かった.