著者
石原 美里
出版者
Japanese Association of Indian and Buddhist Studies
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.1138-1142, 2012-03-25 (Released:2017-09-01)

「スータ」という語はこれまで「御者」,「吟誦詩人」と訳されることが多かったが,多くのスータに関する叙述を収集・分析すると,その人物像は非常に曖昧で一貫性がなく,「御者」,「吟誦詩人」という一言では片付けられない複雑さを孕んでいる.本研究では,『マハーバーラタ』に登場するサンジャヤという王の側近であるスータが,ヴェーダ文献に見られるスータ像をある程度反映しているものと仮定して,そのスータ像の変遷を追った.このヴェーダ時代におけるスータ像は,『ヴィシュヌプラーナ』の中に収められているプリトゥ王神話におけるスータ起源譯にも反映されている.そこにおいてスータは,王のするべき行いを規定するような権力を有する王家の高官として描かれており,それを便宜的に「古型」と位置付けた.その後この「古型」は,バラモンらがスータを彼らの構想する4ヴァルナ社会に組み入れようとする際に,混合ヴァルナ身分としてのスータの裏付けとして様々に応用されたと考えられる.その一方で,スータが現実社会に存在しなくなった時代,『マハーバーラタ』の最終改編としてスータ・ウグラシュラヴァスの語りの枠が導入される.この際『マハーバーラタ』の編者らは,その語り手として「放浪の吟訥詩人」という新たなスータ像を創り上げたと推測される.その新しい語りの枠はいくつかのプラーナ文献にも採用され,その結果,放浪の吟誦詩人的スータ像と,古い伝承における王家の高官的スータ像が同文献内にも併存することになったと結論付けた.

言及状況

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スータに関する論文あった!と思ったら英語だったから後で読む https://t.co/xFJwdw2PIC
スータ、吟遊詩人という訳をあてられている場面もあって訳を分けてる理由って何なんだろうなぁ でもサンジャヤさんのやってることもほとんど語り手って感じする この抄録読む感じだと元は王の高官の意味だったが、時代を経るにつれ吟遊詩人の意味が加わったのかな https://t.co/Z8UID5fZTn
ちなみに、スータは古代では王家の高官だったのでは説もあるんだけど(J-STAGE Articles - 叙事詩『マハーバーラタ』におけるスータについて https://t.co/FzoRhWXXYU )ajayaや他複数のマハバ作品ではスータはシュードラとされています。バラモン、クシャトリヤら上位身分に仕える隷属民です。
J-STAGE Articles - 叙事詩『マハーバーラタ』におけるスータについて https://t.co/XswJnbqtXm こっからPDFで読めるけど、英語なので訳さな……
マハーバーラタにおけるスータについて(英) https://t.co/cC1xKAP0yu ニッポニカより「下位婚(プラティローマpratiloma)は上位身分の女性と下位身分の男性との間に行われる婚姻形式で、これは社会的に忌避され、その間に生まれた子供は劣等身分(シュードラ、アンタッチャブル)に落とされた。」

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