- 著者
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鈴木 美佳
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
- 巻号頁・発行日
- vol.94, no.3, pp.152-169, 2021-05-01 (Released:2023-02-19)
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
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3
本稿では自転車の共同利用システムであるシェアサイクルについて,利用目的ごとの傾向と,現状における運営上の課題を明らかにすることを目的とする.三つの都市での事例から得た利用データの分析により,通勤・通学目的での利用が多い場合は駅を発着地とする移動が多く,観光目的での利用が多い場合は地域の観光拠点を結ぶ移動が多いことが判明した.一方,主な利用目的にかかわらず,駅周辺ポートの利用数が全体に占める割合は高くなっていた.各事例の運営主体への聞取り調査からは,先行研究で指摘されている通り自転車数やポート配置の調整によって利用率は高まるものの,利用料金が廉価なためシェアサイクル事業独立で採算をとることは難しいという現状が明らかになった.持続可能性を高めるためには,既存交通を結びつける移動手段として位置づけ,行政からの支援制度を整えること,自転車専用道の整備など他の交通施策も同時に行うことがのぞまれる.