- 著者
-
盛山 和夫
- 出版者
- 北海道社会学会
- 雑誌
- 現代社会学研究 (ISSN:09151214)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, pp.1-37, 1992-04-15 (Released:2009-11-16)
- 参考文献数
- 30
- 被引用文献数
-
4
階級理論は、マルクス主義的であるかそうでないかを問わず、階層理論とともに、危機を迎えているが、この危機を何とか打開しようとする試みも少なくない。そうした中で、その基本的着想がライトによって踏襲されているレーマーの『搾取と階級の一般理論』は、搾取概念の再検討にまでさかのぼって階級理論の再定式化をめざしたという点で、注目すべきものである。本稿は階級理論において搾取概念が占める位置を考察して明確にしたのち、レーマーとライトの新しい搾取概念を検討している。古典的な搾取理論は、「本来帰属すべき価値の不当な奪取」という観念に基礎をおいているのに対して、レーマーらのそれは「仮想的状態と比べた場合の格差」に基礎をおいてをり、限りなくネオ・ウェーバリアンの搾取概念に近くなっている。このため、具体的にいかなる社会集団が搾取―被搾取の関係にあるかを同定する能力に欠ける。それ以外の点も含めて、新しい搾取理論は今日の階級理論の危機を救うものとはいい難い。