著者
知念 渉
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.73-94, 2012-11-30 (Released:2014-02-11)
参考文献数
16
被引用文献数
6

本稿では,貧困・生活不安定層出身である〈ヤンチャな子ら〉の学校経験を描くことによって,①生徒のストラテジーの実証研究がない,②教師のストラテジーが生徒の学校生活に与える影響が明らかにされていない,というストラテジー研究の課題について検討した。 分析結果は次の三点である。第一に,〈ヤンチャな子ら〉は,家庭の文化に依拠して学校文化を異化しつつも,親たちの人生に自らの人生を重ね合わせず,高卒資格の意義を認めていた。学校文化への異化と同化の間で構造的ジレンマを抱えていたのである。第二に,そのジレンマに対処するため,彼らは「時間と空間のコントロール」,「非対称な関係性の組み替え」,「学校の意味世界の変換」というコーピング・ストラテジーを編み出していた。それに対して,教師たちは「時間と空間の再コントロール」,「組み替えられた関係性の資源化」,「生徒の意味世界の取り込み」というペタゴジカル・ストラテジーによって,彼らを教育活動に巻き込んでいた。第三に,教師たちのストラテジーにより,〈ヤンチャな子ら〉は教師を肯定的に評価しており,その評価は登校継続に積極的な影響を与えていた。だが,学校から一度離れたケースでは,教師への肯定的評価が登校継続に逆効果をもっていた。 以上より,生徒が構造的ジレンマのなかで様々なストラテジーを用いて学校生活を過ごしていること,教師のストラテジーの効果は生徒の解釈や状況に依存することが明らかとなった。

言及状況

外部データベース (DOI)

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3. 知念渉「〈ヤンチャな子ら〉の学校経験」第91集、2012年 https://t.co/l6TU2aEplV 4. 秋葉昌樹「保健室における「相談」のエスノメソドロジー的研究」第57集、1995年 https://t.co/L9Q1pzLWK4
暴力性とモテというのが本日の主題だったようですね。 暴力性……とりわけヤンチャな子といったところでしょうか。 https://t.co/UVsOA92WBA まあでも、ヤンチャな子も大変なんですけどもね。だから、ヤンチャな子に憧れる。これはある意味でヤンチャな子に対して失礼でもある。
本の中で一番興味があった項目が閲覧可能な論文で拝読できたのは良かった。 〈ヤンチャな子ら〉の学校経験 ──学校文化への異化と同化のジレンマのなかで── 著者:知念 渉 https://t.co/9E1cCKoaZc
found a citation about Nicola @ingram_nicola in the Japanese paper of sociology of education. http://t.co/GAwiDi1ZsT https://t.co/BcwnJ1vCVB

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