著者
細谷 幸子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.72-78, 2017 (Released:2018-08-01)
参考文献数
26

本稿では、シーア派12エマーム派を国教とするイランで「治療的人工妊娠中絶法」(2005年)が成立した背景とともに、この法の成立過程で重視された論点を整理し、成立後の変化を概観することで、中東イスラーム諸国の生命倫理をめぐる議論の一つを紹介する。それまで母親の生命を救う以外の人工妊娠中絶に厳罰を科していたイランで、この法の成立は大きな制度的転換点となった。その背景には、不法の人工妊娠中絶による女性の健康被害が深刻な状況にあった。医学的理由による人工妊娠中絶という側面を前面に出し、母の苦痛は回避されるべきとするイスラーム法の概念で支持することで、障害や疾病をもつ胎児の選択的人工妊娠中絶が正当化されたが、障害や疾病をもって生きる権利に十分配慮した議論は、十分におこなわれなかった。法制定後、不法の人工妊娠中絶数は減少していないとされる一方で、胎児の異常を理由とした人工妊娠中絶は許容範囲が拡大され、増加している。

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>>胎児の発育上の障害や異常によって母親が抱く不安や被る困難を指し、子を育てる上で母親が堪え難い負担を負うことがわかっている場合、母親に妊娠を継続する義務はない https://t.co/e42XCb7lq8
正確ではなかったけどそういうのも含む感じだった。 イランの「治療的人工妊娠中絶法」をめぐる議論 https://t.co/e42XCb7lq8
@PURIKETSU05 @pimantabereta6 @lYANNECCHI @uuuu0869 https://t.co/9IIvym2pSE
こんな論文もあったのでざっと読んだ。イランでは胎児の先天的異常を理由とした中絶が「子を育てる上で母親の耐え難い苦痛・負担」を理由にOKとされているらしく。障害を持つ人は社会の負担だという認識などの理由もあり、優生学的考えが強いとのことで。 https://t.co/9FUulYz7Bw
イランの「治療的人工妊娠中絶法」をめぐる議論 https://t.co/e42XCb7lq8 >>注目すべきは、イスラーム法の原則の一つとされる「苦痛と困難からの防護」という概念が、人工妊娠中絶を正当化する論理として提示されたことによって、法の成立に有利な議論が組み立てられたことだろう。
@sk993asd @Shakespearefun2 >まず前段の「既に世にある命を脅かしているわけでもありませんから倫理的な問題も小さいでしょう」は、妊娠に至る以前の生命の誕生の誕生自体を罰する法が世界的に (恐らく) 無く、 出生率の低下は中絶の問題もあるんだよ。 それすら知らないのは不勉強すぎるやろ。 https://t.co/wowZ847Op8
ウィグルで行われている強制不妊手術とかの話を見て、ムスリムにおける人工中絶ってどうなってるのかと調べてみたら興味深い論文が見つかったり https://t.co/rP3xdobVaz
イランの「治療的人工妊娠中絶法」をめぐる議論 https://t.co/e42XCboos8
@E_NxD @etwgde 多産社会のイスラム教は、コーランに明文規定はないが基本的に人工妊娠中絶を禁止していた。しかしイランは2005年、母体保護が必要な場合、妊娠120日までに限り解禁するなど、中絶容認に進みつつある。イスラム教では胎児に魂が宿るのは妊娠120日or4カ月とされている。 https://t.co/XYKem0UmdG
細谷 幸子さんの『イランの 「治療的人工妊娠中絶法」 をめぐる議論』 https://t.co/O4WcObnXws 読み終わった。 胎児は全能の神の創造物であり、出生前にも生きる権利を持つので、その生命を奪うことは刑罰の対象となる。のがイスラーム法上の基本線とのこと。 あと、もう一点重要な点が
というわけで、12イマーム派のお話しとして、下記論文を見つけたので読んでみる。 イランの 「治療的人工妊娠中絶法」 をめぐる議論 https://t.co/dbBy5FowqC

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