著者
西 真如
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.63, pp.1-15, 2003-12-20 (Released:2010-04-30)
参考文献数
51

国民国家の枠組みが揺らぐ世界的な傾向のなかで, エチオピアは民族自治にもとづく連邦制へと移行した。諸民族の連邦国家に期待されるのは, 人びとの幅広い参加による民主主義の実現である。ところがエチオピアの新しい国家秩序は, エスニシティの政治化という問題を提起した。人びとの自律的な規範と文化によって形成されるのが「ほんらいの」エスニック集団であるとすれば, 連邦制のもとで定義される「民族」は, 国家エリートによって操作される政治的な運動として, 人びとのまえに現れる。本稿では, 国家とエスニシティとの関係を, 強制的な支配と自律的な文化との対立関係として捉えず, その代わりに人びとの自発的な活動と, 国家のヘゲモニーとの相互作用のなかで形成されるエスニシティに注目する。そしてエチオピアでスルテ (あるいはグラゲ) と呼ばれる人びとのエスニシティ形成の考察をとおして, 人びとの自発的な活動に, 国家のイデオロギーが作用してきた過程を描こうとする。

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