- 著者
-
池田 千恵子
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2020, 2020
<p>本研究では,新型コロナウイルスの感染拡大による観光需要の大幅な減少とそれに伴う宿泊施設への影響について報告を行う.金沢市は2015年3月の北陸新幹線開通後の2016年には,宿泊客数が308万4854人と300万人を突破した.その後も,2019年には宿泊客数が343万1493人と大幅に伸びていた.宿泊客数の増加に伴い,宿泊施設も2015年の119施設8,838室から2019年には345施設11,834室と急激に増加した.金沢市内中心部における宿泊施設の分布の特徴として,ホテルは金沢駅周辺と百万石通りに集積し、簡易宿所は兼六園、東山ひがし茶屋街、西茶屋街などの観光地の近接地や観光地を周遊しているバスルートに沿って集積していた.このように観光需要の拡大に伴い、金沢市では宿泊施設が急激に増加していたが,2019年時点で供給過剰の状態であった.2019年の宿泊施設の年間の稼働率は,ビジネスホテルで51.9%,簡易宿所は11.6%で全体の稼働率は45.2%と2018よりも6.6%減少した.これは宿泊客の増加よりも宿泊施設の供給が上回ったことに起因している.2020年に入り,新型コロナウイルスの感染拡大により,1月25日〜5月6日の宿泊のキャンセルは,金沢市内の7ホテルで6万7131人に及び(4月20日時点), 21施設(計約3,400室)のアンケート結果によると,2〜8月の予約取り消しによる損害額は約13億1000万円,同時期の自粛による損害見込みは約12億4000万円で合計25億5000万円に及ぶと試算された(4月15日時点).4月16日に全都道府県に緊急事態宣言が発令された後,宿泊施設の新規開業の延期や営業休止を余儀なくされた.また,宿泊施設の建設中止や倒産なども生じている.このような状況において,宿泊施設はテレワークへの転用や帰国出来なくなった外国人への宿泊場所の提供など,従来とは異なる目的で利用されている.新型コロナ禍における宿泊施設の現状と今後の展開について報告を行う.</p>