- 著者
-
松林 哲也
上田 路子
- 出版者
- 日本選挙学会
- 雑誌
- 選挙研究 (ISSN:09123512)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.2, pp.94-109, 2012 (Released:2017-09-29)
- 参考文献数
- 31
- 被引用文献数
-
4
本稿は女性の市町村議会への参入を説明するために,市町村の人口規模の役割に注目する。市町村の人口規模が小さい場合,当選に必要な票数が少ないので候補者は個人として議席を争う傾向にある。候補者中心の選挙では,男性に比べ政治的意欲や資源が乏しいことが知られている女性の立候補や当選は難しくなるだろう。結果として女性候補者や議員の割合が低くなると予測できる。一方で,市町村の人口規模が大きい場合,当選に必要な票数が多くなるため,男女とも政党の候補者として議席を争う可能性が高まる。女性は政党の組織的支援や政党ラベルの効果を享受できるため,候補者としての不利な立場を解消することができ,結果として立候補や当選の可能性が高まると考えられる。これらの議論から,市町村の人口規模の拡大に伴う当選必要票数の増加は,女性候補者や議員の比率を上昇させるという仮説を立てる。仮説検証には1990年後半から2010年にかけての平成の大合併を挟んだ市町村の人口規模の変化を利用する。