著者
池田 千恵子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2019年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.265, 2019 (Released:2019-03-30)

本研究では,京都市におけるゲストハウスなどの簡易宿所の急激な増加に伴う影響について,ツーリズムジェントリフィケーションの観点で検証を行う.ツーリズムジェントリフィケーションは,地域住民が利用していた日常的な店舗が減少する一方で,娯楽や観光に関わる施設や高級店が増加し,富裕層の来住が増えることにより賃料が上昇し,低所得者層の立ち退きを生じさせる現象である(Gotham 2005).簡易宿所が急増した背景や簡易宿所の増加が地域に及ぼした影響について示す. 京都市内の簡易宿所の数は,2011年の249軒から2018年9月末時点では2,711軒と7年間で約11倍(988.8%増)になった.東山区でもっとも簡易宿所が多い六原は91軒で,2018年9月30日時点において京都市内で一番簡易宿所が多い地区でもある.下京区で簡易宿所が一番多い菊浜は,2016年の14軒から2018年の47軒(図1)と1年10ヶ月で33軒増加した.南区では山王が44軒である. 簡易宿泊が増加している地区には特徴がある.一つめは,交通の利便性である.六原と菊浜は清水五条駅,山王は京都駅の南側と主要な駅に隣接している.二つめは,既存産業の衰退である.六原は京焼・清水焼などの窯業の衰退とともに人口流出や高齢化が進み,空き家が増加した.大正から昭和中期頃まで京都市内最大の娼妓がいた菊浜は,2010年に全ての貸座敷が廃業になった(井上 2014).三つめは地域の負のイメージによる.菊浜は性風俗などのイメージがあり(内貴ほか2015),山王は京都市内最大の在日朝鮮人が集住し,貧困化・不良住宅化が進んだ地域(山本 2012)が含まれている.このように,地域の負のイメージにより地価も低く,空き家などが活用されていなかった地域で,簡易宿所の開業が進行したと想定される.簡易宿所の急激な増加による不動産価格の高騰や住民の立ち退きなどについて報告を行う.

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池田 千恵子「観光産業の拡大にともなう都市の変容」2019年度日本地理学会春季学術大会発表要旨 https://t.co/rHMoXhm009 簡易宿所が増加している地区の特徴(東山区・下京区の場合) ・交通の利便性 ・既存産業の衰退(京焼・清水焼) ・地域の負のイメージ(五条楽園)

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