著者
荒川 慎太郎
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.39-66, 2023 (Released:2023-08-19)
参考文献数
26

本稿では,西夏文字の「点」はどの位置に,何のために付加されるのかを考察した。本稿の議論に関係する,西夏文字の構造,筆画について術語とともに述べたのち,考察対象となる筆画「点」を定義づけた。筆者は,西夏文字全字形を網羅的に掲載する発音字典『同音』により,点を持つ西夏文字の原文を調査した。結果,西夏文字の「点」について,字形全体ではなく,要素部品の右に付され,文字要素を構成するものと分かった。また点の出現環境を精査すると,点が付される要素部品は,「A類:くノ型を持つ」と「B類:匕型を持つ」に二分されることが分かった。A, B類ともに類似する要素部品(ノメ,ヒ)がある。点の機能は,西夏文字創製時には,類似する部分(ノメとくノ,ヒと匕)の差異を際立たせる「強調符号」だったが,後に点の有無のみが弁別要素と誤認されることになったと筆者は推測する。

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PDFあり。 ⇒荒川 慎太郎 「西夏文字における「点」の出現環境と機能」 『言語研究』164 (2023) https://t.co/HIPpWeI4SG

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